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 アンケート調査「日本のパワーアセスメント」 page1

――日本の実力(強さ弱さ)の再評価 
(回答期限:3/10)
(※受付は終了しました。多数のご回答ありがとうございました)






このアンケートは、各分野について国際的に比較した場合の日本の相対的な強さ、あるいは弱さを定性的に評価していただく形で行います。ここでは、(1)経済、(2) 社会・教育、(3) 大衆文化、(4) 科学・技術、(5) 防衛・軍事、(6) 政治、(7)資源(エネルギー、食料)、(8) 環境、(9) 言論・思想、の9分野を取り上げました。

そして、その各々について、以下の3つの視点に分けて、その分野において日本は国際的に比較してみて、他国に比べて「圧倒的に強い」か、「同等(他国並)か強い」か、「弱い」か、あなたの評価を選択していただきます。

A.「先進度」発展段階の高さ、洗練度、多様性、頂上の高さと裾野の広がりなどに鑑みて、日本がどれだけの先進性を当該分野で持っているか。
B.「強靭性」

層の厚み、試行錯誤の蓄積度、自己革新力、雑種度、F.M.(フォース・マジョール:地震やテロといった大きな災害)に対する耐力などに鑑みて、日本の当該分野にはどれだけの強靭性があるのか。

C.「影響力」先進課題発見解決力、ブランド力、日本が国際社会で「お墨付き」を与える力、流行創造発信力などに鑑て、日本は当該分野でどれだけの国際的な影響力を持っているか。

れらA、B、Cの各視点が、日本の実力評価の上で重要であると私たちは考えました。

さらに、こうした評価の上で不可欠なのは、当該分野が日本の戦略全体を考える上でどの程度の重要度を有しているかです。私たちは、各分野の強さ弱さの軸と、戦略的重要度の軸の2つの軸で「日本の戦略マップ」を作り、3月16日の公開シンポジウムで、その試案を一つの仮説として提出し、議論を呼びかけたいと考えています。

このアンケートでは、上記の強さ弱さの評価に加え、当該分野の戦略的重要度に関連する論点を提示しますので、各分野毎にあなたのご意見に最も近いもの(=挙げられた選択肢の中で最も重要とあなたがお考えになる論点)を一つづつ選択してください。

なお、A、B、Cの観点からの強さ弱さの評価については、分野毎にそれぞれの評価のクライテリア(基準)をどう設定するかという問題がありますが、分かりやすさのために、各分野の「戦略的重要度を巡る論点」の1.の選択肢の中に、クライテリアの例を示してあります。それをご参考に、当該分野の先進度、強靭性、影響力の判断基準についてのイメージを持っていただければと存じますが、それにこだわっていただく必要はありません。あなたのお考えに沿った自由な評価をしていただければと思います。

日本の将来に向けた議論に、あなたのご参加をお待ちしています。


Q1

[日本の経済]

