言論NPOとは

言論NPO「非政治性・非宗教性」に係る自己評価結果に対する意見

言論監事 加藤 隆俊
長 有紀枝

1.言論NPO「非政治性・非宗教性評価」結果について

 言論NPOにとって中立性及び非政治性・非宗教性が重要な点であることは理解している。そうした点に基づいて、平成28(2016)年度、言論NPOの「非政治性・非宗教性」に係る自己評価結果に関して、言論監事の意見を次のとおり報告する。

 言論NPOは、別紙4に記載された規定の評価方法に基づいて自己評価を実施しており、言論監事として、その手法・プロセスに問題がないことを確認した。

 また、評価結果に関して、「非宗教性」については、言論NPOの活動の8分野を12の評価項目で評価した結果、全ての項目で「非宗教性」を完全に満たしていると判定した。「非政治性」については、言論NPOの8分野の活動を18の評価項目で評価したものの、6分野14項目についてはネガティブチェックリストで判断がつかないため、コンテンツ判定基準方式による評価を行った。その結果、全ての項目において「非政治性」基準を完全に満たしていると判定した。

 以上から言論監事として、手法・プロセスに加えて結果についても問題がないことを確認した。


2.言論NPOの優れている点と課題

【優れている点】

・言論NPOは、ホームページや団体紹介パンフレット等において、「非政治性・非宗教性」に関する自己評価の結果を、その判定プロセスを含めて詳細に記述している。また、設立当初より、日本で初めて米国IRS(内国歳入庁)の基準をもとに、「非政治性・非宗教性」に係る自己評価システムを開発し、自己評価を毎年行っていることは、世界的にも言論NPOの活動の信用力強化につながっている。さらに外部評価の結果も掲載しており、幅広く社会に公開している点が評価できる。
・中立性を維持し、透明性をはかるために、様々な議論に聴衆を入れたオープンな形で実施しており、その全てにおいてインターネット中継を実施し、さらに、ホームページで日本語と英語で発信している。さらに、世論調査や有識者調査を実施することで、多くの人たちの意見を議論に反映する形を採用している点は、他の団体にはない特色あるものであり非常に評価できる。今後は、さらに回答者を増やす努力をしてほしい。
・政権実績評価やマニフェスト評価を行う際には、その評価基準を明示し、判断基準を明確にしている。また、評価のプロセスにおいて、有識者アンケートを実施し、各テーマに沿った言論スタジオでの議論は、動画とテキストで公開されているなど、多くの有権者が議論を視聴できる仕組みを整えている。また、海外との議論において政治家が参加する際には、複数の政党からスピーカーやパネリストを招くなど、1つの政党に偏らない工夫がある。
・7月の参院選前のマニフェスト評価や12月末に行われた安倍政権4年の実績評価においては、評価に関係する有識者の名前を可能な限り公開するとともに、各分野の有識者にも言論NPOの評価基準に基づき評価を行ってもらい、コメントと同時に結果を公表している。
・安倍政権の実績評価については、毎日新聞の紙面とも連携しながら評価結果を公表しており、多くの有権者に判断材料を提供するという点では、非常に有用な手段であり、今後も続けていくべきである。


【課題】

資金面での中立性を担保する格段の努力と、会員増の仕組み作りが急務

 言論NPOが中立の立場から活動していくためには、資金源の多様化を進め、企業からの寄付、行政や助成財団からの資金の他、会員と個人寄附を拡大していく必要がある。

 平成28年度についてはウェブサイトやイベントを通じて、広く浅く市民から寄附を集めたり、会員を増やそうとする取り組みがあったものの、十分な成果を上げたとはいえない。寄附や会員を募る際のメッセージやそれを発するタイミング、会員サービスの整備など、工夫の余地があると思われる。また、ガバナンスのあり方の説明や、寄付の際の倫理規定などを作成し、それを社会にしっかりと説明していくことが重要である。
そのためにも、会員サービスの年間計画をつくり、より多くの人が参加しやすい仕組みを早急につくり上げる必要がある。

多くの市民に支えられたコンテンツ基盤の確立と裾野を広げる活動を

 言論NPOが、今後、より多くの市民に支えられるための基盤を確立させるためには、議論形成において公開型の対話をタイムリーに行うべきである。加えて、議論形成の前に、有識者アンケートを実施し、議論の中により多くの有識者の意見を反映していくことで、議論の厚みも増してくると考える。そのためには、アンケートを送付するためのデータベースを拡充させ、より多くの人が議論のアンケートに参加できる基盤をさらに整えるべきである。
 加えて、これまで議論づくりに参加してくれた人たちを組織化し、コンテンツの基盤づくりを確立することも必要である。これまで、言論NPOもこうした取り組みを行ってきたが、さらに基盤を充実させ、より多くの人たちの声を集めることに一層注力するべきである。そうしたことを実現するためにも、既存のメディアとも連携を視野にいれながら、活動を伝える裾野を広げていくことが重要である。

世界のベスト・プラクティスを取り入れる

 カウンシル・オブ・カウンシル等のネットワークの構築には平成28年度も取り組んでおり、3月末に世界10ヵ国のシンクタンクのトップが東京に集まり、日本発で世界の課題にかんする議論を行う「東京会議」を立ち上げた。その会議での議論を踏まえ、日本政府とG7議長国へ提言する仕組みをつくり上げたことは非常に大きな成果といえ、海外ネットワークの構築は着実に進んでいる。
 こうした状況下で、各国シンクタンクの組織基盤や資金基盤の現状や取り組みなどから学び、言論NPOとして活用できる点を汲み取るように努めるべきであるとともに、海外の助成財団への申請を行うなどの取り組みを今後進め、資金基盤の多様化を図っていく必要があると考える。