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【vol.3】 榊原英資インタビュー 『政治の介入を排除し規制緩和を徹底せよ』

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■■■■■言論NPOメールマガジン 
■■■■■Vol.3
■■■■■2002/09/25
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言論NPOは、日本の政策課題について本物の責任ある議論を、ウェブ、雑誌、フォー
ラム等で展開しています。人任せの議論では決して日本の将来は切り開けないからで
す。政策当事者や財界人らが繰り広げる、白熱の議論の一部を皆さんに公開します。
                      http://www.genron-npo.net

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●INDEX
■ 北城恪太郎×横山禎徳 対談『企業のガバナンスをどう構築するか 第3回』
■ 榊原英資インタビュー 『政治の介入を排除し規制緩和を徹底せよ 第3回』


─TOPIX─
■ 9月24日 構想日本・言論NPO「道路公団改革」に関するフォーラム報告
  財部誠一(経済ジャーナリスト)、益田安良(NPOエコノミスト会議幹事・東洋
  大学教授)、水野清氏(元建設大臣)、加藤秀樹(構想日本代表)
■ 9月17日「第1回アジア戦略会議」議事録を公開

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■ 北城恪太郎×横山禎徳 対談『企業のガバナンスをどう構築するか 第3回』
  北城恪太郎 (日本アイ・ビー・エム会長)
  横山禎徳 (元マッキンゼー・アンド・カンパニー・ディレクター)
                       司会 工藤泰志・言論NPO代表
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小泉政権の改革は一言でいうと、肥大化した官のシステムを壊し、民間の経済を立て
直すところにあります。ところが、株式市場を初めとしたマーケットはこの間、逆に
縮小し、民間経済の活性化は進んでいません。私たちはこの原因の一つは企業経営の
ガバナンスの問題にあると考え、この7月から議論を行ってきました。4月のみずほ
フィナンシャルのシステム障害も相次ぐ企業の不祥事もそこに論点があります。日本
アイ・ビー・エムの北城恪太郎会長とマッキンゼーの横山禎徳元代表はこの「みず
ほ」の問題を題材に具体的なガバナンス構築のあり方を提言します。


●企業に名経営者は要らない

工藤 今はまさにそういった仕組みをつくり直さなければならないときですが、では
   具体的に何をどのようにすべきでしょうか。

横山 私は、コーポレート・ガバナンスというのは、社会システムの中のサブ・サブ
   システムだと思うんです。社会システムの中の企業というサブシステムのガバ
   ナンスで、つまりサブ・サブシステムであって、これは非常に扱いにくい。

   アメリカの場合は社会システム全体がチェック・アンド・バランスの機能を
   もっていて、巨大な権限をだれかがもつということはない。大統領も、基本的
   には国民投票で決まるけれども、教書を出すわけです。あらゆる仕組みが、
   チェック・アンド・バランスになっている社会システムの上に乗っている。ア
   メリカの企業の取締役はだれが選ぶのかというと、投票で選ぶわけではなく
   て、経営層が選ぶこともあるのです。しかしそれを内輪でとか知り合い筋で
   やっていると、別の組織からチェックされ、名指しで批判される。そのように
   チェックがいろいろな形で働くために、企業はそれに応えようとして収まるべ
   きところで収まっているわけです。

   日本はどうかと言えば、そんなチェック・アンド・バランスの機能など社会シ
   ステム全体にありません。その中の企業のサブシステムのガバナンスというサ
   ブ・サブシステムだけ変えろといっても、無理ですね。従って、まず日本の社
   会システムを前提とした設計をしなければいけない。

北城 どんな優秀な人であっても、組織体であっても、チェック・アンド・バランス
   の機能がないと必ずおかしくなりますね。だれかにチェックされるという仕組
   みのない組織体というのは脆弱で、継続した成功は得られません。

   チェック・アンド・バランスはマスコミの役割として位置付けられる一面もあ
   ります。アメリカでも社外取締役に会長や社長の友人を入れているケースがあ
   るのですが、そういうときは「あそこの取締役会は馴れ合いだ」などとマスコ
   ミが言うのです。

横山 そうです。「A社はダメだ」とかリストが出ますね。

北城 アメリカには、NPOを含めてチェック・アンド・バランスの機能を果たす機
   関があり、取締役会をランキングしたりしている。それをマスコミが取り上げ
   ています。

横山 要するに、コーポレート・ガバナンスを言うとき、すべてはダイナミックなプ
   ロセスの中で考えられるべきなんです。どんな名経営者であっても、企業をめ
   ぐるさまざまな状況が刻々と変わっていってる中で、その変化に対応できな
   かったり慢心したりすれば、たちまちダメになるわけです。だから、どこかで
   だれかが必ずチェックしなければいけない。