A.先進度 圧倒的に強い同等か強い弱いどちらとも言えない
B.強靭性圧倒的に強い同等か強い弱いどちらとも言えない
C.影響力圧倒的に強い同等か強い弱いどちらとも言えない
 戦略的な重要度を巡る論点
1:日本の経済については、消費市場のテイストの高さや多様性など成熟度が高く(先進度)、産業や企業の革新能力や適応力にも優れ(強靭性)、今後こうした強みを活かして国際市場の支配力など(影響力)を高めていくことが期待できる。日本経済は停滞を続けてきたとは言え、潜在的な強さも含め様々な強さを有しており、日本が世界の中で永続的な優位を確立していく上で、経済は戦略的重要度の高い分野である。
2:長期的に見れば、経済成長を決めるのは資本、労働力、技術進歩といった経済に内在する要素ではなく、(1)経済成長の成果を保証する私的所有権、(2) 生産基盤である物的インフラの整備度、(3)人的資本の優秀性や集積度、(4) 技術革新能力、(5) 社会的結合度(極端な所得格差がなく多くの者が生産的な活動に参画できる社会であること)、(6)政府のガバナンスといった、外部から経済を支える制度的なファクターであり、経済の評価に当たっては、経済そのものよりも、これらの観点からの日本の全体評価が重要である。
3:今後、少子高齢化と人口減少に直面する日本経済は、不断のイノベーションによる生産性の上昇、あるいは、日本の魅力を高め海外から生産活動を呼び込む形で、長期的な停滞要因を克服していかなければならず、そのためには、より競争的で魅力的な経済社会への変革や、日本の真の開国などに向けて構造改革を進める必要があるという意味で、経済は戦略的重要度の高い分野である。
4:グローバル化の中で生じた世界経済の構造変化の下では、より競争的な経済社会への変革などに向けた構造改革路線は、一部の勝ち組みとその他多数との間の格差を拡大させていく。現在においても、一部の製造業や都市を中心に景気回復の動きが見られる一方で、中小非製造を中心に地方の疲弊が著しく、努力しても立ち直れない層が拡大しているとも言われる。これまで日本経済の強さを支えてきた平等で均一な社会や厚い中間層が崩壊し、経済面での日本の強さは失われる恐れが大きい。こうした二極分化の問題にどう対応していくか、社会のあり方全体についてのビジョンやコンセンサスをどう形成するかという点こそが問われている。
5:日本経済がどれだけの強さを持っているとしても、その強さを発揮させられるか否かは政府の政策運営が適切に行われるかどうかにかかっている。巨額な財政赤字や不良債権などを始めとする過去のツケをどう処理していくのか、生産的な分野へ資源配分をシフトさせるために構造改革を断行できるのか、自国を真に開国して東アジア諸国などと共通の繁栄基盤を構築できるのかなど、戦略的に問われているのは、経済そのものよりも、政治や政策面でのガバナンスである。
6:日本経済は、日米同盟を基軸とするアメリカとの関係という制約の下に置かれているのであり、自国の安全保障を確保するために、日本はアメリカへの巨額な資金供給や、為替や金融を通した外資によるマネージメントなどを甘受しなければならず、たとえ自国経済の強さを活かしたところで、日本はアメリカの繁栄に貢献する形でしか自国の繁栄は追及できない。戦略的により重要なのは、世界の中での日本のあり方や国益をどう再構築するかである。
7:少子高齢化や人口減少など、経済を取り巻く諸環境に鑑みれば、日本経済は長期的に衰退していくと見るべきであり、今後、国内での貯蓄と投資の大きな循環が見込めない日本経済を、日本の戦略的重要分野と位置付けることは適当でない。日本は経済の分野ではなく、成熟国家にふさわしい別の価値観や尺度で世界における存在感を確保していくことが、将来の道を切り開くと考えるべきである。
8:

その他 (あなたのご意見をお書きください。)

Q2

[日本の社会・教育]

