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【号外】 道路公団「最終答申」に対する見解

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■■■■■言論NPOメールマガジン
■■■■■号外
■■■■■2002/12/11
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●INDEX
■ 道路公団「最終答申」に対する見解
      『「民営化」にはほど遠い道路公団改革』

■ 座談会 『民営化論議が中途半端になったのはなぜか』
          川島隆明、益田安良、安嶋明


■ 座談会 『道路公団改革を日本の将来設計の中で組み直す』
          長谷川徳之輔、林良嗣、松谷明彦、横山禎徳


■ 知事座談会 『地方の自立を阻害するグランドデザインなき道路改革』
          増田・岩手県知事、北川・三重県知事、木村・和歌山県知事
          片山・鳥取県知事、林・名古屋大学大学院教授

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言論NPOでは、9月、民営化推進委員会の中間整理に対して、「道路公団改革は、民
営化の原点へ戻れ」という見解を発表しました。その後、公団の民営化問題、日本の
将来像をふまえた高速道路建設のあり方、高度成長を前提とした道路建設のギアチェ
ンジの問題など、議論を重ねてきましたが、12月6日に出された民営化推進委員会の
最終答申を受けて、この間の議論と言論NPOとしての見解を公表します。


■ 道路公団「最終答申」に対する見解(全文掲載)

               特定非営利活動法人 言論NPO 代表・工藤泰志
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●「民営化」にはほど遠い道路公団改革

12月にまとまった道路公団の民営化推進委員会の最終答申は、新規建設に歯止めをか
けるなど、評価すべき点はあるが、「民営化」という視点からは大きくかけ離れる内
容となった。最後まで委員会が混乱したのは、委員の「民営化」に対すると認識が希
薄なまま、高速道路の新規建設も視野に入れた議論が進められていたという背景があ
る。それは最後に多数決という形で軌道修正されたが、「民営化」において、非効率
な従来型の高速道路建設を止め、今後の道路建設を別の視点から組み直すという点で
は、答申は道路公団の組織改革の域を出ておらず、明らかに中途半端なものである。

もともとこの推進委員会は、当初から限界の見えるものであった。小泉首相は「民営
化」をツールに既得権益を打破しようという政治手法を、これまでも何度か使ってい
る。反対派を刺激するそうした手法は、「観劇」としては興味深いが、本当に「民営
化」で結論を導き出すためには、それ以前に政治としての決断や指示が必要なのであ
る。高速道路の新規建設の是非、過去の過剰債務は誰が負担するのか、そして日本の
将来を見据えた高速道路のあり方への判断である。それを行なわずして、委員会に
「民営化」議論を丸投げするのは、政治の無責任としか言いようがない。ここには、
「民営化」が全ての解を生み出すものとの明らかな誤解がある。通行料金のキャッ
シュフローでは、40兆円を超し、50年近くも返せないほどの過剰な債務を抱えた会
社が、新規建設もできて、しかも上場もできるというのは、明らかに幻想である。も
し本当に公団を「民営化」し、民間会社が担うのであれば、市場で自立できる返済可
能な債務額まで過剰債務を国民負担でカットし、しかも民間会社が政治のしがらみを
断ち切って、事業自体が独立の判断で経営できるようにスキームを整えなくてはなら
ない。

ところが、今回の最終報告ではこれとは逆に(1)国民の負担を最小限にし、50年を上
限に早期の債務返済を実施する(2)高速道路資産を保有し、債務を返済する機構とそれ
をリースして高速道路を管理、建設する5分割の民間会社に上下分離する、が結論と
して出されている。こうした内容では市場で自立できる本当の「民営化」はほど遠
い。債務の返済に50年もかかる企業は市場では生き残れないし、資産保有会社には国
の影響力が大きい。その資産のリースを受け、通行料金からリース料を払い続ける民
間会社は、道路を借りて通行料を取り立てる会社に過ぎず、ただキャッシュフローを
右から左に流すだけで、そこで効率を上げてより大きなキャッシュフローを上げると
いう経営のインセンティブは、全く働かない。

こうした結論に至ったのは、推進委が本来、政治が決断すべき課題を全て背負ってし
まったことが大きい。議論の最中に当時の委員長は「それでは政治が受け入れがた
い」と何度も弁明し、着地を道路族も納得できる形にしようとの思惑が、他の委員の
間にも見え隠れしていた。それでは「民営化」推進委員会の意義はどこにあるのかわ
からない。なんとか最後に多数決で可決できたのは、民営会社の新規建設に対する歯
止めと、十年後には上下一体にするという方針だけだった。
10月には日本道路公団自体も債務超過にあるという試算が事務局から公開されたが、
ある意味ではそれが議論を戻す最後のチャンスであった。推進委はここで本当の「民
営化」スキームに特化し、決断を政治に問うべきだった。本来、黒字とされた日本道
路公団も仮に債務超過だとすれば、これまでの議論を覆す大問題だからだ。だが、ど
ういうわけかその試算は真剣に検討されることなく、委員会の中で握りつぶされ、新
規建設の歯止め論だけで議論の紛糾が続くことになった。