   逆説的に言えば、企業に名経営者なんて要らないのです。むしろ無能な経営者
   のほうがいいかもしれない。自分で自分のことを「無能だ」と思っている、そ
   して周りからもそう思われているという経営者だったら、「危なっかしいから
   みんなで守り立てていこう」となるわけですから。それが有能な経営者の場合
   は、みんなが信頼してどこまでもついていくと、ある時点で急に危なくなると
   いう状況に見舞われたりする。名経営者はいつか必ず名経営者でなくなる時が
   来る。

北城 そうですね。例えば、どんな名経営者でも、長い間同じ人が企業のトップに
   座っていると、そこにすべての権力があるため、周囲がその経営トップにとっ
   て悪いニュースは入れないように動いてしまう。その結果、経営がおかしく
   なっていくケースもあります。そう考えるとこれはただ単に経営者本人だけの
   問題ではないですね。やはり組織体として企業のチェック・アンド・バランス
   の仕組みがないと、どこかでおかしくなる可能性があると思います。

横山 みずほの経営陣に情報が上がらなかったというのは、経営陣の無責任とチェッ
   ク・アンド・バランスの仕組みがなかったことをそのまま示していますね。こ
   んなことは今に始まったことではないのですが。

北城 ええ。悪いニュースは上に入れないですから。情報が上がらなかったからおか
   しい、というようなことはいくら議論しても意味がないでしょう。


●社外取締役をどう活用するか

工藤 先ほどの北城さんのお話のような、外部の人間を中心とした、経営者を評価す
   るための取締役会というシステムを、日本も考えたほうがいいのか。あるいは
   何か日本型のシステムを考えるべきなのか。そこはどのようにお考えですか?

北城 日本人は「日本型」「アメリカ型」といった議論がありますが、私はそのよう
   な型にこだわる必要はないと思います。最もいい仕組みを取り入れ、妥当だと
   思う仕組みにすれば良いのです。ただそれを一晩でつくっても無理ですから、
   漸進的に変えていけばよいでしょう。しかし、無理矢理「日本型のシステムを
   つくろう」とひとくくりに言う必要などないのではないか。

   具体的な仕組みとしては、社外取締役が過半数いるようなもののほうがチェッ
   ク・アンド・バランスの観点からして適切だと私は思います。

   しかし、どういう人をそこに選ぶかとか、取締役なり経営者なりがどういう考
   えで経営するかということについては、それぞれ企業の独自性があっていいと
   思いますね。短期に自社の株価だけ上げるような経営を考える経営者もいるか
   もしれませんが、そういう経営は長く続かないだろうし、どこかでおかしくな
   ると思うので、やはり継続して会社を成長させていくことができるような価値
   観をもった取締役、経営者が選ばれるでしょう。そこの価値観は日本人とアメ
   リカ人の違いがでるかもしれない、ということだと思いますね。

横山 私が「日本型」と言うときは、そもそもベースになっている社会システムが違
   うのだからアメリカなどと同じものはできませんよという意味に使いますね。
   先ほども言いましたが、社会システムにチェック・アンド・バランスの機能が
   ないところで、そのサブ・サブシステムを変えるわけですから、それは北城さ
   んもおっしゃっているように、とても一朝一夕にはできません。

   では、まず何をやらなければいけないか。これまでのように問題を内輪で処理
   したりすることがないようチェックする仕組みをつくらなければいけない。そ
   れには、やはり外部の人が入るほうがいい。経営者は、外部の人に対して説明
   しなければいけないとなれば、それなりに緊張する。外部がマジョリティーに
   なれば、もっと緊張するでしょうし、指名委員会のマジョリティーが外部にな
   ればすごく緊張するでしょう。そのような仕組みをつくるまでには相当な抵抗
   があるでしょうが、段階を踏んで作っていくということをまず描いておくべき
   です。

   次に、だれを社外取締役にするか。私が言うのはおかしいけれども、コンサル
   タントを社外取締役にするのはやめる。コンサルタントというのはよく知った
   かぶりをする商売なので、企業に何か説明をできるかもしれないけれども、そ
   の企業にとって本当に必要な、聞かれるべき質問はできないかもしれない。コ
   ンサルタントよりも、企業が「えっ」と思うような質問をする人がいい。銀行
   が「銀行とは何ぞや」と聞かれても困るでしょうが、もうちょっと具体論に落
   としたレベルで的確な質問ができる人です。たとえて言うと、中世ヨーロッパ
   の王室にいたフール(道化)みたいに、一見、馬鹿げた質問をして王様をはっ
   と我に返させるような人。イエスマンの家来ではない人です。

