言論NPOとは

平成19年度 言論NPO事業計画

平成19年度事業計画

 私たちが言論NPOで目指したものは、日本の将来や日本が現在問われている課題解決のために質の伴った当事者意識を持った議論を形成し、日本の言論に存在感と緊張感を取り戻すことです。また議論の成果が日本の政治や政策を動かし、政治を選択するはずの有権者にそのための判断材料を提供することです。

 私たちは平成17年度から始まる4ヵ年計画でNPO型のメディア・シンクタンクを実現するという所期の目標にドライブをかけるため、言論NPOがその使命を実現するために克服すべき課題を設定し、様々な取り組みを行ってきました。

 今年度はその4ヵ年計画の折り返し年度として、様々な議論づくりと同時に、昨年度着手した議論の発信力の強化と資金基盤の拡充の二つの課題に目途をつけたいと考えています。

平成19年度、優先して実行すべき課題

 今年度に最優先して取り組む課題は、昨年度から実施している質の高い議論づくりの循環をつくり上げること、さらに、言論NPOは非営利組織ですが、寄付など資金調達を多様化させ、経営基盤を安定させることです。

公開から参加型の議論循環を構築

 昨年末、言論NPOの議論づくりは「公開、参加型」を基本にウェブなどの設計を大きく変更しました。議論をウェブ主体に提起し、その内容をウェブサイトと書店でも販売するブックレットで公開すると同時に、参加型のフォーラムを実施しました。議論をただ公開するだけではなく、様々なテーマごとに参加する議論のサイクルをつくり上げたいと考えたのです。

 ある意味でこうした転換は、言論NPOは議論づくりの目的自体の発展だと考えます。私たちは言論NPOを立ち上げた際に、既存のメディアが十分に提供していない、対案力がある質の高い議論を有権者に提起したいと考えました。それをさらに議論をより参加型の議論に変えることで、質の高い議論の空間自体の拡大に取り組むことにしたのです。

 その背景には、ポピュリズム的な風潮から、刺激的ではあるが広く浅い感情的な論調が政策判断に影響を及ぼしている状況への危惧もありました。

 私たちは、しっかりとした議論の積み重ねこそが、強い民主主義をつくり出すとの考えから、議論を積み上げられる「言論の空間」を広げたいと考えたのです。

 そのための取り組みとして、昨年の暮れにウェブサイトをキャンペーン型に切り替えました。テーマをこちらで提案し、有識者の発言をウェブとブックレットで公開する中で、参加型のまたは提案型の議論づくりに着手したのです。平成19年に入って「安倍政権の100日評価」や「日本の知事に問う―経営と自立」というテーマで議論を行いましたが、平成19年度はさらに、こうしたテーマ主導を継続し議論のサイクルの構築に取り組みたいと考えています。

 このため、ウェブサイトとブックレットの展開と同時に他のメディアと共同で議論の発信を高めると同時に各種フォーラムをキャンペーン企画ごとに実施し、実際に対面で議論を行う舞台の活性化をするほか、会員間のフォーラムを定期化することを今年は実施したいと考えています。

自立した非営利組織の経営基盤の構築

 さらに今年最重要視しているのは、質の高いコンテンツづくりを安定的に継続的に行える体制づくりや資金基盤の安定化への取り組みです。

 言論NPOは平成17年6月には政策提言型のNPOとしては初めて寄付金無税化の認定NPO法人となり、平成19年の更新でも認定を受けました。

 私たちは言論NPOの活動に公益性が認められていることにより責任を痛感しています。しかし、私たちはこれに満足するわけにはいきません。広く社会一般から支持され、多くの人が私たちの活動に参加できるように、私たちの活動をより一層社会に開かれたものにしなくてはなりません。私たちが、議論内容が特定の政治や宗教活動から中立で独立していることを証明する自己評価と第三者評価を組み合わせた独自のルールを自らに課し、その内容を公開しているのもそのためです。こうした取り組みで、言論NPOは寄付市場に開かれた活動を行うためにガバナンスをより強化しているのです。

 私たちの活動は大部分の資金を一般の寄付に依存しています。日本の多くの非営利組織が行政などの委託などに依存し、下請け化を強めている中で、寄付に支えられる言論NPOの経営は稀有な存在として注目されています。私たちが特定の資金源ではなく、社会に開かれた寄付にその資金を調達しているのは、より公益的な活動を目指す意味でも当然のことです。しかし、実は欧米の先進的なNPOでも模索を続けているように、寄付だけに依存する非営利組織は経営の安定性という点ではかなり不安定な状況なのです。