A.先進度 圧倒的に強い同等か強い弱いどちらとも言えない
B.強靭性圧倒的に強い同等か強い弱いどちらとも言えない
C.影響力圧倒的に強い同等か強い弱いどちらとも言えない
 戦略的な重要度を巡る論点
1:日本の社会・教育の分野を見ると、国民の知的水準、教育水準や社会秩序といった先進度は強いと評価され、一般国民の向上心や、貧富の差が小さく比較的平等な社会であることによる結合力や連帯性、社会的経験の蓄積といった強靭性についても十分有しており、今後はこれを活かして、世界における日本社会の全体的な魅力度などで計られる「影響力」を高めていくことが戦略的に重要である。
2:阪神淡路大震災の際にも賞賛された人々のモラルの高さや自律的な秩序などは、学校教育の段階から育まれた日本人の優れた特性であり、例えば、学校における掃除や給食の当番制や班の編成、班長の輪番制などは、他国にあまり例のないものと指摘されているように、同質的な阿吽の呼吸で通じ合う日本人の集団における協調性や均一性、人と人との信頼関係を大切にする傾向などは、日本の技術や経済を支えてきた圧倒的な強さである。それを今後の日本の全体戦略にどう活かすかが重要である。
3:技術のイノベーションの分野においては、あるいは、世界からヒトやカネを引きつける市場や魅力ある社会の形成という意味においても、成熟国としての日本に問われているのは、いかに創造性豊かな人材を生み出し、そうした人材が適切に評価されるよう多様性を認め合う社会へと転換できるかである。その点で、従来の日本の強さは今や弱さとなっているのであり、教育を始め様々な分野での社会の改革が日本の戦略として重要である。
4:社会の秩序や国民のモラル、集団における協調性などの日本の強さは、日本が同質的な閉鎖社会であるからこそ維持されてきたものである。今後の日本に問われているものが、アジアや世界に対して日本を真に開国することであるとすれば、従来のこうした強さを日本の強さと評価して活かしていくことは、戦略的にあり得ない選択肢である。日本の現状を見れば、排他性や横並び意識、リスク回避的で受身的思考といった価値観の硬直性に加え、労働に対する価値観の揺らぎ、基礎学力も創造性も確保できないまでに低下した教育機能、高等教育機関の国際競争力の欠如などの弱さが認められる。むしろ、これまでの日本の社会や教育の特性をいかに変え、国民の創造性や個性を高め、エリートや優れたリーダーを輩出できる社会に変革できるかが問われている。
5:経済の分野で二極分化が進めば、日本社会の従来のメリットは自然に崩壊していく。社会の階層化の流れの中で、今後戦略的に重要なのは、集団における協調性や平均的な水準の高さといった、従来の均一性のメリットをいかに残しつつ、創造性や個性、エリート層の育成などの差別化を進め、両者を調和させながら日本社会の活力を確保していくかであり、そのために、教育、企業、雇用を始めとする諸制度全般にわたる日本の社会システムの再設計が問われている。
6:社会の特性や国民性などは不変のものではなく、後天的に形成されている面が強い。日本の集団的協調性や教育のあり方も、戦後システムに適応すべく形づくられてきたものに過ぎず、例えば、戦前の日本は今のアメリカよりも資本主義的な社会であったと言われるように、そこには現在の日本とは様相を異にする社会が形成されていたと指摘されている。日本の社会や国民の有する適応力や革新能力などの強靭性にも鑑みれば、国際社会や経済の潮流に適合した社会や教育のあり方が自ずと模索されていくと考えられ、この分野にあえて戦略的な重要度を置く必要はない。
7:

その他 (あなたのご意見をお書きください。)

Q3

[日本の大衆文化]

A.先進度 圧倒的に強い同等か強い弱いどちらとも言えない
B.強靭性圧倒的に強い同等か強い弱いどちらとも言えない
C.影響力圧倒的に強い同等か強い弱いどちらとも言えない
 戦略的な重要度を巡る論点
1:日本は文化面では、独自性や伝承能力、自己表現能力といった強靭性には必ずしも優れないものの、大衆文化には洗練度や奥深さ、先端的創造性といった先進度が見られ、特に、世界に普及している大衆文化を有する国はアメリカと日本だけであり、そこには日本が中心である分野や市場が多いなど、大衆文化の影響力は圧倒的に強い。こうした大衆文化面での強みの活用は、政治、経済を始め多くの分野で日本が世界の中で永続的な優位を確立する上で高い戦略的重要度がある。
2:日本の強さは、文化的な精神性が産業的な高度性と結びついていることや、知を融合して新しい文化や技術の価値を創ることにあり、その中核にあるアート(その語源アルスは技術と芸術を意味)の要素を活用して産業と文化の融合や相乗発展、文化がもつ安全保障機能を高めることが戦略的に重要である。
3:日本に影響力の強い大衆文化が生み出されたのは、その振興が政策的に重要とは認識されずに放置されてきた中で、それが自然発生的に生成発展してきたからである。大衆文化を重要と位置付けること自体が国の介入を招き、それが本来有する特性を損なう恐れがあるなど、文化というものは本来、国の戦略として位置付けるべき分野ではない。
4:自然発生的な大衆文化よりも、その継承発展に政策としての支援が必要なのは、芸術(音楽、美術、演劇など)のように、文化的な価値が高いもののマーケットが小さく、コマーシャルベースには乗りにくい分野である。音楽におけるウィーン、美術におけるパリなどが芸術性の高い文化によって永続的な優位を確立し、世界の人々を何世代にもわたって引きつけているのは、市場を超えた価値創造の集積がそこにあるからである。日本の強みであるアートの要素も、その基本は高い芸術性や技術性にあり、日本があえて戦略的な重要性を見出すべきなのは、文化のこのような側面においてである。
5:日本が新たにウィーンやパリを上回る独自の芸術の集積を生むことは困難であり、大衆文化を政策的に振興することも不適切であって、文化そのものは戦略的重要性が乏しい。また、文化の影響力の活用は覇権的な発想にもつながるものであり、日本の行き方として疑問である。
6:日本の大衆文化は拡大首都圏の莫大な人口集積が可能とする巨大な市場によって生み出されたものであること、文化には必ずヒトが伴うものであることを踏まえれば、大衆文化の魅力や、文化に関わるヒトの営みの場を日本が世界に提供することが、拡大首都圏を中心にアジアなど世界からの投資やヒトを引きつけ、日本へのベスティドインタレストを拡大し、日本国内の活力や安全保障の確保につながっていく。世界的に圧倒的な強さを持つ日本の大衆文化の影響力の戦略的な活用を、このような文脈の下で考えるべきである。
7:

その他 (あなたのご意見をお書きください。)

Q4

[日本の科学・技術]

A.先進度 圧倒的に強い同等か強い弱いどちらとも言えない
B.強靭性圧倒的に強い同等か強い弱いどちらとも言えない
C.影響力圧倒的に強い同等か強い弱いどちらとも言えない
 戦略的な重要度を巡る論点
1:日本の科学・技術の分野は、国民の知的関心度の高さや分野別の国際的先端度、イノベーターの存在などに鑑みれば、先進度において圧倒的な強さを誇っており、世代間の継承プロセスの存在や競争による活力といった強靭性も備えている。今後、こうした強さを活かしていくことが戦略的に重要であり、さらに、その過程で先進課題の世界初の解決実績を積み重ね、世界から研究者を引きつけるなど、影響力を獲得していけば、日本はこの分野で永続的な優位を確立できる。
2:日本の科学・技術は全ての分野で強いのではなく、日本の強みは、生産現場における「すり合わせ型」の技術、生産工程に求められる。すなわち、部品や素材などを相互に不断にすりあわせながら、一つのぴったりとした製品を作り上げる統合型(インテグラル型:注1)の分野(自動車や光学機械などがその典型)での協働作業、あるいは作り込みや「匠(たくみ)」の世界で、日本は他国を圧倒する強さを誇る。これは世界に類例のない同質的で質の高い人間集団の集積が可能にするものであること、あらゆる新たな産業技術はすり合わせ型の中から創出されることなどを踏まえれば、今後ともすり合わせ型の強さを活かしていくことが、日本の戦略上、極めて重要である。
3:日本がすり合わせ型に圧倒的な強さを有するのは事実であるが、問題は、90年代以降、IT技術に顕著なモジュラー・オープン型(注1)への世界的な潮流の中で、日本のすり合わせ型の生産現場の強さが逆にこうした潮流への対応を遅らせ、EMS(注2)の進展とも相まって、かつての強さが弱さになっている分野が出てきたことにある。これはひとえに、日本の技術力の強さを活かしつつ世界の変化に対応して新たなビジネスモデルを戦略的に構築し、技術を利益へとつなげていくべきマネージメント面での問題であり、その背後には、株主や市場の圧力の下で利益率の追求を迫るべき資本主義のメカニズムの不徹底や、ベンチャーに人材を供給する人材市場の未整備などの問題が指摘される。戦略的に重要なのは、むしろ、こうした科学・技術分野の外側にある、企業経営や経済システムの問題をどう克服していくかである。
4:科学・技術を支えるのは人材であるが、日本では、教育機能の低下現象、高等教育機関の国際競争力の欠如、協調性や均一性といった日本社会のメリットの低下、労働に対する価値観の揺らぎ、生産現場の強さを支えてきた終身雇用制の崩壊といった現象が進行しており、その中で、今後は日本の人材の劣化やモチベーションの低下が進み、生産現場でも技術力の継承が困難となって「すり合わせ型」技術のメリットを発揮できなくなる。重要なのはむしろ、人的資本の維持・確保に向けた社会・教育分野での戦略である。
5:科学・技術分野での日本の優位性は、専ら生産現場でのすり合わせを必要とする分野に限られてきたのであり、ノーベル賞受賞者が少ないなど、創造的な分野での弱さ、製品化以前の発明の段階では日本の実績は皆無に近いこと、日本が強いのは技術・部品点数の中位の分野(注3)に限られ、それが少ない分野や多い分野では日本は弱いことなどが指摘される。日本が今後はプロダクト・イノベーション(注4)に活路を開かなければならないとすれば、日本がその科学・技術の強さを発揮できる領域は狭まっていくという構造的な弱さを抱えることになるのであり、科学・技術は、日本がその強みを活かして優位を確保する戦略の中では重要度を持ちにくい分野である。
6:科学・技術分野については、フェーズを経年的に見て評価すべきであり、現局面の現象のみをもって判断することはできない。日本が半導体でもたついた90年代を経て、停滞の時期に仕込んでいた新しい技術が2010年頃から花開き、日本の強みとなってくる。独創性と世界初であることが重要なノーベル賞の受賞者は、一国のピークの後、概ね20年を経て輩出されるのであり、追いつき型のフェーズでは受賞者が少ないのは当然であって、今や追いつき型のフェーズから発明と創造性のフェーズに入った日本が、いずれ科学・技術分野でその圧倒的な強さを発揮する時代が到来する。
7:

その他 (あなたのご意見をお書きください。)

(注1)
製品にはアーキテクチャー(設計思想)があり、製品というシステムはいくつかのサブシステムに分けられる。それをモジュールという。モジュールへの機能の割り振り方の如何によって、アーキテクチャーはインテグラル型(統合型)とモジュラー型に分類される。モジュラー型とは、一つのモジュールには一つの機能を与えよう(機能とモジュールが1:1)というもの。インテグラル型とは、一つの機能を色々な部品に与えて機能とモジュールが1:1でないもの。インターフェースとは、モジュールの間で情報やエネルギー伝える際の約束の型であり、この約束を自分の会社だけでなく他の会社にもオープンにするのとしないとで、オープン型とクローズ型に分かれる。このように、製品の設計思想は、モジュラー型かインテグラル型かという軸と、クローズ型かオープン型かという2つの軸で分類される。日本はインテグラルでクローズ型(自動車、小型家電等)やモジュラーでクローズ型(AV機器など)では強いが、モジュラーでオープン型(パソコンなどIT製品)には弱いことが、日本の弱みになっており、モジュラー・オープンにおける勝ちパターンの構築が日本の競争力の上で問われていると指摘されている。

(注2)
最近の世界的な生産技術の変化の一例として、EMSの活用によるアウトソーシングの流れがある。EMSとは、多数のブランドメーカーから汎用製品の製造プロセスを受託する仕組みであり、設計思想でのオープン型の進展とともに製造現場も汎用化し、そこへの参入障壁の低下から利益率が低下したところを外部化する流れがアメリカなどでは顕著である。これに対し、生産現場での強みにこだわり、こうした生産効率の悪い部分も社内に残す傾向のある日本は競争に負けてしまうのであり、とりわけ今後、デジタル家電を起爆力にするのであれば、投入を増加しなければならない半導体についてEMSを活用したビジネスモデルをどこまで構築できるかが、日本の競争力を決めるとも言われる。

(注3)
日本の強さは、生産工程の強さ、生産現場の優位性、集団的で融合的な技術開発にある。その結果、部品点数、技術点数が中程度(数百~2、3万点)の製品(カメラ、工作機械、TV、自動車など、科学的成果が製品になる前に製造プロセスで改良工夫が加えられる余地がある製品)に競争力があり、発明や最初の製品化では遅れるが、製造現場の力で追いつき、商品化の段階では成功するという特徴があるとされる。逆に、日本の弱さは、部品点数、技術点数の少ない分野(化学触媒、バイオ等)と、それの多い分野(航空機、宇宙ロケット等)であるとされる。前者は、科学的成果を工場の生産工程を経ないで生産に結びつけられる分野であり、後者は、仲間内を超えた協業とマニュアル化が必要で、技術リーダーの指令によって生産が行われる分野(アメリカでは軍事とも関係している分野)である。部品点数が10万点を超えると、現場の工夫では混乱が起こり、国家プロジェクトなど強い命令系統が必要になるとされる。

(注4)
従来、日本はプロセス・イノベシーション(生産工程を効率化する技術革新)を得意としてきたが、今やそれは中国に取って代わられ、今後はプロダクト・イノベーション(新たな財のコンセプトの創出)に活路を見出す必要があると指摘されている。

Q5

[日本の防衛・軍事]

