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2013年5月 1日

日本の将来を考える上では有権者の覚悟こそ必要

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※本原稿は明るい選挙推進協会が発行する「Voters13号」に寄稿した原稿です

 言論NPOは昨年12月の衆議院選挙において、各党の政権公約、いわゆるマニフェストの評価結果を公表した。

 私たちのマニフェスト評価は2003年の小泉政権下の総選挙から始まり、今回で5回目となる。評価は8つの評価基準に基づいて毎回行われており、評価作業には各分野の学者や専門家など約40 名の方が参加。また言論NPOに登録する約4,000人の有識者(メディアの編集幹部、学識経験者など)に評価内容をアンケートでフィードバックしてもらい、最終的には「マニフェスト評価書」として、一般有権者に公開している。

 先の選挙では解散までの時間の制約もあり実現できなかったが、通常はマニフェストに関する政党間の公開討論会をインターネット中継で行い、評価のプロセスは可能な限り有権者に公開している。


 私たちが政党の公約やその実行の評価に取り組むのは、有権者が主権者として自ら政策を判断し、政治を選ぶ、そうした緊張感ある政治をつくりたいからである。マニフェストはそうした国民に向かい合う政治を生み出すための道具であるべきだが、その品質が前政権であまりにも悪く、マニフェスト自体の信頼が崩れ、マニフェストという言葉を公約集から外す政党まで表われた。ただ、私は、有権者主体の政治そのものが否定されたとは考えていない。

 であるならば、道具の品質を上げることを有権者が政党に迫るしかない。私たちが選挙の際に評価結果を公表し続けるのは、そのためである。


国民との約束である以上、明確な目標設定と達成時期の明示を

 では、どうやってこの評価を行うのか。私たちは03年に初めて評価をやって以来、同じ評価基準に基づいて評価を行っている。これは2つの要件で構成されている。

 1つは、公約が約束としての体裁を整えているか、を判断する形式的な要件である。例えばその課題の解決になぜ取り組むのか、という党として目指すべき理念や目的、明確な目標設定、達成時期と財源の裏づけ、そして目標実現までの工程や政策手段が、公約の中に説明されているかである。国民との約束という以上、少なくとも目標や達成時期がないと、約束として公約を見なすことはできまい。

 私たちはまずこれらの形式要件の評価項目を1つひとつの公約を読みながら採点していく。そのすべてが満たされた場合40点となる。

 そして2つ目は、その公約の中身を実質的に評価するもので、その公約が課題解決のプランとして適切か、また課題解決を実行する体制や党のガバナンスが整っているか、などが判断される。配点は60点である。

 この基準に基づいて政党のマニフェストのうち10 の政策分野の公約を評価し、それぞれを100 点満点(形式40 点、実質60 点)で採点し、その平均点で政党の公約の点数を公表している。09 年の総選挙で民主党は政権交代を果たしたが、言論NPOのマニフェストの評価は100点満点でわずか27点だった。その最大の理由は財源の捻出が曖昧で政策の実現性が疑わしかったことである。当時は私たちの採点がかなり低いと批判を受けた。しかし、民主党政権は私たちの評価の指摘どおりに、多くの政策が政策目的や財源が曖昧なために断念や修正に追い込まれた。


強い民主主義に不可欠なマニフェストサイクル

 私たちが行っているのは、選挙の際のマニフェストの評価だけではない。有権者が選んだ政権の政策実行のパフォーマンスを今度は、政権の実績評価として、私たちは定期的に評価を行い、その内容を公開している。

 選挙で約束した政策を政権はどう実現したのか、修正する場合はその理由を国民に適切に説明したのか、こうした約束実現のプロセスを私たちは追いかける。投票の際には、有権者により多くの、しかも適切な判断材料が必要だと思うからである。

 選挙とは有権者が自分たちの代表となる政党や政治家を選ぶことであり、その際に政党のマニフェストを判断して有権者は投票し、次の選挙ではその実績に対する評価を投票という形で行うことになる。こうした国民との約束を軸とした政治のサイクルが、強い民主主義を作るために不可欠である、と私たちは考えている。そのためには、もちろん、評価団体もその信頼を確立しなくてはならない。

 日本ではこうした評価を専門とした中立で独立したシンクタンクは、残念ながら言論NPOしか存在していない。

 選挙の際には様々な団体が評価を行うが、自分が行う評価の基準も公開しないまま、選挙時にだけにわかに「評価」に取り組む団体がほとんどである。また、自分たちの評価が結果的にどうだったのか、政権の実績評価を報告する団体も皆無である。

 前回の民主党政権時には多くの団体が高い評価を出したが、その後、その団体が政権の役職や業務に加わるなどの例があった。評価する団体は中立でなくてはならず、特定の利害に関係したり、その政権に協力するなどということはあってはならない。

 評価団体が信頼を得るためには、団体は評価の結果だけでなく、プロセスも公開し、中立性を説明する必要がある。評価を公表する以上、そのプロセスが特定の利害や政治等と無関係に中立的でかつ透明に行われていることを説明しなくてはならないからだ。

