民主主義を強くする

「日本の未来と言論の責任を考える」 ~言論NPO設立14周年パーティー報告~

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日本はどのような民主主義を目指すべきなのか

 設立14周年を迎えた言論NPOは11月26日(木)、東京都内の海運クラブにおいて「日本の未来と言論の責任を考える」と題して設立14周年パーティを開催しました。

 会場にはこれまで言論NPOの趣旨に賛同し、その活動を応援してきた支援者約120人が集まりました。

 パーティーの第一部では、言論NPO設立とその後の活動に対して力強いご支援をいただいた故小林陽太郎氏を偲び、故小林陽太郎氏と言論NPOの原点を振り返りながら、日本はどのような民主主義を目指せばいいのか、言論NPOのアドバイザリーボーでもある小倉和夫氏(国際交流基金、元駐フランス大使)、大橋光夫氏(昭和電工株式会社最高顧問)、宮本雄二氏(宮本アジア研究所代表、元駐中国大使)、藤崎一郎氏(上智大学国際関係研究所代表、前駐米大使)の4名によるオープンディスカッションを行いました。


日本のデモクラシーの在り方をどう考えていくべきか

 司会を務めた言論NPO代表の工藤泰志はまず、「デモクラシーを考えることが言論NPOの原点だった。当時、小林氏は『日本のデモクラシーは大衆を対象に問題を単純化した『クイックなデモクラシー』になるか、それとも色々な議論を積み重ねていく『ストロングなデモクラシー』になるかの分かれ目に来ているが、8割方前者になってしまっている』と憂いていた」と14年前を振り返りました。その上で、小林氏の懸念を払拭するために「この国のデモクラシーのあり方をどうすべきか」とパネリストに問いかけました。

 これを受けて小倉氏は「市民一人ひとりが政治やメディアなど他者に責任をなすりつけず『市民の責任』を自覚するような社会にする必要がある。そして、各自が『民主主義のために戦う』というくらいの気概を持つべきだ」と語りました。


 大橋氏も「日本のデモクラシーは勝ち取ったものではなく与えられたものであるため、国民はデモクラシーについて考えたことがない。かといって聖職であるはずの政治家のモラルハザードが著しいため、統治を全面的に任せられない。そういう状況の中で国民は『主権』を持て余すことなく自分自身にどういう義務、責任があるか考える必要がある」と述べました。

 また、大橋氏は日本で民主主義が機能していない要因として若者の低投票率を挙げ、「小学校からの政治教育が必要だ」とする一方で、政治家が聖職としての権威を取り戻すために「政党も若い議員を教育すべきだ」と指摘しました。

 宮本氏も小倉氏、大橋氏の主張に同意しつつ、自身の外交官時代の経験として「フランスの外交官と話をすると人権について自分の言葉でしっかりと語っていた。国連人権委員会の対処方針を見ながら人権について議論していた自分との差を痛感した」と振り返り、「日本も社会全体で自由や民主主義の意義について考えていく癖をつける必要がある。そのためにも言論NPOは判断材料を提供していくべきだ」と述べました。

 藤崎氏は「今の日本は基本的にはライトトラック、すなわち正しい軌道にあるが国民感情の揺れ動きなど『ブレ』の大きさは気になる。反中・嫌韓の雑誌が相次いで出版されるなど過熱した世論が見られるが、今こそ本当の意味での『クールジャパン』が求められるのではないか」と述べ、現状を冷静に省みることが民主主義を機能させることにもつながるとの見方を示しました。また、「国民全体が一つの方向に『集中』してしまう傾向もある。民主主義には『多様性』も不可欠だ。社会の中に『斜に構える』ような人も存在することが重要だ」と指摘しました。


主権者の冷静でロジカルな思考と、政治家の「ノブレス・オブリージュ」の精神が必要

 議論を受け、ゲストとして登壇した石破茂・地方創生担当大臣は、自身が中学時代に愛読した清水幾太郎や田中美知太郎といった思想家が「日本は本当に国民主権国家といえるのか」と問題提起していたことを紹介した上で、「40年経った今でも状況は変わっていない。主権者とは自分で考え、判断する人を意味するが、他者に頼る人が多い日本は国民主権国家なのか疑問だ」と指摘しました。

 石破氏はその背景として今の日本が米軍基地や集団的自衛権、憲法改正などにおいて「当たり前の議論が冷静かつロジカルにできていない」ことや、保守系の雑誌に見られるように特定の内輪向けの議論が多く、色々な視点に立った議論が見られない言論空間の現状を指摘しました。

 その上で石破氏は「民主主義を健全なものにするためにも主権者には冷静でロジカルな思考に基づき、判断していくことが求められる。日本には社会保障など『サステイナブル』が問われる課題も多い中、そういう議論の重要性はますます高まっている」と語りかけました。

 そして、政治家も選挙に不利なためにサステイナブルな課題に正面から向き合うとしていないことを指摘しつつ、大橋氏の「政治家は聖職」という発言に対し「政治家も『ノブレス・オブリージュ』の精神を持ち、勉強していかなければならない」と述べました。

 続いて、浅尾慶一郎・衆議院議員は、言論NPOが実施した民主主義に関する有識者アンケートでは「野党には課題解決能力がない」という回答が多かったという結果を受け、「野党は政権に対して『何でも反対』ではなく、認めるべきところは認めながら建設的に議論をして、課題に向き合っていく必要がある。メディアもそういう野党に姿勢に対して安易に『政権に対するすり寄りだ』と批判するべきではない」と語りました。


市民一人ひとりが考える民主主義の実現に向けて

 議論の最後に工藤は、「日本の将来に対して無責任な楽観主義が蔓延する中、誰かが手を挙げて問題提起をしなければならない。日本の将来にとっての瀬戸際となった今、言論NPOは大きな勝負に出る。市民一人ひとりが考える民主主義を実現するためにも、有識者のネットワークを広げながら言論の空間をつくっていく」と会場に詰めかけた多くの有識者に協力を求めながら白熱した第一部を締めくくりました。

⇒第2部報告はこちら

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