被災地に向けたボランティアの動きをどう立て直すか

2011年7月05日

 6月8日、言論NPOは、言論スタジオにて早瀬昇氏(大阪ボランティア協会常務理事)、矢野正広氏(とちぎボランティアネットワーク事務局長)、田中弥生氏(言論NPO理事、大学評価・学位授与機構准教授)をゲストにお迎えし、「被災地に向けたボランティアの動きをどう立て直すか」をテーマに話し合いました。


 まず代表工藤から、「震災から3ヶ月が経ったが、被災地はまだ瓦礫の山があり、一万人あまりの方が避難所で暮らしている。だが、GW以降ボランティアが減ってきているのが現状。この問題をどう捉えればいいのか」と問題提起があり、①被災地におけるボランティアがいまどのような状況にあるのか、②ボランティアはなぜ減ったのか、そして、③継続的にボランティアが参加する仕組みのために何が必要なのか、をトピックとして、話し合いが行われました。


 第一の点について田中氏は、企業や医療専門家、学生などのボランティアの動きを紹介し、「全体で見た場合、日本のボランタリズムは比較的盛り上がっていると思う」とした上で、「社会福祉協議会を通じたボランティアについては、たしかにピークだったGW中から比べると6月以降は半減している」としました。一方で早瀬氏は、「費用や時期的な点も含めたボランティアの「コスト」を考えると、阪神大震災を上回る」として、「それほどネガティブに見る必要はないのではないか」と述べました。栃木でボランティアを集めている矢野氏は、「水害に対する復興に要するボランティア数は184万人」との推計を持ち出しながら、被災地のニーズから見た場合、いまだに圧倒的多くのボランティアが不足している、との見方を示しました。


 第二の点について、工藤が「ボランティアが機能するためには、地域の人との信頼関係や受け皿が不可欠だが、この三ヶ月でそれは機能したのか、まだ課題があるのか」と提起すると、矢野氏は村的な助け合いの中でのコミュニケーションのあり方と都市的な新しい共同体の関係性の違いについて触れ、「地元の社協をベースとしたボランティアセンターではそれまでの住民との関係性を重視してしまう。逆によそ者が積極的に現地に行って新しい信頼関係をつくることが必要」と指摘しました。また、NPOがボランティアを届け、受け皿になる点でも十分な役割を発揮していない、という問題が話し合われ、矢野氏は「これまで専門スタッフや行政の受託事業だけをやってきた団体がここにきてボランティアを送り出す、というのは不可能」と指摘し、田中氏も「NPO自身がボランティアや寄付を受けることで市民とつながっていないところも多く、こうした傾向を問題だと考えてこなかったNPO側も真摯に受け止めて反省すべきだと思う」と述べました。
 早瀬氏はこの点について、「ボランティアと付き合ってきたのは、現地では社協系のボランティアセンターだったが、NPO側がボランティアとつながっていたら、もう少し違う展開だった」と述べる一方で、「地元で何かしたいという人は着実に増えているので、風向きは変わってきている」とも強調しました。


 最後に、ボランティアの動きを立て直すために今後必要なことについて、矢野氏は、「ある意味でボランティアの数値目標を設定して、それを目指して努力するような動きが大切」とし、さらに「現地のボランティアセンターが疲れており、それをサポートする動きやNPO自身が受け皿となるような多様な取り組みが必要」としました。また、田中氏は、「これだけ当事者意識をもとうとしている市民の熱意を、もっと活かす社会であって欲しい」と述べ、ボランティアにとって物理的にもコーディネーションの意味でも高いハードルを下げる努力を一刻も早くすべきとの認識を示すと同時に、多くのボランティアの課題に取り組むドラマを広く伝播させることも大切、と述べました。最後に早瀬氏は、「人が参加して物事を解決していく事のほうが、参加を受け付けずに一部の人達で決めるよりもずっといいこと」と述べ、寄附やボランティアを通じた「参加の力」を様々な場面で確認し合うことこそが必要だと指摘しました。


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