言論NPOとは

言論NPO「非政治性・非宗教性」に係る自己評価結果に対する意見

言論監事 加藤 隆俊

1.言論NPO「非政治性・非宗教性評価」結果について

 平成27(2015)年度、言論NPOの「非政治性・非宗教性」に係る自己評価結果に関して、言論監事の意見を次のとおり報告する。

 言論NPOは、別紙4に記載された規定の評価方法に基づいて自己評価を実施しており、言論監事として、その手法・プロセスに問題がないことを確認した。

 また、評価結果に関して、「非宗教性」については、ネガティブ・チェックリストの全96項目で基準を満す一方、「非政治性」については、全144項目のうち130項目で基準を満すものの、14項目については判定できなかったため、コンテンツ判定基準方式によってさらに評価を行い、いずれも基準を満たしている。言論監事として、手法・プロセスに加えて結果についても問題がないことを確認した。


2.言論NPOの優れている点と課題

【優れている点】

・政権実績評価やマニフェスト評価を行う際には、その評価基準を明示し、判断基準を明確にしている。また、評価のプロセスにおいて、有識者アンケートを実施し、各テーマに沿った言論スタジオでの議論は、動画とテキストで公開されているなど、多くの有権者が議論を視聴できる仕組みを整えている。また、海外との議論において政治家が参加する際には、複数の政党からスピーカーやパネリストを招くなど、1つの政党に偏らない工夫がある。
・言論NPOの議論づくりの一環として有識者アンケートを行い、その結果に基づいて議論が行われており、有識者の意識を絶えず拾い上げながら、広く有権者を巻き込み、質の高い議論をつくりあげている点が評価できる。加えて、12月末に行われた安倍政権3年の実績評価においては、評価に関係する有識者の名前を可能な限り表に出すとともに、各分野の有識者20氏にも言論NPOの評価基準に基づき評価を行ってもらい、コメントと同時に結果を公表する等、多くの人たちが評価結果にかかわっていることを表に出す取り組みを始めた。これは非常にいい取り組みだと思う。今後も、さらに回答者を増やす努力をしてほしい。
・言論NPOは、ホームページや団体紹介パンフレット等において、「非政治性・非宗教性」に関する自己評価の結果を、その判定プロセスを含めて詳細に記述している。さらに外部評価の結果も掲載しており、幅広く社会に公開している点が評価できる。


【課題】

(1) 言論の中立性を担保する格段の努力が求められる

 言論NPOが中立の立場から活動していくためには、資金源の多様化を進め、企業からの寄付、行政や助成財団からの資金の他、会員と個人寄附を拡大していく必要がある。

 平成27年度についてはウェブサイトやイベントを通じて、広く浅く市民から寄附を集めたり、会員を増やそうとする取り組みがあったものの、十分な成果を上げたとはいえない。寄附や会員を募る際のメッセージやそれを発するタイミング、会員サービスの整備など、工夫の余地があると思われる。また、ガバナンスのあり方の説明や、募金の際の倫理規定などを作成し、それを社会にしっかりと説明していくことが重要である。


(2) より多くの市民に支えられたコンテンツ基盤を確立させる

 言論NPOが、今後、より多くの市民に支えられるための基盤を確立させるためには、議論形成において公開型の対話をタイムリーに行うべきである。加えて、議論形成の前に、有識者アンケートを実施し、議論の中により多くの有識者の意見を反映していくことで、議論の厚みも増してくると考える。そのためには、アンケートを送付するためのデータベースを拡充させ、より多くの人が議論のアンケートに参加できる基盤をさらに整えるべきである。

 加えて、これまで議論づくりに参加してくれた人たちを組織化し、コンテンツの基盤づくりを確立することも必要である。

 これまで、言論NPOもこうした取り組みを行ってきたが、さらに基盤を充実させ、より多くの人たちの声を集めることに一層注力するべきである。


(3) 世界のベスト・プラクティスを取り入れる

 カウンシル・オブ・カウンシル等のネットワークの構築には平成27年度も取り組んでおり、3月末に世界8ヵ国のシンクタンクのトップが東京に集まり、議論をするなど、海外ネットワークの構築は着実に進んでいる。こうした状況下で、各国シンクタンクの組織基盤や資金基盤の現状や取り組みなどから学び、言論NPOとして活用できる点を汲み取るように努めるべきである。