
理 事
松田学(独立行政法人 郵便貯金・簡易生命保険管理機構 理事)
まつだ・まなぶ
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1957年京都府生まれ。東京大学経済学部卒業。現在、財務省より郵貯簡保管理機構の理事として出向中。上武大学客員教授。1981年大蔵省入省、財務省本省等の課長等を経て、東京医科歯科大学教授に出向後、2008年より現職。
青雲の志で日本を再設計する
Q. 言論NPOに参加するきっかけは何だったのでしょうか?
1998年頃に私が大蔵省でマクロ経済を担当していたとき、日本経済はどん底の状態で、大蔵省では積極財政政策でとにかく総需要を増やそうとしていました。しかし、私自身はむしろ痛みを伴っても思い切った構造改革を行わねば本当の意味での日本経済の再生も持続可能な成長も困難だろうと考えていて、そんなとき紹介されたのが東洋経済時代の工藤さんでした。工藤さんが当時大蔵省にやってきて「松田さん、デット・エクイティ・スワップ(Debt Equity Swap:債務を株式に転換する財務改善手法)で大々的に構造改革をすべきだよ」と大声で説明して、皆びっくりしてしまって(笑)。それから、工藤さんと今は言論NPOの監事をしていて、私の大学時代からの友人である冨家氏との3人で「日本を改革する会」とかいってよく議論をするようになりまして、当時、工藤さんが編集長をしていた「論争 東洋経済」というクォリティー誌での議論形成のお手伝をしているうちに、同志たちとともに言論NPOを設立するという流れになっていきました。
Q. 松田理事から見て、代表工藤とはどんな人ですか?
霞ヶ関の誰にも勝るとも劣らないほど日本の将来のことを真剣に考え、うらやましいほど自らの信念に対して純粋に発言し、行動する人がいる。それだけでなく、政策論争では誰にも負けない力を持っている。そんな驚きが工藤さんに対する第一印象でした。工藤さんのすごいところは、相手と議論している間にいろんな論点を引き出していくことです。最後には相手が考えてもみなかった論点まで引き出してしまう。単なるインタビューではなく、そこで議論を作ってしまうのです。こういう人が今の日本には必要だと思いますね。
Q. 言論NPOの設立には、どのような背景があったのでしょうか?
言論NPO設立の背景には、日本が経済社会のあらゆる面にわたって抜本的なシステムの組み替えと再設計を求められる歴史的な局面にあるという基本認識があります。日本の官僚統制中央集権という現在の体制は、1940年頃から日本が戦争に向かう過程で出来上がりました。源泉徴収制度、様々な社会保障制度などにも見られるような、日本の隅々まで張り巡らされた精緻な各種「戦後システム」の原型は、国家総動員体制の下で出来たものです。この仕組みは、戦争に向かう特殊な状況、高度経済成長時の右肩上がりの時代には非常にうまく機能しました。ところが、近隣アジアの勃興、世界のグーバルマーケットエコノミー化、右肩上がり時代からのパラダイム転換などの中で、「分配型国家」の設計思想のままでは全体システムの持続可能性が確保できなくなってきた。「富をどう配分するか」から、「富をどう生み出すか」というベクトルへとシステムを抜本的に再設計する時代になったのです。
そして、そのような全体システムの転換、抜本的な改革には国民合意が必要です。そのためには、国民に日本の将来に向けた本質的な選択が迫られます。その前提として有権者には選択肢の提示と、そのための判断材料が提供されねばなりません。しかし、今の日本には政策を議論する市場(マーケット)がありません。右肩上がりの時代なら問題を先送りしていればよかったかもしれませんが、新たな設計が必要な現在の日本では、しっかりとした論理立てと経済的にも辻褄の合った本格的な政策論議に、各界の英知を集めていかなければなりません。古今東西、本物の知恵というものは、本物の情報と本音での人間交流の場から生まれるものだと思います。ですから、それぞれの立場や建前にとどまることなく、信頼に基づく人間関係を構築していくこと、そうした信頼関係に基づいた本音の議論がここではできる、そういう場が今の日本では特に必要になっている。その「場」というものを、この国に創出していくことが言論NPOならばこそできる重要なミッションなのだと思います。
これは私の持論なのですが、日本は今、明治維新以来140年ぶりの大転換期にあると思います。日本の国を設計思想そのものから作り変えなきゃいけない状況にある。そういう大きな歴史的転換期には、坂本竜馬みたいな広いネットワークを持って時代の先頭を走る人が必要だ。そこで、「工藤さん、あなたが坂本竜馬になってくれ」と(笑)。「もう一度日本を再生させよう」という青雲の志を持った人たちが集まって設立したのが言論NPOなのです。様々な人たちが、職業を別として一市民としてのポジションを持ち、一市民として発信し、議論していくこと。国家の再設計という大事業には、そうした「市民」としての参加が非常に重要ではないかと思っています。
