第7回エクセレントNPO大賞 「組織力賞」講評

2019年12月12日

IMG_9868.png古賀攻
第7回エクセレントNPO大賞審査委員、毎日新聞社編集編成局専門編集委員


1. 審査の視点

「組織力賞」では、組織の使命や目的が文書に明示され、その課題や方針が明確になっているか、事業の成果がホームページなどで公開されているかなど、情報開示、資金調達の多様性や透明性などの点を中心に審査を行いました。また、活動に見合った運営の独立性や中立性を維持しているか、働く人が組織の目的を理解した上で仕事に取り組み、スキルアップできるよう助言・相談や教育の場を設けているかなど、組織の使命を持続的に遂行できる基盤を十分に持っているのか、という面からも審査しました。


2. 審査結果

(1)ノミネート団体

「認定特定非営利活動法人 みらいの森」

みらいの森は、児童養護施設で暮らす子どもたちが、社会に出たときに必要となる「生きる力」を、体験を通して身に着け、自分の道を自分の力で切り拓けるようになることを目的にアウトドアやキャンプ活動を継続的に推進しています。HPは美しく、必要な情報(組織のビジョン・ミッション、設立経緯、子どもたちを取り巻く環境、活動内容、役員紹介、法人概要、活動報告書、決算報告など)が整理されて記載されています。また、新たな財源開拓のために工夫を凝らしていることを評価しました。また、コンサルタントを登用して、業務マニュアルを作成されたとのことで、業務の見直しや棚卸もできたのではないでしょうか。


「公益財団法人 民際センター」

民際センターは、貧しい国や社会・貧困家庭に生まれても、人として教育を等しく受ける権利を享受するための活動をアジア中心に展開しています。現在タイ、ラオス、カンボジア、ベトナム、ミャンマーに事務所を開設し、教育支援事業を展開しています。また現在、全世界の発展途上国におけるインターネットのアクセスが可能な中学校に対して、奨学金提供の可能性がでているとのことで、デジタル送金が次の課題であるとし、解決に向けた活動に取り組まれています。まず、わかりやすいHPです。10年以上の寄付者が圧倒的に多いという点、さらには寄付金が疑わしい場合には、事務局で検討し、返金する点も評価しました。


「特定非営利活動法人 メドゥサン・デュ・モンド ジャポン」

「誰でも治療を受けられる未来を。」をモットーに、国籍、人種、民族、思想、宗教などのあらゆる壁を越えて、世界各地で「医療」から疎外された人々への支援活動を推進しており、日本では福島原発事故被災者への心のケアの継続、都内でも池袋周辺でホームレス状態にある人々への医療支援を行っています。メドゥサン・デュ・モンド ジャポンは、収入の多様性を尊重し、公的資金額の比率に上限を守ることが徹底されている点を評価しました。また、財政の透明性においても1名の監事による内部監査と外部の公認会計士による会計監査が毎年なされ、情報開示の点においても監査報告書は全てHP上で公表している点も評価しています。1億円を超える活動になると、なかなか難しいところもあると思いますが、市民から支えられていることを大事にしながら、今後の活動に大いに期待できるものと思われます。


「認定特定非営利活動法人 ロシナンテス」

ロシナンテスはスーダンの政治事情により医療の届かない地区におけるマラリアやコレラなどの医療活動を推進しています。「医療の仕組み」を整える活動にシフトし、現在では、建設を進めてきた診療所も順次、政府・自治体へ受け渡しが行われ、スーダンの人々による運営が始まっています。とても分かり易く、クリアなホームページです。資金調達のプロセスの透明性や中立性も、団体内でチェックを行っているとのことです。また職員の育成を担当、職種別に行っている点を評価しました。事務所間での情報交換や意見交換をすることは、切磋琢磨の機会にもなると思われます。


(2)組織力賞

 以上、ノミネート団体の中から慎重に議論を重ねた結果、組織力賞は「メドゥサン・デュ・モンド ジャポン」に決定しました。組織力の評価基準で重視している、団体の独立性、中立性、多様性を強く意識した運営に特に努めている点を評価しました。具体的には、収入の多様性を尊重し、公的資金額の比率に上限を守ることが徹底されている点、並びに、財政面の透明性においては、1名の監事による内部監査と外部の公認会計士による会計監査が毎年なされるとともに、情報開示の点で監査報告書は全てHP上で公表している点などを高く評価しました。なお、受賞には至りませんでしたが、ノミネートされた他の3団体も受賞に匹敵するような高い組織力を持っています。


3. 今後に向けての期待

効果的かつ持続的な事業推進の観点からは、組織運営を担う人材の採用や育成は、重要な課題となります。働く人が組織の目的を理解した上で仕事に取り組み、スキルアップできるよう助言・相談や教育・研修の場を設けているかなど、組織の使命を持続的に遂行できる基盤を十分に持っているのかについて、インターネット等で対外的に公開していくことで、将来の事業推進を担う人材の採用に繋がりうると思いますので、より一層の情報公開を期待したいと思います。

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