   しかし、その2つだけではダメです。その次のステップが大事で、それは何か
   というと、経営者に対する訓練プログラムをつくることです。例えば国際業
   務、技術開発、システム、コーポレートファイナンス、こうした内容をほとん
   どの経営者がわかっていない。それをわかってもらう訓練を経営者あるいは役
   員に受けてもらう。コーポレートファイナンスだったら、そこで戦略的なデシ
   ジョン・メーキング(意思決定)をするためには何を知っていればいいのか、
   どういうパラメータ(媒介変数)を押さえればいいのかを経営者が知る。訓練
   プログラムは社外取締役に対しても必要なことです。

北城 今のお話に付け加えるならば、社外取締役は多様な人がいたほうがいい。株主
   も多様にいるはずですし、利害関係者もたくさんいるわけだから、社外取締役
   が元経営者ばかり、というのではいけませんね。やはりいろいろな人 - 主婦が
   いてもいいし、マスコミの人もいてもいいし、あるいは元官僚や先生だってい
   いと思うんです。多様な人が違った角度からいろいろな意見を言えば、もし経
   営が偏向しても牽制できるでしょう。

   もう1つ、気をつけるとしたら、社外取締役がその会社からもらう給料は過大
   でないほうがいいということがあります。詳細までは知りませんが、エンロン
   では社外取締役が4000万~5000万円という高給をもらっていたそうです。普
   通、アメリカでは4万~7万ドル、日本では500万~800万円と言われていま
   すが、社外取締役になるような人はたいてい他に仕事をもっています。たとえ
   その会社に不利なことを発言して「やめてくれ」となっても、生活に別段困ら
   ないわけですが、しかし社外取締役の処遇を過大にしてしまうと、会社側の
   行っているおかしなことに反対をする意見が弱まるかもしれない。

   さらには、これは当然ですが、トップの後継者選びでは、その人の人格とか倫
   理観を十分チェックする必要があります。それは、どんな仕組みであっても、
   そこに立派な経営者は現れるし、逆にどんな立派な仕組みをつくっても、ダメ
   な経営者が出るかもしれないからです。同時に、取締役イコール会社の業務を
   執行する人だという思い込みはなくさなければなりません。商法は、取締役と
   いうのは会社の業務を執行するとともに相互に監視するのだと言っているので
   すが、この50年、取締役は経営をやる人だという意識になっている。経営者が
   「自分の会社の経営の中身をわからない人が取締役に来てもらっても困る」な
   どと言うのを耳にしますが、こういう発想は変えるべきかと思います。取締役
   は株主の意向を代表し、会社の経営執行幹部の方針が適切であるか監督、評価
   し、処遇をし、後継者を決める役割を担い、執行役員があるべき業務執行する
   という考えがあるべきだと思います。まずは、この違いがあったほうがいいの
   だということを議論しないと始まりません。


                           ──次号へつづく──


●上記の記事はウェブサイトにも掲載されております。
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■ 榊原英資インタビュー『政治の介入を排除し規制緩和を徹底せよ 第3回』
  榊原英資 (慶應義塾大学教授)
                       司会 工藤泰志・言論NPO代表
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日本の民間経営は本来、株主や顧客などのプレッシャーに晒され、それに応えようと
して経営を行います。97年に始まった「日本版ビックバン」はそうした市場規律を生
かした経営に転換するための市場改革でした。いわば、経営のガバナンスとビックバ
ンは表裏一体のものです。ところが、日本版ビックバンは昨年、その最終年度を過ぎ
たのにも関わらず、むしろ個人投資家は市場から離れ、大阪ではナスダックが撤退し
ました。金融庁の検討部会でも新しい金融市場の構築について議論が進められ、提言
も出始めましたが、いわばビックバンは成功していないのです。その原因はどこに
あったのか。当時、財務官としてその議論の中心にいた榊原英資・慶応義塾大学教授
が再評価しました。


●日本型のマネーフローを模索する

工藤 海外も厳しい状況です。日本がビッグバンのイメージ通り動いていれば、日本
   におカネが集まってくることも想定できたと思うんですけれど、こっちもへ
   たって全然集まらない。誤算はないですか。