Q. これからの日本社会、また言論NPOをどうご覧になりますか?
これからは、組織の中に人を閉じ込めないで、一人ひとりが自分の生産性を高めていくことが重要になります。それは人口減少社会への移行や日本の大きなパラダイム転換が必然的に求めてくるところになります。そこで重要になるのは、新しい価値というものを創造していく営みであり、それを促すような社会システムをどう構築していくかが問われます。新しい価値創造というものは、マーケットが生み出すものでも官が作り出すものでもありません。
私は、現代の先進国の資本主義は、大きな壁にぶつかっていると考えています。経済の言葉で言えば、それは資本蓄積の進展に伴う利潤機会の消滅であり、それに対して市場経済の側で出した一つの答えは、アメリカが見出したグローバル化、IT化、金融革命でした。旧社会主義圏を始め世界30億人の人たちをマーケットに取り込み、新興経済圏や途上国の成長に資本やマーケットのフロンティアを求めることで壁を乗り越えたのです。
しかし私は、日本はもう少し別の形で市場経済のさらに外側に価値創造の世界を構築していく道を追及すべきなのではないかと思っています。そこではマーケットや民主主義の中からは生まれないような価値が次々と生み出される。その価値のうち、ビジネスに乗るものは市場経済の世界に入って資本のフロンティアを拡大していくでしょうし、民主政治が取り上げれば官システムの再設計の世界に入っていく。しかし、重要なのは、根源的な価値そのものを生み出していく世界だと思います。それが、工藤さんが追求しようとしている、新しい市民社会の設計だというのが私流の理解です。その具体的な形態のひとつがNPOですが、中でも言論NPOは、市民が日本という国の選択に向かい合う場として、日本の新しい社会の組み立てのまさに最先端なのです。言論NPOが活動することそれ自体が新しい日本の設計であるともいえるでしょう。官でもなく、民でもない、「公」という第三のプラットホームをどうやって日本に拡充していくか。その最先端が言論NPOであると思っています。
Q. ご趣味は何ですか?
大学時代にオーケストラでチェロをやっていて、実は監事の冨家氏が同じオーケストラでファゴットをやっていました。今も、ある企業のアマチュアオーケストラに入っており、弦楽四重奏といった室内楽なども含めて、人前でのチェロの演奏の機会が結構あります。 (弓岡:確か奥様も音楽をされているとか…)ええ、家内はピアニストで、長女も声楽をしています。二人ともウィーンが活動本拠なので、私自身の生活は少し不便を耐え忍んでいますね(笑)
Q. 言論NPOのユーザーである有権者に対して、メッセージをお願いします。
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※メッセージは動画でご覧いただけます。
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言論NPO理事の松田です。
私は工藤さんの親友として、同志として、設立以来ずっと関わり続けています。
いま日本は、明治維新以来の本当に大きな転換期であり、新しいこの国の設計をし直さねばならない、組み立てねばならない局面です。組み立てるというのは、知識人たちだけが議論しているだけではできません。まず国民合意を形成しなければいけない。その合意形成の役割を誰が果たすのか。これは新しい市民社会の実験でもあり、実は、言論NPOの活動自体が日本の最前線であるという想いで、活動に携わってきております。
皆さん一人ひとりが、この国を新しく作る当事者であるという自覚を持たなければ、この国の明日は開かれませんので、是非この活動に皆さんも参加してください。
心から、お願いいたします。













