【vol.14】 北川正恭 論文『「民」主役の民主主義の創造とNPOの意義 第2回』

2003年1月28日

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■■■■■言論NPOメールマガジン
■■■■■Vol.14
■■■■■2003/01/28
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●INDEX
■ 北川正恭  論文『「民」主役の民主主義の創造とNPOの意義 第2回』


●TOPIX
2003/1/16 「言論NPO」ウェブサイトが完全リニューアル・オープン!

2003/1/22 プレスリリース:
    「日本のデフレとミクロの挑戦」(The R)
    「この不況下に言論が凍てついているのはなぜか?」(れぢおん青森)

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■ 論文『「民」主役の民主主義の創造とNPOの意義 第2回』
  北川正恭 (三重県知事)

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言論NPOでは今年、「挑戦」をテーマに様々な議論を行なおうと思っています。挑戦
の形はいろいろあると思います。自立して企業を起こす人、あるいは社会に積極的に
関わるために、NPOやボランティアに参加する人もいるでしょう。今回は、三重県知
事の北川正恭知事に発言していただきます。北川知事は今春の知事選挙には出馬しな
いことを決めており、その動向が注目されています。


■「民」主役の民主主義の創造とNPOの意義

●自立した個人、地球市民が民主主義のグローバルスタンダード

阪神・淡路大震災やナホトカ号事件などによって、日本でもNPO活動が一気に活発に
なってきたように見られています。しかし、実はあれは、すでに十分マグマが溜まっ
ていたものが、ああいった事象が起きたのをきっかけに一気に盛りあがったのであっ
て、その背景には、いわゆるインターネットの世界において情報が自由に飛び交うた
めのインフラ整備が、ソフト・ハード両面でできていたことがあります。すなわち、
情報が公開されて初めて存在し得るのが、自立した個人のボランティア、その団体、
そしてNPOであると、私は思っています。今後、そうした自立した地球市民がいかに
多く生まれてくるかということが、世界のデモクラシーのスタンダードになっていく
のではないでしょうか。

現在はまだ過渡期ですから、「官」の側もいろいろと関わってきて、「税の優遇がど
うだ」とかいうようなことを言います。これは、仕方がないことなのですが、やがて
は、「官」の関与はなくなり、自立した市民の側でやってもらう、ということです。
これがすなわち「自治」=「自ら治める」ということになるのです。そうした自立し
た市民の発言・行動には当然自己責任が伴います。したがって、「要求型の民主主
義」や「お任せ民主主義」は、姿が消えていって、ポピュリズムや衆愚政治がなく
なってくるということに皆が気付き始めることになります。その時には、今は700兆
円の債務といわれていますが、当然、分権で身の丈に合った、負担に応じたサービス
が提供されるようになりますから、借金してまでということはなくなってきます。つ
まり、受益と負担の関係というものがはっきりしてくるので、住民の関心・意識が高ま
り、民主主義はどんどん進化していくと思います。

それが生まれて育っていく過程の中ですから、今、NPOはどうしても行政から事業を
委託されることも多い段階ですが、将来、すべてが本来のNPOの発想で成り立つよう
になれば、地域の抱える問題は、そこでほとんど解決されると思います。ですから、
行政はそれをどうやってサポートするかということでやっていけば、適正な政府が生
まれてくるはずなのです。


●情報提供から、情報共有、情報共鳴へ

こうした考えに基づいて、官があまり出すぎるのもいかがなものかとは思いました
が、とにかく、三重県では「官がやれることは一度やってみよう」「官のほうから変
わろう」と、今日まで努力してきたわけです。そこで、まず変わらなければならない
のは何かというと、積極的な情報公開なのです。「言われたから仕方がなく情報公開
する」というのは、全くマイナーな発想であって、政策を決定していく過程、予算編
成過程まで積極的にお見せするということまでやる「情報提供」が正しいと思いま
す。そして、三重県ではもう一歩さらに進めて、住民との「情報共有」、共鳴が活動
の連鎖を呼ぶ「情報共鳴」というところまで行きたいと思い、努力をしているところ
です。

こうした情報提供、情報共有、情報共鳴によって、住民にすべてを預け、住民の側は
自己責任の意識をもつ。そういう雰囲気の方が勝る社会になった時に、本当の民主主
義が機能し始めるということだと思います。それを信じて頑張っていくことが、今と
ても重要ではないのでしょうか。民主主義というのは、「民」の自覚によってレベル
が決まるのです。つまり、ある町の民主主義のレベルは、町長さんや役場のレベルで
決まるのではなく、町民が決めることです。町長さんを選ぶのは町民だからです。そ
のことを明言したうえで、情報公開をして、住民の皆さんに立ち上がっていただく。
その時に、実は「自己決定は出来ますが自己責任も伴います」ということです。それ
が明確に意識されるようになったときに、日本は一気に世界に冠たる先進国家の地位
まで行きつけると私は思っています。


●言論NPOに期待するもの

そこで、私が言論NPOに期待しているのは、コマーシャリズムに乗るとか、一方的な
イデオロギーにもとづく主張があるとかではなく、まさに「市民自らが参画をする」
というところなのです。インターネットの世界には、自由にインタラクティブ、リア
ルタイムに情報交換ができるという環境がありますから、そこに参画を促すとなれ
ば、場合によっては尖った意見もあるでしょうが、「言論が自由でなければいけな
い」、「自由な批判がされなければいけない」、あるいは、「自由な発言が担保され
なければいけない」ということになります。そして、「コマーシャリズムに左右され
ない」、あるいは「特定のイデオロギーに左右されない」という自由でフラットな実
験の場において、言論NPOが大きく育つということこそが、日本の民主主義を育てる
大きな要素になると、私は強く期待しているところなのです。言論の自由のない所に
民主主義はないと思っていますから、日本の民主主義を達成する一つの段階として、
皆さんが参加し、自ら率先して実行することによって、皆さんのお力でこの言論NPO
を盛り上げていただければ、これは本当にいいことだと思っています。


●上記の記事はウェブサイトにも掲載されております。
https://www.genron-npo.net/debate/contents/021227_a_01.html

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●TOPIX
2003/1/16 「言論NPO」ウェブサイトが完全リニューアル・オープン!

みなさまのご意見を反映し、機能・内容ともに、大幅に拡充しての公開です。
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2003/1/22 プレスリリース:
    「日本のデフレとミクロの挑戦」(The R)
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