A.先進度 圧倒的に強い同等か強い弱いどちらとも言えない
B.強靭性圧倒的に強い同等か強い弱いどちらとも言えない
C.影響力圧倒的に強い同等か強い弱いどちらとも言えない
 戦略的な重要度を巡る論点
1:日本の防衛力を評価すれば、軍事技術力や装備といったハードの面など(先進度)では強いものの、情報収集処理能力や攻撃に対する抑止力など(強靭性)や、日本発の軍事技術や戦略思想の有無など(影響力)は弱い。防衛・軍事は、いかなる時代にあっても、国家の基本として常に戦略上のプライオリティーの高い分野として位置付けられるべきものである。
2:日本の安全保障の体系は、国連や日米同盟などの枠組みの下で多角的に構築されるものであり、軍事力のみが重要ではないが、冷戦体制崩壊後、日本という土地が持つ「戦略地価バブル」(注5)が崩壊し、最小限の防衛力を有する国であるということのみでは、アメリカにとっての日本の戦略的価値は低下している。日米同盟を活用して、北朝鮮の核や中国の軍拡路線、あるいはテロなどの脅威に対する日本の安全保障を図っていく上では、自国の抑止力の向上とともに、国際協力の枠組みへの主体的な参画と貢献が求められているのであり、それを可能にすべく防衛力(軍事力)をある程度強化していくことは、国際社会の中での日本の国益確保の上で戦略中に重要である。
3:ハード面である程度の先進度を達成している日本の防衛力の問題は、戦略能力の欠如や実戦経験がないがゆえのソフト面の弱さであり、また、専守防衛であるがゆえに機動的に動けないという制度面の制約である。それが脅威に対する抑止力を不十分なものとしていることが、日本の外交政策や経済運営などを日米同盟の枠内に制約し、対米追随路線から脱皮できないことが日本の国益を損なっている。この状況から脱却するために、問題の根本にある憲法を改正し、自らの力で自国を守れる一人前の国家に向けて、防衛力を強化することが戦略的に重要である。
4:日本がアメリカにとっての地政学的に見た戦略的価値を低下させているとしても、日本が国際社会の中での魅力を高め、より多くの直接投資やヒトを受け入れることにより、アメリカが日本に対するステイクをより強く持ち、アジア諸国など各国が日本に持つベスティドインタレストを増していくこととなれば、日本の安全保障は確保される。防衛(軍事)の持つ戦略的重要性は必ずしも高くない。
5:そもそも何のための軍事力なのかを考えれば、防衛(軍事)の分野が戦略的に重要との考え方は、中国を覇権的軍拡路線にあると捉え、これを仮想敵とみなす、あるいは、北朝鮮を永続的な脅威と捉えるという考え方を前提としていることになる。少なくとも、日本が軍事力を重視する政策は、アジア諸国などをして日本に背を向けさせることになり、かえって日本の国益にそぐわないのであり、この分野の日本にとっての戦略的重要度は低い。
6:科学・技術分野については、フェーズを経年的に見て評価すべきであり、現局面の現象のみをもって判断することはできない。日本が半導体でもたついた90年代を経て、停滞の時期に仕込んでいた新しい技術が2010年頃から花開き、日本の強みとなってくる。独創性と世界初であることが重要なノーベル賞の受賞者は、一国のピークの後、概ね20年を経て輩出されるのであり、追いつき型のフェーズでは受賞者が少ないのは当然であって、今や追いつき型のフェーズから発明と創造性のフェーズに入った日本が、いずれ科学・技術分野でその圧倒的な強さを発揮する時代が到来する。
7:

その他 (あなたのご意見をお書きください。)

(注5)
「戦略地価バブル」:アメリカがソ連を封じ込めようとしていた冷戦期においては、そこを通過しなければウラジオストック海軍が太平洋に展開できない間宮、津軽、対馬の三海峡を持つ日本は天然の障壁であった。日本という土地は、そこに人が住み、ある程度の防衛力を有するだけで、アメリカにとって「戦略地価」を有し、それはソ連の極東軍拡に伴って上昇したが、冷戦体制崩壊とともに日本の「戦略地価バブル」は暴落し、「利己が利他につながる幸福な予定調和は崩壊した」(谷口智彦)という見方。

page2 に続く

2004年03月01日 12:53

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