前岩手県知事の主張 第4話:「今の地域経営に問われているのは選択と集中」

増田寛也 (前岩手県知事・地方分権改革推進委員会 委員長代理)
ますだ・ひろや
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1951年生まれ。77年東京大学法学部卒業後、建設省入省。千葉県警察本部交通部交通指導課長、茨城県企画部交通産業立地課長、建設省河川局河川総務課企画官、同省建設経済局建設業課紛争調整官等を経て、95年全国最年少の知事として現職に就く。「公共事業評価制度」の導入や、市町村への「権限、財源、人」の一括移譲による「市町村中心の行政」の推進、北東北三県の連携事業を進めての「地方の自立」、「がんばらない宣言」など、新しい視点に立った地方行政を提唱。
今の地域経営に問われているのは選択と集中
都道府県というものは、やはり中間団体です。国でもなく、一番身近な、自治が一番ワークする市町村でもない。では、中間団体はなくてもいいかというと、やはり市町村でできないことを応援していくという立場がある。また、今は国で一律でやってはいけないようなものまで国が無理やり一律で行っていますが、その点については、道州ということが必要になると考えています。東北では青森も秋田も岩手も同じような気候風土を持っていて、宮城、山形、福島あたりまでは6県で1つの行動をとれるのではないか。ですから、広域自治体としての県の機能をもっと高めていく必要があると思います。それは最終的には分権型の道州制に答えを求めればいいのではないかと思います。
次に、都道府県の意味についてですが、自治の中で知事がどう振る舞うかを市町村も見ていますし、国からも47人の知事の行動は注目されていて、政治的に、知事の振る舞いで日本の政治をよくできるところもあります。例えば、地方自治体の知事が中心になったマニフェスト運動が始まり、それがやがては国政に行くように、地方から国を変える、政治を変えるということまでつながっていく。知事が何人かで動きをすれば、色々な政治的メッセージを発することができる、そういう存在で今後もあってほしいと思います。
では、都道府県に今問われている課題は何か。一つは、少子高齢化の中での地域の持続可能性の問題があります。人口減少を地域地域で受けとめても、なかなか流れは変えられず、現実は高齢化で減っていく。50%以上高齢者ばかりという限界集落がどんどん増えています。岩手県では、がけ崩れ防止事業をやめました。お金も時間もかかりますし、それよりも、もう家屋を移転してもらった方が早いのです。例えば釜石市の6世帯に全部移転してもらいました。その移転費用を税金で出す、そういうふうに切りかえたわけです。災害で危ないとなったときに、それは即移転していただきましょう、そこを補助しましょうということです。釜石市の中心部には空いている所がたくさんあります。そして、だんだん集落をまとめていくようなことにしていく。
雪があれば、冬場は山合いの山間地域にいる高齢者の人たちに下の病院に方に入ってきてもらって、二、三カ月、そこで医療の体制を整えて過ごす。奥羽山系の沢内村は、それでずっとやってきたわけです。もっとそういうことをやって、それで少しでもいいからその町や集落を長もちさせるようなことを考えなければいけないと思います。
皆さんから、強制移転など中国じゃあるまいし、我が国ではなじまないなどと言われています。抵抗感は強いのですが、がけ地の下の急傾斜地崩壊対策事業の対象区域などはいつ崩れてくるかわかりません。移転の方に補助すると言えば、災害危険性が迫っているので納得してくれますが、これから10年以内に、いずれ各地で、限界集落のような集落崩壊の話が現実に出てきます。この集落について、自治体はもうとても医療サービスを提供できないということになれば、皆さん、考えていただけると思います。限界集落というのは、地域の目ぼしい産業はなく、あってもかつての主たる産業は公共事業だけというようなところです。そこに何ができるかというと、労働力があれば、特色ある農業など、ある程度まとめることで何かできるということが、やがては理解される時期になっていくのではないか。
こうした地域経営の経営者としての首長の能力が今問われているわけです。それは大変な仕事です。これもやはり、一言で言えば選択と集中なのです。これはというところはもう徹底的に守り抜く、そこにできるだけ移転してもらう。多くの地域が経済が成り立たない地域へと追い込まれていく。日本全体でみても、2050年で人口は1億を切り、あと40年で急激な人口減少になっています。
2007年05月14日 22:32
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