市民社会に必要な変化とは

2012年2月17日

2012年2月13日(月)
出演者:
小倉和夫氏(国際交流基金顧問)
山岡義典氏(日本NPOセンター代表理事)
田中弥生氏(大学評価学位授与機構准教授)

司会者:
工藤泰志(言論NPO代表)

放送に先立ち緊急に行ったアンケート結果を公表します。ご協力ありがとうございました。
 2月13日の言論スタジオでは、小倉和夫氏(国際交流基金顧問)、山岡義典氏(日本NPOセンター代表理事)、田中弥生氏(大学評価学位授与機構准教授)をゲストにお迎えし、「市民社会に必要な変化とは」をテーマに議論が行われました。

 まず、代表工藤は、「混迷する政治を打開する主体として「有権者」に期待が集まっている。今回はそれに関連して、市民社会の新しい変化や課題について考えてみたい」と述べ、今回は、①日本の市民社会で起こっている新しい変化とはどんなものなのか、②一人ひとりの市民はこの国の課題にどう向き合えばいいのか、③これからの市民社会の課題は何なのか、の3つの論点について本格的な議論が行われました。


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 まず、市民社会の新しい変化について、小倉氏は、「世界中で政治制度や政党に対する不信が広がり、各国である種の市民運動が頻発している」とした上で、それに対する市民による運動が日本において低調な理由として、「これまで政党と市民をつなぐ中間団体の役割が変化し、政治にプロセスに参加するための受け皿が機能していない」ことを挙げました。一方、山岡氏は市民セクターは「第2ステージに入った」と指摘。昨年の東日本大震災を契機に、阪神大震災後にその存在の重要性を認識され始めた段階からは変化しているとの見方を示しながら、「新しいサービスプロバイダーとして優れた団体は出てきているが、アドボカシーに本格的に取り組む団体が少ない。NPO法自体の政治規制の問題もあるが、NPOが政治性を持っていいという状況を作り出さないと、本当に社会のダイナミズムをつくり出していけるのか」と新しい課題を提起しました。

 そして、田中氏は、「旧来型の仕組みでは現在の変化に対応できなくなっている中で、住民運動や市民活動がその割れ目の中からニッチを探すように出てきているのだろう」と現状を説明しつつ、「若い人々の働き方そのものについての考え方が変化している」ことを強調。「働くことと社会に貢献することが同じくらいのウェイトを占めている若者が明らかに増えていて、そういった層が、これからの市民社会をつくっていく大きな原動力になると思う」と語りました。

 次に、「私たち一人ひとりの市民はどのように課題に向かい合えばいいのか」について議論がなされました。小倉氏は、「身近なイシューで市民が集まり、行政のプロセスにもっと市民が入り口として入っていくことが必要だ」と述べ、山岡氏もこの点に賛意を示し、「リアリティのある関わりの中から、従来の政府や産業とは違うメッセージを社会に出していく。その中で自分たちが何を選択するのかが問われる」と主張しました。一方の田中氏は、「社会的な課題解決を実感するための一番いい学校は非営利組織やボランティア活動だと思う。行政を通じた参加だけでなく、外の目も両方持ち合わせているべきだ」と述べました。

 この論点に関して、次に代表工藤は、この議論に先だって行われたアンケートの設問とその結果に触れながら、「政治が何も決められない中で、リーダーシップを期待する声が高まっている。政治家は白紙委任された存在という発言も出ている。こうした風潮とここで議論したような、市民が自分たちで考え社会の課題に参加するプロセスとは方向が全く違うように思うがこれについてはどう考えるか」と問題提起しました。
 これに対しては、「選挙をやったときに想定しなかった政治的決断が必要になる場合を考えれば、有権者との対話、議論のプロセスは不可欠だ」(山岡氏)、「「白紙委任」という言葉自体、課題について自分で考えて選択する自由を自分から放棄するということ」(田中氏)として、有権者は社会の当事者であるという観点から両氏ともに危機感を表明。小倉氏は、「政治家自身が政治の不信を利用し、マスコミがそれに乗り、政治不信を加速している。この悪循環を断ち切らない限り、何ら解決にはならない」と述べると共に、「逆に言えば市民側が自己不信に陥っているのであり、市民一人ひとりが自信を取り戻さなければならない」と強調。そのためにも、「(社会の課題に)自らが参加することが必要だ」としました。

 最後に第3の点について、代表工藤は、先のアンケートで力強い市民社会ができるために、非営利の世界に問われる課題として、「NPOの課題解決の力」「NPOと市民のつながり」「NPO活動の見える化」などが多く挙げられた点を説明し、参加者に市民社会のこれからの課題について問いました。
 非営利の世界に質の向上を目指すため、言論NPOなどは望ましいNPOの評価基準として「エクセレントNPO」の評価体系や自己診断ツールを公表していますが、山岡氏はこの評価基準策定に携わった立場から、アンケート結果を「実感としてピッタリだ」とし、「震災の経験の中で見えてきたのだろうが、本物のNPOがやるべきことは何かについての認識が前向きに出てきている」と指摘。田中氏もアンケートで浮き彫りになった課題が、市民性と社会変革性、組織の刷新性に見合って現れていることを指摘し、「市民と一緒に課題解決をしていきたいと多くの人々が強く感じていることの現れ」と述べました。また、小倉氏も、非営利の世界で評価基準がなぜ重要なのかについて、「NPO活動を第三者評価することで、ある程度客観的な社会的信用度を出すことができる。そのことが、資金調達などにもリンクしていくのだろう」と説明するとともに、「今は震災の支援の追い風に乗ってNPOの評価が高いかもしれないが、これから本当の課題解決をするためには、闘うNPOにならなければならない。それが日本の風土の中でどのように育つかのか、今後の難しい問題だ」と語りました。

 最後に代表工藤は、「市民社会の中に気付きがあり、新しい変化が広まっている。しかし、これからもっと政治的な課題にも向かわなければならないし、そのためには非営利組織自体が、社会的な信用力や、市民による信頼を獲得することが必要不可欠。それを高めるためにも、エクセレントNPOを必要なモデルの一つとして普及しながら、NPO自身が切磋琢磨する状況を作っていきたい」と述べ、議論を締めくくりました。

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