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2015年3月21日

「平和」と「民主主義」を考える新しいドラマのスタートに ~2日間にわたる議論から見えてきたもの~

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田中弥生(言論NPO理事):工藤さん、お疲れさまでした。3月20日、21日の2日間にわたり「戦後70年、東アジアの平和と民主主義を考える」というシンポジウムを開催されましたが、終わってみての感想をお聞かせください。

今回のシンポジウムがスタートに

工藤:かなり成功したというか、スタートを切れたという感じです。私たちが掲げた「平和」と「民主主義」という価値が、今年の日本の社会にとって、みんなが考えなければいけないテーマだと感じていました。戦後70年という節目の年に、日本のあり方、つまり、民主主義のあり方や平和のあり方を本気で考えないといけないというのは、逆に言えば、そういう試練を日本が受けているということだと思います。

 こうした問題意識に、今回インドネシアから、まさにインドネシアを代表するベストな人たちが来日してくれました。この他に、韓国、中国、アメリカからもパネリストが来てくれました。彼らが、私たちの考えるこの2つのテーマに関して、非常に大きなかたちで、一緒に協力し、議論に参加してくれました。インターネットでも公開しましたが、今回の議論はかなりレベルが高く、しかも、様々な教訓となる発言がたくさんありました。ですから、私は非常に満足しているというのが、今の状況です。

田中:教訓がいくつもあったということですが、特に印象に残っている例を挙げていただけますか。

工藤:実を言うと、私は今回初めて1月にインドネシアを訪れ、インドネシアという国と出会いました。2月にはドイツのベルリンを訪問しましたが、同じような感想を持ちました。

 ドイツという国は、ヒトラーという問題から決別する、過去から決別するために民主主義のさまざまな仕組みをつくり上げた。インドネシアは17年前、アジアの通貨危機があった状況の中で、それまでの権威主義体制を、大きくドラスチックに民主主義に変えた。その時、「民主主義という仕組みをどうしてもつくりたい」という思いから、政党や議会、選挙制度や地方分権といった、日本では今まで議論しても実現できなかったようなことまで、一気に解決し作り上げました。その前提にある大きなスピリットというか気持ちというものが、非常に重要だと感じました。

 そのような仕組みを大きく変えた国々と、日本の成熟した民主主義。そして、お互い「平和」という課題を抱えている4カ国が集まり議論できたということが、非常に良かったし、多くの学ぶことがありました。

田中:確かに、インドネシアと日本の交流の歴史は長いと思うのですが、これは私のバイアスかもしれませんが、ちょっと前までの関係は「援助する側と援助される側」の関係だったと思うのですが、工藤さんのお話を聞いていると、むしろインドネシアからは学ぶことがたくさんあるのだと感じました。


日本にとって必要なのは「民主主義を発展させる」という強い意志

工藤:そうですね。民主主義の展開や社会の発展段階から見れば、はるかに日本の方が凄いわけです。つまり、成熟した、安定した民主主義です。一方、インドネシアは民主主義への移行という大きな改革を成し遂げましたが、安定化しているとは言えないと思います。そういう意味では、確かに日本は立ち位置としては結構、上にいるように思う人はいると思います。

 しかし、私たち言論NPOの中で日本の民主主義の課題を議論したときに、日本の政治学者も含めて皆さん、ノーアイデアなのです。つまり、この国の政党政治が、課題を解決するということに関して答えを持っていない。どうしたら政党政治が変わり、議会政治、それから選挙というもののあり方が変わるのかが分からない。そもそも、当たり前のように「それが正しい」と思ってしまっているために答えがない。しかし、インドネシアというのはシステムを変えた国なのです。だから、私たちは、インドネシアのシステムを変えた変革の思想に、非常に学ぶことがあるのだと思います。

 だからといって、一から教えを乞うているわけではありません。彼らが民主主義への変革を行い17年が経ち、さらに民主主義を発展させ、新しいステージに変えるための課題がある。日本は、成熟した民主主義の国として、今のシステムというものを見直さないといけない。たぶん、両国同士が、同じように必要な関係なのだと思うのです。

田中:「日本にとっては」という言い方が適切かどうかは分かりませんが、他国のプロセスを見ながらも自分たちのあり方に気づきを見出す、というふうな状況ということでしょうか。

工藤:そうですね。日本にとって欠けているのは、「民主主義を発展させる」という強い意志なのです。この国にも、そうした意志を持っている人たちがいると思うのですが、それが日本の社会の大きな世論の潮流になっていないことが問題なのです。民主主義というのは、確かに様々な問題があると思います。しかし、今の仕組みの中で、人権を守り、そして大きな平等なり、多くの人たちの意見が反映させていくには、デモクラシーという仕組みしかない。