榊原 カネが集まらないのは金融だけの問題ではありません。日本経済がだめだから
   ですね。不良債権処理をきちんとやって日本経済が良くなれば、日本の株式市
   場に金が集まります。今、カネが集まってこないのは、銀行が悪いからとか、
   マーケットができていないからとか、そういう話じゃないです。経済そのもの
   が弱いからです。日本が構造改革を完遂したら、カネは集まりますよ。昨年末
   から年始にかけて、小泉首相が本気で不良債権処理をやっていたら、今ごろ株
   価は上がっています。

工藤 ベンチャーキャピタリストの皆さんと話をしていますと、日本にはマーケット
   がないとおっしゃいます。つまり、投資家がいないというわけです。

榊原 ベンチャーキャピタルバブルがあった後、ベンチャーキャピタルそのものが下
   降期にあるんです。1年ほど前、欧米のベンチャーキャピタリストにじっくり
   話を聞いたのですが、欧米でもベンチャーキャピタルの3分の2は倒産していま
   す。ベンチャーキャピタルそのものが、ITバブルと一緒に出てきたバブルな
   んですね。

工藤 それはあります。

榊原 日本でベンチャーキャピタルが育つかといったら、なかなか育たない。あれは
   極めてアメリカ的な仕組みです。アメリカにはそういう投機家がいるわけで
   す。それに比べて、ヨーロッパではベンチャーキャピタルが育たない。日本で
   ベンチャーみたいなことをやっていたのは、たいてい地方中小金融機関でしょ
   う。その地方の情報を持っている金融機関が、懐の中で地元企業を育てていっ
   たわけでしょう。アメリカ型とは明らかに違う育て方をしている。でも、欧米
   型のベンチャーキャピタルが育たないから、日本はそういうものが育たないん
   だというのは違う。形は違えど、リスクマネーを出すところがないわけではな
   い。例えば商工中金もやっていたし、中小企業金融公庫なんかもやっていた。
   日本型のマネーフローのあり方を考えないといけない。今の文脈でいえば、地
   方金融の再編を促すことによって、そういうものをもう1回蘇生するのも1つの
   やり方なんです。


●金融業への新規参入は終わったわけではない

工藤 話をビッグバンに戻したいのですが、やはり当初は間接金融から直接金融へと
   いうイメージを描いていたんでしょう。

榊原 いや、僕は少なくとも描いていないですよ。

工藤 そうですか。

榊原 少なくとも、銀行がなくなるとは思っていないし、地方金融機関がなくなると
   も思っていない。オーバーバンキングだという感覚はありましたが。アメリカ
   型システムをつくろうと思ってビッグバンをやったわけではないわけですよ。
   相当の意味で市場を生かしていかなければいけないというのには賛成です。自
   由化する中で、日本がアメリカ的になる部分もあるだろうし、そうでない部分
   もあるだろう、それは一種の試行錯誤のプロセスの中で新しいシステムができ
   ていくんだというのが僕の考え方です。

工藤 ビッグバンというのは榊原さんにとって何であって、その試行錯誤の結果、今
   どういうことを考えているんですか。

榊原 護送船団行政というか、規制を徹底的に緩和することです。また、それによっ
   て裁量行政を捨てることです。

工藤 5年計画というイメージは、緊張感を保つためですか。

榊原 規制の緩和は5年で終わるということです。その後、また5年、10年とたっ
   て、新しい日本の金融システムができていくという話ではないですか。

工藤 繰り返しになりますが、間接金融のイメージに誤算があったということはない
   ですか。

榊原 もうちょっと日本の銀行がきちっとやると思っていましたね。証券業界も、経
   営が大きく変わっていくと思ったけれども、まだ変わっていない。

工藤 日本の金融業はどうなっていくと見ているんですか。

榊原 少なくとも製造業と同じくらいグローバルにならなければいけない。外国へ
   行っていつも思うのは、一番最初に外国に入ってローカライズしているのは製
   造業ですよ。商社がその次ぐらいで、銀行が一番ダメ。例えば、銀行の海外支
   店長は3、4年で変わってしまう。製造業ではそんなことは考えられない。みん
   な10~20年は動かない。商社だって、少なくとも5~10年はいます。極めて
   ドメスティックなんですね。

工藤 確かに、顧客から見れば国籍はどうでもいいわけです。サービスが充実してい
   ればいい。

榊原 そう。外国企業のサービスだけがいいというわけではないけれども、シティバ
   ンクなんかは相当のサービスを提供している。日本の銀行もそれにキャッチ
   アップをしようとしている。

