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 山形県知事の主張 第2話:「財政改革は1丁目1番地」

齋藤 弘 (山形県知事)
さいとう・ひろし
profile
1957年生まれ。81年東京外国語大学外国語学部卒後、日本銀行に入行。この間、国際通貨基金に勤務し、預金保険機構勤務、日銀退職、山形銀行入退行を経て、2005年山形県知事選挙に当選。
「県民と『助け合い』、『分かち合い』、『育みあう』ふるさと山形づくり」、「百年後にも誇りに思える元気なふるさと山形づくり」、「子ども夢未来宣言~子育てするなら山形県」などを提唱し、「百年後にも元気な山形」の実現のため、様々なアクションプランを実践している。

財政改革は1丁目1番地

知事の役割とは何か。現時点では、財政の自由度回復を図り、それを伴っての構想を実現することになると私は思います。財政の改革というのは今、政策遂行上、1丁目1番地と位置付けています。しかし、今まで私が見た限りで、改革を唱えながらも、財政の借金を返した、減らしたという実績を挙げる、すなわち財政面で結果を出した知事はごく少数にとどまっています。

山形県は、「子ども夢未来指向」を県政の基本に据えています。それは「今、未来の子どもたちのために何をすべきか」ではなく、未来の子どもたちは今を生きる我々になすべき何を求めているのか」を発想の原点にしよう、というもの。その意味で、県債残高は、将来に対するツケで、これは「子ども夢未来指向」に反しているだろうというのが山形県の考え方です。昨年度(平成18年度)からプライマリーバランスの黒字と利払い費の均衡を県財政運営の目標に掲げました。その結果、県債残高は、18年度に県財政史上初めて減りましたし、19年度も、県債残高減少の実現を目指した当初予算を編成しました。

財政改革というのは「1丁目1番地」の政策目標と申し上げましたが、そうしないとこれからの夢を描けないのです。借金の増加は、言葉は悪いのですが、いわば「将来への飛ばし」でしょう。だから、借金を増やしていろいろな事業をやるというのはだれでもできます。

私はIMFでの勤務経験もありますが、利払い費を入れた財政収支の均衡を目標にしているという点で、我々はグローバルスタンダードです。ただ、プライマリーバランスの黒字も交付税に頼っている部分が相当あるので、砂上の楼閣であることも事実です。景気動向はもとより、地方財政を取り巻く外生的要因が大きく変われば、今のプライマリーバランスの黒字も、またそれと利払い費との均衡も吹っ飛んでしまう。

知事の役割は、やはりまずは構想を描く。きっちりと将来の構想を描いてそれに突き進む。それが大切だと思います。そのための足元の強化を図る。しかも、それは足元そのものの強化はもとより、それが将来にわたってきっちりと効果を出していけるような取り組みをするということです。したがって、そこで一番大切なのは、やはり財政改革をして、自由度の高い持続的な財政運営ができるように足元をしっかりとさせることです。

「管理から経営へ」、それが今の知事に求められた最大の役割だと思うわけです。それは、自らの責任において自らが決定する、そしてそれを積極的情報開示により県民にチェックしてもらう、というシステムを構築することを意味しています。これまでの改革派が地方分権の旗手として国に対して地方から戦いを挑んできたというのは、それ自体間違ってはいないし、これからもやっていかなければならないと思います。しかし、私があえて申し上げているのは、地方自治体って何なのかということです。地方自治体が今、目指すべきなのは、地方政府ではないかということです。財政面で独立しなければ、人間だって一人前の大人だといわれないわけです。今は自分のお金の使い方、お金の入り、お金の出というのも自治法上きっちりと決められている。国の制度と最も違う点は国は赤字国債を発行できるが、地方は赤字地方債を発行できないということです。そのように財政的な自立が図れない以上、独立した大人として物事は言えない。それができて初めて言えるし、一人前の大人になれる。そうであるならば、そうなれるような準備をしていかなければいけないわけです。

財政再建のための歳出カットの対象としては、例えば、投資的経費ですと、従来の3割、すなわち7割減です。もうそろそろ限界だということです。したがって、極端に言えば、もはや人件費しかありません。部長たちが新規事業のために「枠はこうだと言われても、これは大切だから、これだけは認めてくれ、うちは特別」と財政課に持ってくるわけです。それに対し、私は「わかった、あなたは自分たちの人件費を担保にして主張しているのですね」と問いかける。財政構造上、社会保障費等々を含めた義務的経費が9割以上を占めているのですから当然といえば当然です。事業だけ持ってきて、あとは最終的な尻は財政当局、そして知事の責任だなどと、部分均衡的な物言いは認めない、自らの人件費を担保にして持ってくるのなら考えよう、などと、厳しいことを言わなければなりません。

歳出削減は細かいところまでやっています。大きな意味では、これからはもう退職金も含む人件費しかないのです。給与水準と人数の両面からです。

山形県で職員の平均退職金が2600万円です。これは他県でもほぼ同じだと思います。部長クラスが3500万円の退職金です。この水準は、県行政のサービス提供の質量両面、ならびに山形県の所得水準に照らして、県民の皆様が容認できるものかどうか、ということです。

また、退職金とは、正確には退職一時金です。したがって、退職一時金と年金制度を合わせて、県内の民間企業と比較してどうか、その結論を出した上で考えなければいけないだろうと思います。当然、いろいろな問題提起もあろうかと思います。例えば、近隣県、同規模県対比、国準拠があって難しいと。それに対し、「山形県の財政事情の厳しさを考慮せずに、給与、退職一時金の水準のみ他県同等と主張しても山形県の財政が解決できるのだろうか」と私は言っているわけです。

また、退職金をカットされたら、これまでの人たちと比べ、その人たちがかわいそうではないか、不平等ではないか、という声もあるでしょう。しかしそうしたら、退職金というのはいつまでも削減できないことになるでしょう。だから告知期間を設けて、「退職金は減りますよ、辞めたい人は今年どうぞ、最終列車に間に合うかもしれませんよ。けれども、まだ引き続き働きたいと思う人たちは、来年から退職金はこれだけ減るという点を理解した上でお願いします」と言うしかないと思います。

歳入増については、この2年間の私自身の取り組みで、「産業廃棄物税」と「やまがた緑環境税」の2つを新税として設け、スタートさせました。とりあえず1年ごと、1つずつやったため、「また新税か」ということもあるので、少なくとも短期的には、さらに新たな税というのは構想の中にありません。新税導入は、まだまだ足腰の、経済産業基盤も弱い山形県のようなところでは非常に難しいと思います。まさに景気、雇用に大きなダメージを与えるので、東京都などと違って相当慎重にやらねばならないなと思います。歳入増をさらにどう図るのかというと、県の資産をもう1回洗い直して有効活用を図るということだと思います。だから、賃料を取れるところは取るし、賃料が定期的に入ってくるのであれば、それは例えば不動産であれば証券化できますので、そうやって少し収入増を図る手もあり得ると思います。

2007年05月27日 14:03

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