 そうであるなら、この仕組みというのは、絶えず見直して発展させるしかないのです。民主主義を見直す努力を怠ってしまうと、下りのエスカレーターを下から歩いているようなもので、どんどん落ちてしまうわけです。つまり、民主主義とは厄介な仕組みで、努力をしなければ崩壊してしまう、基盤が壊れてしまう。日本がそのような立ち位置にある状況の中で、システムを含めて大きな展開を考えなければいけないという立脚点に、日本はいま立つべきです。そして、その中で戦後70年という節目の年に、私は、新しいドラマが始まるのだと思っています。

田中:まさに、私たちが国際的な視点も活用しながら学んでいくということですね。


市民が主体となるデモクラシー、外交の実現に向けて

工藤:そうですね。ただ、一方で、インドネシアのハッサン元外務大臣とも話をしたのですが、私たち言論NPOはそれだけではないのです。つまり、市民が多くの願い、つまり平和という環境をつくるために当事者としてどのような展開をすればいいか。

 北東アジアは、日中韓が非常にナショナリスティックな世論の中で混乱している。その中で、「民間外交」を唱えている私たちのアプローチに、インドネシアは非常に関心を持ったのです。つまり、インドネシアという国も、まさにASEANの最大国家で、イスラム教の最大国家。そして、民主主義の大国としてインドネシアの将来を考えたときに、まさに市民が主体となるデモクラシーなり外交というものに、彼らは非常に共感した。

 私は、話をしていて、「話が合うな」と思いました。つまり、言論NPOがこれから「平和」というものを北東アジアで貫くために新しいチャレンジをすることを、彼らはレッスンだと感じている。やはり、良い対話のチャネルを開拓したな、と思います。

田中:今後、とても楽しみにしています。頑張ってください。

工藤:私たちの取組みはこれからスタートします。今回の対話は、成功したのではなくて
一つの基礎をつくり上げた。ぜひ皆さんには、私たちの取り組みに注目していただきたいと思っています。

投稿者 genron-npo : 23:11 | コメント (0)

2015年3月19日

北東アジアの平和構築とアジアの民主主義の強化のためのスタートに ~2日間にわたる対話にかける思いとは~

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 言論NPOの工藤です。3月20日(金)、21日(土)の2日間にわたって言論NPOは「戦後70年、東アジアの『平和』と『民主主義』を考える」と題した国際シンポジウムを開催します。



世界中で大きな試練を迎えている「平和」と「民主主義」

 今回、このテーマで議論したいと思った背景には、今、「平和」と「民主主義」が大きな試練に直面していると私たちが考えているからです。これは、日本だけに限ったことではなく、北東アジア、アジア全域、そして世界中で同じような現象が起こっています。

 まず、「平和」についてです。北東アジアでは3月21日に、日本・中国・韓国の外相会談が行われる予定ですが、現時点で、その会談によってこの3カ国の関係が大きく改善することは期待できない状況です。今年は戦後70年という節目の年ですが、日本と近隣国との間では非常に神経質な展開が始まっています。何よりも、北東アジア地域は、世界が懸念しているように平和で安定的な秩序すらつくれていないのが現状です。こうした問題を解決するための動きを、そろそろ私たちは始めなくてはいけないと考えています。

 次に「民主主義」の問題です。これは、日本の民主主義の行く末を懸念しているだけではありません。フランシス・フクヤマが言ったように、現在、デモクラシー自体が後退しています。特に、アジアの中でその動きが顕著に見られ、タイではクーデターによって軍事政権が樹立されるなど、アジアではこのままデモクラシーが根付いていかないのではいないか、という懸念が高まっています。
 こうした懸念は、アジアの他の国々だけではなく、日本でも同様です。私は、ポピュリズムやナショナリズムが高まる中で、政党政治が将来に向けた課題解決の力を失っているのではないか、という危機感を持っています。そうした傾向が世界の様々な国の中で、共通に見られているわけです。こうした状況に、戦後70年、私たちはどのように向かい合うべきなのか。それが私たちの問題意識なのです。


「平和」と「民主主義」を発展させるためには具体的なアクションが必要

 しかし、はっきりしていることもあります。それは、「平和」と「民主主義」は、黙っていても発展しないということです。「平和」や「民主主義」というものを何としてでも発展させていくという強い決意や思いが多くの市民の力となり、「平和」や「民主主義」を発展させる具体的な動きにならない限り、この2つの価値は発展するどころか、その基盤を壊しかねない危うい状況になってしまうのだと思います。だからこそ、私たちは、この「平和」と「民主主義」についての議論を始めたいのです。

