敢えて大変な年にー野田政権支持表明/安嶋 明(日本みらいキャピタル株式会社代表取締役社長、事業再生実務家協会 常務理事)

2012年1月01日

安嶋 明(日本みらいキャピタル株式会社代表取締役社長、事業再生実務家協会 常務理事)

日本興業銀行を経て、2002年2月事業再生ファンド運営会社の日本みらいキャピタル株式会社を設立、現在に至る。事業再生実務家協会常務理事。経済産業省早期事業再生研究会委員他を歴任。日本エッセイスト・クラブ会員。

 言論NPOからの緊急アンケ-トに回答したが、言い足りない部分があるので投稿することにした。
 そもそもマスメディアがよく行う政権支持率調査だが、聞かれた人は何を基準に答えているのだろうかと疑問に思うことが度々である。特に「首相の人柄が信頼できるか」という類の質問だけの場合(言論NPOは他にも設問があるので良いが)一体首相の人柄と政治家としての能力がどう関係するのかと聞き返したくなる。
 野田政権成立後、やはり本欄に投稿した際、「この政権が持つ基本的ビジョン、それに基づく具体的ゴールと期日をコミットし、ぶれない姿勢が求められる。」と述べたが、次第にはっきりしてきているように思う。そこで今回は野田政権支持を表明したい。ただし民主党を支持するのではなく、野田政権を支持するということである。
 首相の支持率は常に最初がピ-クで徐々に下がるのが当たり前というのはいかがなものか。初めに過度な期待をかけるぐらいであれば、当初の期待は抑え気味にして現実の中での実績(あるいは努力)をフェアに評価してもいいのではないか。重要なのは将来の日本をどうしたいのかというビジョンと道筋である。
 具体的に言えば、消費税問題を先送りするか否か、TPPにどう対応するか、地方に財源をどこまで移管するか、行政改革をいつまでに断行するか、あとは安全保障問題(集団的自衛権)、教育問題であろう。これだけでも相当の組み合わせになるが、その中で政策を軸に(民主党のマニフェストと異なることは明らかである)今年中に政界の再編が起きたうえで選挙が行われるのが望ましい。
 以下、各項目について簡単に私見を述べたい。まず消費税増税であるが5年先を考えると避けて通れない。自民党も与党に復帰したいなら、この問題を政局にすべきではない。よく景気が上向いてからという議論があるが、今のままではよほどの円安にでもならない限り景気の急激な好転は難しいであろう。むしろ消費税増税と社会保障制度改革の道筋を明らかにして、人々が持つ年金への不安感を少しでも払拭することこそが景気の下支えになると考える。日本のような成熟社会では従来型の有効需要刺激策にのみ頼るのではなく、これまで民間が貯めてきた資金をいかに中長期の投資として運用に回すかを真剣に考えたほうがよい。
 TPPは貿易問題というより安全保障問題に近い。唐突感は否めないし情報が不足していることも確かであるが、グロ-バル化の流れは止まらない。国内農業はいずれにしても今のままでは立ち行かない。要は現在の一律ばらまき型の個別保証を止めることだ。今後TPP交渉で日本が苦手とするフレームワーク作りをどこまでやれるか、可能な限り頑張るしかない。
 地方分権であるが、ポイントは権限と財源をどこまで地方に渡せるかである。これまで何やかや言って国と地方は互いにもたれ合ってきた。権限と財源を大幅に委譲して、企業で言えば自立経営をせざるを得なくした場合、最初はそれこそ経験不足で大変であろうが、霞が関の人間が地方に戻って実務を引き受ければいい。
 人数合わせのために操り人形のような政治家はいらない。衆議院も参議院も大幅削減して、その分真面目に政策を考える政治家には政策スタッフを余計につけてやればいい。ここでも公務員削減で浮いた優秀かつやる気のある官僚(ただし役所を辞めて)をどんどん使えばいい。
 大変というのは大きく変わることというが、今年は敢えて大変な年にすべきである。
 野田総理には安易な妥協はせずに、政界再編もいとわずに、最後は総選挙まで突き進んでもらいたいものだ。