われわれは9月に第一次見解を公表(詳細は言論NPOのウェブ参照)し、以下の3つの
視点を提起した。私たちは、80年代に既に高速道路はシビルミニマムを達成し、それ
以後は経済合理性を優先しなくてはならなかったと考えている。つまり、プール制や
長期償還で高速道路建設はできないという判断、高速道路建設はギアチェンジを問わ
れているとの視点である。この点について道路公団自体は「民営化」し、過去の債務
については国民負担から逃げるべきではないと考えた。現在の負担を避けることは将
来世代に負担を先送りすることである。現在も解消できない負担を将来世代が負担で
きると考えるのは、あまりにも無責任だろう。さらに、今後の高速道路の建設にあっ
ては、人口の減少や経済の停滞など、日本の将来像を前提にした日本のシステム設計
の中で考え、その実現については税金の投入を前提に、納税者がこうした道路建設を
判断できる地方分権の具体化の中で答えを探るべきと考えた。

右肩上がりの高度成長経済の中で行ってきた道路建設を、これまでのように進めるこ
とは、道路建設の優先順位をトップに位置付けることを意味する。国の財政が破たん
寸前の中で財源はさらに限られる。少子高齢化が進み、福祉や介護、環境への政策需
要が高まる中で、そうした要望を一般の納税者は持ち続けるだろうか。政治家は、そ
のことを国民に問わなくてはならないと考えた。

その上で、道路公団の「民営化」の議論に戻れば「民営化」である以上、企業の経営
原則を貫かねばならない。民間会社に大切なのはバランスシートの再構築であり、各
資産とそれが生み出すキャッシュフローを見直し、清算すべき道路は清算する自由を
持たなくてはならない。企業の判断でアセットサイドを見直し、コストも削減し、バ
ランスシートを再構築することでキャッシュフローの最大化が図れるからである。そ
の点でいえば、推進委員会の仕事は公団の資産の査定をし、上下一体の民営会社とし
て公団が生き残れる道を探ることであった。その際に切り捨てられる道路について
は、政治がその責任において、税金を投入して負担あるいは建設を決断する方が筋が
通っている。

最終答申は、その意味で明らかに中途半端である。だが決まった以上、初期の目的は
なんとしても実現させなくてはならない。公団を民営化するということは、市場の規
律から経済合理性のない計画を取りやめ、過去の膨れ上がった負債処理とこれからの
膨張を食い止めることだった。舞台は今後、政治に引き継がれるが、少なくとも政治
には道路建設だけを主張するような過去の過ちを再び繰り返すのではなく、日本の新
しいシステム設計の立場に立った高速道路建設のギアチェンジを果たすように求めた
い。


●上記の記事はウェブサイトにも掲載されております。
http://www.genron-npo.net/jp/summary/frameset/021209_o_01.html

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■ 座談会 『民営化論議が中途半端になったのはなぜか』
        川島隆明((株)MKSパートナーズ代表取締役)
        益田安良(東洋大学経済学部教授)
        安嶋明(日本みらいキャピタル(株)代表取締役社長)

道路関係4公団民営化推進委員会は、終盤に来て委員長が辞任するほどに激しく紛糾
した末、12月6日に小泉首相に最終答申を提出しました。なぜ、委員会内部において
これほど意見が対立したのか、また、民営化の議論が中途半端になったのはなぜなの
か。小泉首相の責任も含めて、民営化推進委員会での議論の問題点について、2人の
企業再建の専門家(ファンドマネージャー)と大学教授が検証しました。


http://www.genron-npo.net/jp/summary/frameset/021209_c_01.html


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■ 座談会 『道路公団改革を日本の将来設計の中で組み直す』
       長谷川徳之輔(明海大学教授)、林良嗣(名古屋大学大学院教授)
       松谷明彦(政策研究大学院大学教授)
       横山禎徳(元マッキンゼー・アンド・カンパニー・ディレクター)
 
「高速道路建設は、80年代にシビルミニマムを達成しており、高度成長時の計画のギ
アチェンジ、過去の膨大な債務の処理が必要である」。日本の将来像をふまえたシス
テム設計の変更が問われる中で、道路公団改革はどのように進めるべきなのか。3人
の大学教授と元コンサルタントが議論を交わしました。


http://www.genron-npo.net/jp/summary/frameset/021209_c_02.html


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■ 知事座談会 『地方の自立を阻害するグランドデザインなき道路改革』
       増田寛也(岩手県知事)、北川正恭(三重県知事)
       木村良樹(和歌山県知事)、片山善博(鳥取県知事)
       林良嗣(名古屋大学大学院教授)    

小泉首相が発足させた道路関係4公団民営化推進委員会の議論は、最終報告に向け白
熱しているかに見える。しかしその議論は、道路公団の組織改革や高速道路の採算
性、進捗率など経済的な側面しかみていないため、焦点のズレを感じずにはいられな
い。4知事と林教授を迎えて、将来設計を踏まえた大きな視点と、今後の改革のあり
方を議論していただきました。


http://www.genron-npo.net/jp/summary/frameset/021209_c_03.html

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