 私たちは、この対話を始めるにあたり、有識者へのアンケートも行いました。このアンケート結果もホームページで公開していますが、その結果を見ていると、先程述べたような私の懸念を、多くの有識者が共有していることがわかります。

 例えば、「昨今、『アジアの民主主義の衰退』と言われているが、アジアの中で今後、デモクラシーはどのようになっていくか」と尋ねたところ、1割の人が「衰退していく」と回答し、3割を超す人が「どちらともいえない」と回答しており、民主主義の行く末に不安を感じていることが分かります。

 また、北東アジアの平和構築に向けて、政府間外交だけではなく、民間の力、私たちは「言論外交」ということを提案していますが、民間外交に期待する声が8割近くに上っています。さらに2年前、私たちは日中両国の民間レベルで「不戦の誓い」に合意しましたが、その「不戦の誓い」を北東アジア全域の1つのルールづくり、つまり、将来の平和環境づくりの1つの理念としてふわしいのではないか、という声が数多くいることもわかりました。


今回の対話が、今年1年かけて行う活動のスタートになる

 私たちはこうした有識者の声を背景に、3月20日、21日の2日間にわたって行われるこの対話に私たちの思いをぶつけて、そして必ず何かしらの方向性を見つけ出したいと思っています。そして、こうした動きを単なる議論だけで終わらせるのではなく、議論した結果を北東アジアの平和的な環境づくりや、デモクラシーの強化といった動きに具体的につなげていく。私たちはそのための様々な企画を、今年1年間を通じて行っていきたいと考えています。今回の5カ国の対話が、まさに私たちのそうした決意のスタートとなります。

 ぜひ、2日間にわたる対話にご参加いただきたいと思いますし、もしご参加いただけない場合でも、言論NPOのウェブサイトやインターネット(生中継を行います)などを通じて、私たちの取り組みをご覧いただければと思います。


国際シンポジウム「戦後70年 東アジアの『平和』と『民主主義』を考える」概要

【第1日】 「アジアの民主主義をどう発展させるのか -インドネシアとの対話」

◇日 時:3月20日(金)14時30分~17時30分
◇プログラム:
 第1セッション 「日本とインドネシア、二つの民主主義を再考する」
 第2セッション 「アジアの民主政治のための言論と民間の役割」
◇パネリスト:
【インドネシア】
 ハッサン・ウィラユダ(元外務大臣)
 クトゥト・プトラ・エラワン(平和民主主義研究所所長)
 ラヒマ・アブドゥラヒム(ハビビセンター所長)
 フィリップ・ベルモンテ(インドネシア国際戦略研究所 政治国際関係部長)
【日本】
 明石康(国際文化会館理事長、元国連事務次長)
 鹿取克章(前駐インドネシア特命全権大使)
 川村晃一(ジェトロ・アジア経済研究所 地域研究センター副主任研究員)
 見市建(岩手県立大学総合政策学部准教授)
 工藤泰志(言論NPO代表)

▼USTREAMにて緊急生中継を行います。放送は下記URLからご覧いただけます
 http://www.ustream.tv/channel/genron-npo-live


【第2日】 「北東アジアの平和は誰が構築できるのか―日米中韓尼、5カ国対話」

日 時:3月21日(土)13時30分~17時00分
◇プログラム:
 第1セッション 「戦後70年 北東アジアは平和へ動き出せるか」
 第2セッション 「言論外交はアジアの平和構築に寄与できるか」
◇パネリスト:
 韓国:柳 明桓(元外交通商部長官)
 中国:栄 鷹(中国大使館公使参事官、元中国国際問題研究所副所長)
 米国:ナンシー・スノー(米国社会科学評議会 安倍フェロー)
 インドネシア:ハッサン・ウィラユダ(元外務大臣)
 日本:田中均(日本総合研究所国際戦略研究所理事長、元外務省政務担当外務審議官)
    藤崎一郎(上智大学特別招聘教授、前駐米大使)
    宮本 雄二(宮本アジア研究所代表、元駐中国特命全権大使)
    工藤泰志(言論NPO代表)
  ※その他、日本側パネリスト調整中

▼USTREAMにて緊急生中継を行います。放送は下記URLからご覧いただけます
 http://www.ustream.tv/channel/genron-npo-live

投稿者 genron-npo : 16:32 | コメント (0)