【インタビュー】デフレ脱出に向け先ず需給ギャップの縮小を

山口泰 (日本銀行副総裁)
やまぐち・ゆたか
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1940年生まれ。64年東京大学経済学部卒業。同年日本銀行入行。総務局企画課長、横浜支店長、電算情報局次長兼業務管理局、ニューヨーク駐在参事、調査統計局長、企画局長を歴任。96年日本銀行理事に就任。98年4月より現職。
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今日本で進行するデフレの原因とそれに対する対策は、政府側にそれが貨幣的な現象であり、金融政策での対応が可能との見方があるものの、日銀はデフレの原因は需給ギャップの拡大にあり、需要を強化して成長率を高め、それを縮小することとして認識が依然、微妙に食い違っている。政府が日銀と足並みを揃えて、デフレ対策と不良債権処理に踏み出そうとしているなかで、日銀の考えるデフレに対する見解は何か。日銀の山口泰副総裁に伺う。
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今現在、流通合理化や技術進歩の影響もあって、世界的に一般物価の下落傾向がみられるが、日本におけるデフレの最大の要因は、需要の弱さに起因する需給ギャップの拡大であるとみている。一方、通貨の供給不足が今日のデフレの主たる原因であるとは思っていない。実際、ここ1年ぐらいの間、最も狭義の通貨であるマネタリー・ベースは、顕著な伸びを示しているにもかかわらず、物価は格別反応していない。「デフレは貨幣的な現象だ」、「通貨の供給を増やせば状況が変わる」との主張の背後には、中央銀行がより広義の通貨であるマネー・サプライを自由自在にコントロールできるという前提が暗黙裏に存在している。しかし、実際には、所得が増えることなどによって、通貨への需要が増大しない限り、マネー・サプライは増加しないし、物価も上昇しない。また、一部論者が指摘しているような「通貨と物価の間に一定の関係がある」との主張も、実は、金利が低下し、経済活動が活発化すると、通貨に対する需要が増加し、その結果として、マネー・サプライの増大と物価の上昇とが同時に起こるということを意味している。現在のように、もはや金利の低下余地がない状況の下では、マネタリー・ベースという流動性だけ増やし続けても、所得の増加や通貨需要の増大は期待できず、経済活動の面でなかなか効果は出てこない。通常の手段を使い切ってしまった現状では、金融政策だけでプラスのインフレ率にもっていくのが困難であるということは、ここ1年半の量的緩和の経験でも示されている。
したがって、現在のマクロ経済運営の最優先課題は、需要を強化し、成長率を上げ、需給ギャップを縮小させることだと考えている。デフレの解消は、そうした政策の結果としてのみ実現するものである。仮に、デフレ阻止に向けて一層強力な対策が必要ということであれば、財政政策面でももっと知恵を出してもらう必要がある。思い切った歳出内容の見直しにより、需要強化を実現することができるだろうし、減税も排除すべきではないと思う。
現在の日本は、プラスの経済成長と比較的安定した物価下落の状況にあり、現時点でデフレ・スパイラルに陥っているとは考えられない。もちろん、今後、金融システムの動揺を伴うデフレ・スパイラルの危険性が出てきた場合には、日本銀行は全力を挙げてこれを阻止するつもりである。しかし、そうした事態に陥らないように、政府、日本銀行が力を合わせて、金融システムの安定性を取り戻すことが何よりも重要である。
そういう意味では、不良債権の処理加速はぜひとも必要なことだが、その際銀行サイドのみならず、それと対をなす産業、企業サイドの処理を並行して進める必要がある。また、不良債権の処理加速は、短期的には経済のデフレ圧力を強める可能性があるため、具体的な状況次第では、追加的に需要強化策を講じることも必要になってこよう。しかし、今、最も大事なことは、不良資産の残高が着実に減り始めたという実績を示すことであり、それが日本の銀行システムに対するパーセプションの改善にも繋がっていくものと考えている。
2003年01月04日 17:15
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