前岩手県知事の主張 第2話:「大切なのは自立を勝ち取る覚悟」

増田寛也 (前岩手県知事・地方分権改革推進委員会 委員長代理)
ますだ・ひろや
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1951年生まれ。77年東京大学法学部卒業後、建設省入省。千葉県警察本部交通部交通指導課長、茨城県企画部交通産業立地課長、建設省河川局河川総務課企画官、同省建設経済局建設業課紛争調整官等を経て、95年全国最年少の知事として現職に就く。「公共事業評価制度」の導入や、市町村への「権限、財源、人」の一括移譲による「市町村中心の行政」の推進、北東北三県の連携事業を進めての「地方の自立」、「がんばらない宣言」など、新しい視点に立った地方行政を提唱。
大切なのは自立を勝ち取る覚悟
最近の知事会を見ていると、交付税をこういう配分基準でやるのは大変だから、こういうところも見てくれといったようなお願いばかりが目立ちます。これは寂しいことです。やはり、自立というものは自分で勝ち取る、その覚悟がなければなりません。当面、多少お金が減っても、それを耐え切る。その上で何か違うダイナミズムを生み出して勝ち取ろうという覚悟がなければだめです。小泉さんの郵政のときのあの覚悟は悲壮で、あれを見てしまうと、いかにも最近の動きは生っちょろい。これでは知事会が国民に見切られてしまうような感じがします。
確かに、交付税が減り、今、地方の財政はきついのですが、本当はそれを上回るだけの知恵を知事側は出すべきです。国も金がないわけですし、地方も金がないときに、やはり国民の負担をそんなに増やすわけにはいかない。ですから、お金がなければ別の知恵を出すというような方向に持っていかないと、とても自立は勝ち取れないと思います。
格差ということも言われ、大変厳しい状況はありますが、それも、本当に行き詰まったときには絶対それを打開する動きが出ると思います。中央省庁が補助金を配って何かをやるという構造は行き詰まっていると思います。ですから、地方自治体が住民にわかりやすい、もっと良いモデルを少し指し示せば、そこの壁は破れると思っています。
今やっている基準とか仕掛けというのは、どれも前の焼き直しです。今何をしているかというと、県を通すと、知事たちが補助金廃止、税源移譲ということをまたうるさく言うからというので、県を通さずに直接市町村や農業団体に補助する。国はそのようなことをやっています。頑張る自治体の応援プログラムというのも、額はそれほど大きくないですし、それほど違和感はないですが、やはり配分基準で国が配るということに対してはみんな大変な抵抗感を示しています。ですから、今はもう国は、新しい知恵というものをなかなか出せない状況だと思います。
では、地方が本当に自治のモデルとして良いものを出しているのかということになると、まだ単発で散発的ではありますが、やはりお金がないならないなりに知恵を出している。夕張で今年の1月に、地元の人たちだけでやっていた成人式のテレビ報道がありましたが、本当に行くところまで行けば、やはり自治ですから、有権者、地域の人たちがパワーなので、行政に頼らないということが出てくると思います。
それを、そこまで行かない段階で、地元で徹底的に議論し、その力を引き出していくのが、これからの行政の仕事ではないか。国に行って金を取ってくるのがこれまでは優秀な公務員でしたが、そこを切り替えることです。三位一体改革の後の、まさに次のステージの課題がきちんと合意されていませんが、例えば二重行政の元凶である国の地方出先機関をつぶしたり、二重行政をなくす、あるいは法律で規定されていることについては条例制定権を拡大する、それぞれ県で違っていいから条例で書いたらどうか。そして、やはり分権型の道州制は進めるべきだと私は思っています。
ただ、底流にあるものとして、いずれにしても、そういったものを成功させるには、本当に自治について目覚めた地域の人たちの力が必要です。その力をわき起こすように、行政が地域に勇気を与えなければならない。あるいは、職員が地域に入っていって一緒に議論して、その新しい力に自分たちで火をつけて生み出していくべきです。
地域に常に根差していないと物事は動きません。私自身がどこまでやれたかということはありますが、やはり市町村を中心に、あるいは市町村からさらに地域の自治組織のようなところで、時間がかかっても物事をつくり出していく。そこの行き着く姿としてきちんと道州制のような姿を指し示せばいいと思います。本当に地域の自治組織や個々人が動いていかなければ、物事はそこに向かって進んでいきません。
私は、霞が関は1府3省か4省でいいと思っています。法務省と外務省と防衛省、あとは内閣府に全部集中させる。さすがに外交や法務や防衛は国ですが、それ以外のところは全部、それぞれの地方のブロックのところでやるべきです。例えば東北では子育てと老人が大事なので、子育て省があって、そちらの方にうんと重点を置いていいし、九州の方は、例えば産業振興をやろうというのならば、産業振興省をつくり、それで独自の何かをやればいい。行政組織を含め、もっと地域の柔軟性や特色を生かしたようなものをやればいいのではないでしょうか。まず国の役割を限定する、それから補完型で、地域でどこまでできるかから組み立てていく。
それを実現するためには政治パワーがなければなりません。今の安倍内閣でそれができるかどうか懐疑的です。
2007年05月12日 22:32
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