 多分、そうした団体がこれからの日本でも数多く出てくるだろうし、私はそれを期待している。


政治と有権者との緊張関係が強い民主主義を生む
~永田町だけの改革では日本の政治は変わらない~

 私は、強い民主主義とは有権者と政治との間の緊張感ある関係が生み出すものだと考えている。かつて、当時の自民党の石破茂氏にインタビューした際の発言は私にとって極めて印象的だった。
 日本の政治は、課題解決で競い合うような政治になれないものか、と質問した私に、「永田町だけの改革では日本の政治は変わらないだろう。有権者がそれを求めるべきで、自分の投票の結果、日本自体の未来がどうなるのか、それを真剣に考えられる有権者がこの国を変える原動力になる」、というものだった。
 マニフェスト導入の本質的な意味は、政治家にお任せする政治から、有権者が自らの判断で政治を選ぶ、という有権者主体の政治に日本を切り替えることにある。
 過去20 年間、日本の政治は何も決められず、特にこの10年間は毎年のように首相が変わってきた。こうした政治を本質的に変えるためには、有権者側に変化が問われていたのである。


毎年、首相が替わるような政治を許したのは誰?
~問われる有権者側の姿勢~

 昨年春、言論NPOは、アメリカの有力なシンクタンクであり、世界的なクオリティ誌、フォーリン・アフェアーズを発行する外交問題評議会が提案した、世界20カ国の主要シンクタンク会議、CoC(Council of Councils)の常設メンバーに選ばれ、私はワシントンを訪問した。

 その外交問題評議会が主催したパネル・ディスカッションで司会者が私のことを紹介した際に、こう質問をぶつけられた。「ワシントンが日本を無視していることを工藤さんは知っていますか」と。

 私はやや憮然として「もちろん知っているが、同盟関係にある両国がこうした状況にいることをどう考えるか」と逆に返したが、その時の会場の冷ややかな空気に少し圧倒されていた。

 会場から、何人もが手を上げ、その中でマイクを握った、沖縄の米軍基地で働いた経験を持つ女性がさらに私にこう追い打ちをかけた。

 「では、そういう状況を招いたのは誰なのでしょうか?」
 彼女が、私に問いかけたのは、その当時の日本の政権の評価ではない。首相が毎年替わるような政治を10年近くも許している、有権者側の姿勢だったのである。

 政治はあくまでも有権者が選ぶものであり、政治が仕事をしなかったら有権者が変えるしかない。それが、民主主義の規律なのである。


公約の羅列になっていないかなど
~公約の6つの簡単な判断基準~

 昨年の選挙で私たちは、政党の公約の評価にそのまま入らず、その前に公約集や公約の作り方を吟味し、そこに政権を目指す政党として国民に向かい合う姿勢があるか、を判定することにした。そこで、極めて簡単な6つの判断基準を採用することにした。

 まず公約集の表紙に「国民との約束」や「マニフェスト」という記載があるかどうか。「党首の顔」を中心とした表紙になっているか、また公約集は電話帳のように公約が羅列されるのではなく、重点課題に絞られているか。しかも絞られた公約が日本の直面する課題に見合っているか。また増税など負担の公約も正直に書いてあるか、の5項目である。

 これは順に言えば、公約集の約束度、党のまとまり度、絞り込み度、誠実度、正直度を見るためのものである。その1つひとつは、これまで10年近くの評価経験から私たちが得た、重要な項目なのである。この5つの項目を私たちは表紙の項目の配点を満点3点、その他を満点2点として計12点の半数の6点を取れたところをひとまず"合格"としている。

 しかし、これだけでは公約集が国民の約束になるとは言えない。そこで、この6点以上を得た政党の公約をさらにチェックして、最低でも目標や期限、財源の1つでも書かれている公約が全公約の10%を上回っているところを、基礎評価の"合格政党"としたのである。

 この6つの項目をクリアできたのが、民主党と自民党、公明党、日本未来の4党である。この4党ともぎりぎりの合格であり、この基準を少しでも厳しくすれば該当する政党はいなくなる。つまり、大多数の公約は政党の自己主張やアイデア、取り組む課題のタイトルであり、それらを羅列しているだけである。

 私たちは、こうした基礎的な評価を行った上で、さらに詳細な評価を行い、その結果を公開したのである。

 評価の結果は上掲のとおりである。評価は11の政策分野ごとに8つの評価項目で行い、その平均を各党の総合点として公表している。

 なお、日本維新の会は、基礎評価によって評価の対象から外れたが、参考として評価を行った。


政治の世界に変化をもたらすのは有権者

 私たちが、政党の政策評価を通じて痛感するのは、日本の政党政治が変化の過程にある、ということである。しかし、この変化は、政治の世界にただ期待するだけでは実現しないのである。それを作り出すのは、有権者である。

 そのためにも、私たちは自分たちで政治を、そして政策を見抜く力をつけるしかない。そして有権者のそうした覚悟が、政治の変化を生み出す力になると、私は期待している。

 私たちが行う評価も、そうした有権者主体の選挙と政治を生み出すための1つの民主主義のインフラなのである。

※本原稿は明るい選挙推進協会が発行する「Voters13号」に寄稿した原稿です

投稿者 genron-npo : 18:08 | コメント (0)