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 【論文】世界的な金融資産膨張と信用収縮リスク

内田和人 (東京三菱銀行ニューヨーク調査室チーフエコノミスト)
うちだ・かずと

1985 年慶応義塾大学卒業、同年三菱銀行へ入行。三菱ダイヤモンド証券債券部課長、東京三菱証券チーフマーケットエコノミスト、資金証券部円債投資グループ主任調査役等を経て、2002 年現職。著書『米国経済の真実』(東京三菱銀行調査室共著)等、経済各紙、経済雑誌など寄稿論文多数。

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日本経済の今後を考える場合、アメリカ経済の動向を無視するわけにはいかない。アメリカ株のバブル崩壊はこの20 年間続いていたグローバル資本主義の終焉を意味すると、アメリカ在住のエコノミスト、内田和人氏は指摘する。その上で同氏は世界経済にとって最も恐いのはグローバリゼーションのもたらす大競争デフレよりも信用収縮に伴うデットデフレーションであり、この大調整が軟着陸するか、ハードランディングするかは米国経済・金融の帰趨にかかっていると語る。

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1980年代半ばの冷戦終結は、世界経済に2つの大きな構造変化をもたらした。1つはグローバリゼーションであり、もうひとつが金融資産の膨張である。グローバル化の進展は、生産拠点の発展途上国シフトが加速し、高コスト経済の先進国は内外価格差の是正圧力と国内投資需要の減退という一般物価・需給両面からのデフレ圧力を受けることになる。その結果、いわゆるデフレ循環に陥る。だが、これ自体は産業構造転換と水平分業化がうまく進めば、世界経済はいずれ持続的な成長過程に回帰することが可能である。問題は金融資産の膨張である。アメリカではこの20年間の間に3つの局面を経て金融資産残高の対名目GDP比率は約10倍となったが、米国株価バブルの崩壊はこの膨張を破綻させ、約20年近くも続いたグローバル資本が終焉させた。今、最も恐いのはグローバリゼーションがもたらす大競争デフレではなく、金融面の信用収縮に伴うデットデフレーションである。グローバル資本主義の行き詰まりは、国際マネーフローを縮小させ、90年代のグローバル資本主義の好循環を逆流させる。最も顕著な現象は、基軸通貨ドルの不安定化と新興国の資金フローのスクイーズであり、それが中南米で深刻な事態を引き起こしている。米国株式バブルの崩壊とともに欧州から米国への直接投資は急減し、金融資産の収縮はバランスシート調整圧力を強める。そうした中では、金融緩和や財政支出などのマクロ政策は信用乗数の低下や貯蓄率上昇という形で減殺されてしまう。日本経済と同様、米国でもその兆候が出始めている。このような局面で金融資産の急縮小をソフトランディングさせるには、過度な信用収縮が起きないように過剰流動性を供給し続け、次のインフレ循環を待つしか方策はない。ちなみに1930年の世界恐慌で米国経済・金融の崩壊を引き起こす要因となったのは、海外短期資金の引き揚げと預金引き出し(流通通貨の増大)であった。世界恐慌の教訓として米国からのキャピタルフライト(資本逃避)だけは絶対に引き起こしてはならない。資本逃避は米国経済の信認低下よりも、海外諸国の金融収縮の過程で生じやすい。現在、そのリスクは経済・金融の外科手術が始まろうとしている日本にある。


2003年01月04日 17:07

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