工藤 グローバル化だけでなく、他産業からの参入という手もありますね。

榊原 ソニーとイトーヨーカ堂が参入したけれども、商社が金融をもっとやったらい
   いと僕は思うんです。各社とも相当の金融部門を持っているわけですから。

工藤 確かに、ビッグバンが始まってかなり変わりましたね。

榊原 実際、いろいろな商社がどこかで銀行をやろうと思っています。あとは、銀行
   として預金業務をやるかどうかの問題であって、インベストバンキングはもう
   やっています。

工藤 郵貯の問題は、当時ビッグバンをやるときはどういうご認識でしたか。

榊原 あれは定見がなかったね。僕は郵貯を民営化して、郵貯を外資と組ませたら面
   白いと思います。第二のシティバンクですよね。

工藤 そのくらいのプレッシャーがないと、日本の金融業界はなかなか変わらないか
   なという気がします。

榊原 正直言って、水面下で変わってはきていると思います。おそらくそのうち、ト
   ヨタは銀行をつくる可能性があるわけです。すでに証券会社を持っています
   し、なんといっても不良債権を持っていない。ビッグバンによって、例えば、
   トヨタがきちんと条件を整えて金融庁に申請すれば、免許は取れますよ。トヨ
   タ銀行ができても何の不思議もないです。製造業で先進的な企業が金融業に参
   入するという事態は現実に起こっている。


●金融業の青写真

工藤 現状を受けて、金融庁が金融業のビジョンの検討会を始めています。

榊原 政府が個別の産業のビジョンを描く時代ではないと思う。自動車業界はどうあ
   るべきだとか、金融業界はどうあるべきだというのはマーケットが決めるもの
   です。もちろん、政治は政治、行政は行政で、ある種のビジョンはなければい
   けない。それは産業政策とは違うものです。私見を言うならば、もう金融業は
   どうしようもないんだから、マネジメントは2つ。1つは、非金融業から新規参
   入を受け入れ、完全に地図を塗りかえるということ。もう1つは、外国との提
   携です。後者の方が日本の金融業の将来にとって面白いと思います。

工藤 公正なルールの下で、投資家や消費者がリスクをとるという意識改革が必要だ
   と思うんです。そういう意味で、日本はまだまだ業界ベースでの議論に留まっ
   ているのではないかと。

榊原 そうですかね。僕は証券会社に講演を頼まれてたまに行くんですけれども、証
   券会社は個人を集めて、「リスクをとれ、リスクをとれ」という。僕は違うと
   思う。プロフェッショナルを信用してくださいという言い方がいいと思うんで
   す。でも、本当の意味でのアセットマネジャーが日本では育っていないし、育
   てようとしていないからそれは難しい。日本にはプライベートバンキングがあ
   まりないでしょう。つまり金持ち相手のバンキングなんだけれども、そういう
   カネを持っている人の運用を任せられて運用するという商売がない。欧米で
   は、プライベートバンキングからプロのマネジャーが育っていくわけですよ。
   大金を持っていない人はファンドにカネを入れ、それをプロのマネジャーに任
   せる。そういうカルチャーが育たなければいけない。ところが、日本は相変わ
   らず株屋のカルチャーなんです。個人を集めては、株買え、株買えと言ってい
   るだけ。日本では、ある種のファンドのようなものが、銀行や証券会社とはイ
   ンディペンデントに育っていくんじゃないか。プロジェクトファイナンスの分
   野なら、非金融機関が育っていくとか。そういう方向に展開するんではないか
   な。そういう生き方に目覚めた金融機関のどこかが残っていく。メジャーな金
   融機関は10年、20年先は生き残っていないかもしれない。それは、外国にや
   られるということだけではなく、国内の非金融機関にやられることを含めて。


                           ──次号へつづく──


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─TOPIX─

■ 9月24日 構想日本・言論NPO「道路公団改革」に関するフォーラム報告
  財部誠一(経済ジャーナリスト)、益田安良(NPOエコノミスト会議幹事・東洋
  大学教授)、水野清氏(元建設大臣)、加藤秀樹(構想日本代表)

言論NPOとして道路公団改革に対して「民営化の原点に戻れ」という見解を発表して
います。

http://www.genron-npo.net/

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■ 9月17日 「第1回アジア戦略会議」議事録を公開

来春の政策提言に向けて、いよいよ9月から月2回のペースで具体的な議論がスタート

会議のメンバーに加えゲストスピーカーを招いての専門的視点に立った議論を展開
し、政策提言につながる論議を深めていきます。第1回の会議では、今後の議論の方
向性について様々な視点から意見が出されました。その内容を議事録の形で公開して
おります。ぜひご覧ください。

http://www.genron-npo.net/jp/summary/frameset/020917_c_01.html

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