 私たちは自立する、さらに持続性のある非営利組織をつくり上げるために資金源を多様化することが大切だと考えています。それが経営基盤の安定性につながるからです。そのため平成19年度は、雑誌販売や広告収入など、言論NPOの事業収入基盤を計画的に整え、全収入比で3割程度をこの事業部門で調達できる経営モデルを構築します。

平成19年度、実現すべき三つの事業

 平成19年度は年度前半で二つの事業に取り組みます。7月の参議院選挙に対する国政の政策課題と各党のマニフェストの評価と、8月27日から北京で実施する「北京-東京フォーラム」です。

 言論NPOではこれまで三回にわたり、専門家などの協力もいただき、国政の評価を行い、その評価議論や結果を公表してきました。これらは有権者と政治との間に緊張感ある関係を構築するための試みでもあります。平成19年度はこの評価結果をより多くの有権者に伝えるために、さらに公開の仕方を拡大し、選挙告示前にマニフェスト評価のブックレットの発行やウェブサイトの専用ページでの公開、さらに他メディアとの連動などを行います。

 また平成18年度と同様、8月には中国と日本の新しい議論チャネルとなる「第3回北京-東京フォーラム」を北京で開催します。

 昨年実施した「第2回東京-北京フォーラム」はその後の日中首脳会談再開の扉を開くことになりました。ここで私たちが目指しているのは本音で語り合える、国や組織の利害や威信を超えた新しい日中の議論チャネルであり、またここでの議論が日中やアジアの課題を乗り越えることになる民間のトラック2の実現です。

 今回の「第3回北京-東京フォーラム」は、トラック2としての役割を北京でも成功させることが目的であり、このフォーラムを来年以降、さらにアジアの議論の舞台へ発展させる土台を築くものです。

 私たちは「北京-東京フォーラム」を十年事業で行っていますが、今回の3回目のフォーラムの成功で、さらにこのフォーラム自体を次のステージに上げることができます。

 一つはアジアの議論に舞台に、このフォーラムを発展させること、さらにこうした議論が継続的に日本やアジアだけではなく、世界に発信されるようになるために、「フォーラムのメディア化」をすることです。平成19年度は、第3回目の「北京-東京フォーラム」の成功だけではなく、そのための枠組みづくりに着手したいと考えています。

 さらに私たちが今年着手したいのは、議論づくりの他の団体やメディアなどとの協働です。これは言論NPO自体の発信力の強化と同時に、私たちがさまざまな議論づくりで議論の空間をさらに広げることにもなります。特に今年は、地方の再生の問題や言論NPOの当初の目的である既存メディアを主体とした議論へのカウンターバランスを高めるために様々な形で議論の展開を図ろうと考えています。


 最後になりますが、こうした試みを進めるためにも、この運動に多くの人の参加が必要不可欠です。私たちはこうした議論や議論づくりにも参加していただく会員の方を新しく増やすために会員を主体としたフォーラムや会議を形成し、私たちの議論活動が多くの人の参加で行われる仕組みをつくります。会員数の目標は、一般会員は400人、基幹会員は200人とし、会員によるネットワークを構築したいと思っています。

運動の主なスケジュール

 上記の主な活動は以下のスケジュールで実現します。

平成19年4月
  雑誌・言論ブログ発行(「美しい国とは何か」)
5月
  マニフェスト評価の分野別評価に着手
  第3回北京-東京フォーラムのアンケート、日中共同世論調査に着手
  認定NPO法人としての認可の更新
6月
  2007年度マニフェスト評価 ブログ議論の開始
  雑誌・言論ブログ発行
   (「日本の知事に問う 有識者200人の診断-アンケート編」「知事の主張2007 問われる自立と経営の意思-発言編」)
  言論NPO 第六回総会
7月
  日中共同世論調査集計・結果の公表
  日中ブログでの議論開始、言論ブログ英語訳ブログ開始
  参議院選挙でのマニフェスト評価、安倍政権の実績評価の公表
  参議院選挙のブックレットの発行
8月
  第3回北京-東京フォーラム開催(8月27日-29日 於:北京)
9月
  メディアとの共同議論の試行
11月
  書籍発行
12月
  国政マニフェスト評価書公表
平成20年1月
  「第3回北京-東京フォーラム報告書-2007年北京-」発行
3月
  雑誌・言論ブログ発行