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【vol.107】 座談会『日中のコミュニケーションギャップをどう乗り越えるか(1)』

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■■■■■言論NPOメールマガジン
■■■■■Vol.107
■■■■■2004/11/16
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●INDEX

■ 座談会『日中のコミュニケーションギャップをどう乗り越えるか 第1回』


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■ 座談会『日中のコミュニケーションギャップをどう乗り越えるか 第1回』
  張仲梁 (新生代市場監測機構CEO)、霍虹 (新生代市場監測機構副長経理)
  五十川倫義 (朝日新聞社論説委員)、山田賢一 (NHK放送文化研究所主任研究員)
  古畑康雄 (共同通信社メディア局編集部記者)
           司会:工藤泰志 (言論NPO代表)、牧野義司 (言論NPO理事)
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工藤 私たちはこれまで日本やアジアの将来構想を考えるための議論を様々な形で
   行ってきました。その際に特に懸念したのが日本と中国の両間に相当の認識、
   あるいはコミュニケーションギャップがあるのではないかという点です。今年
   夏のアジアサッカーの際に見られた一部の中国での騒動だけでなく、様々な相
   互不信や誤解が両国の間に根深くあるように思えます。その背後にはマスメ
   ディアの報道の問題もあります。そういった問題があるとすれば、そのギャッ
   プを埋めるため、解決するためのきっかけをつかめないだろうか。それが今回
   の座談会の意義です。本日は、中国から中国メディアの調査などを行っている
   張さん、霍さんをお呼びしておりますので、日中問題での現在のコミニュニ
   ケーション、あるいは認識ギャップがどんなところにあるのかから議論を行っ
   ていきたいと思います。では、張さん、よろしくお願いします。


●日中のコミュニケーションギャップをどう見るか

張  まずは言論NPOの工藤先生に感謝申し上げます。北京で先日工藤先生とも会談
   し中日間の問題について話し合ったのですが、その結果、コンセンサスができ
   たと思います。そして、特に工藤先生の中日関係に対するご心配というものに
   対しては敬意を表したいと思います。

   私は92年から93年にかけまして、科学技術庁の科学技術政策研究所で特別研
   究員をしていました。中国に帰りましてからは主に2つの仕事をしておりま
   す。1つは政府関係で、言うなれば政策の方の情報コンサルティングに関し
   て、さまざまなアイディアを提供するということをしております。もう1つは
   消費研究をしておりまして、この仕事というのは、中国の消費者、あるいは中
   国の一般大衆の価値観を調べている所であります。

   今回はメディア考察団を組織しまして、電通の関係で日本に参ったわけでござ
   います。工藤先生が今回の考察団、特に新聞社のトップの1~2人の方々と意見
   を交換したいというご希望をお持ちでしたが、スケジュールが既に決められて
   いましたので、直前にアレンジするのがなかなか難しかったわけです。

   中日間のいろいろな問題につきまして、私の見るところでは、以下に述べるよ
   うな3つの原因があると思っております。

   1つの原因は、「群盲、象をなでる」ということが言えると思います。つま
   り、中国を見る際に、人によってそれぞれ違った見方が出てくるということが
   あると思います。ただ、私が驚いておりますのは、それが非常に大きなコント
   ラストを生み出しているということであります。92年に日本におりましたが、
   私の出身校は天津の南開大学であります。南開大学は中国の総理を2人生み出
   した学校であります。周恩来総理、それから今の温家宝総理であります。南開
   大学は立教大学と良い関係を持っております。したがいまして、当時、東京に
   は南開大学からの学生がかなりおりました。立教にいる南開の人たちが、とき
   どきグループで集まるわけです。そういうときに招かれて参加したわけでござ
   います。私は当時、まだ日本に来てそんなに時間が経っていませんでした。

   一方、立教に来ている南開の人たちは、既に日本に来て相当な時間がたってい
   るわけです。そうしますと、例えば日本に対する印象という点でも、まだ日本
   に来て間もない私は、非常に好感を持っていたわけです。日本の民衆は中国人
   に対して友好的であるという見方を持っていました。しかし、既に日本に長期
   間滞在している南開大学からの留学生たちは見方が別だったわけであります。
   そういう見方に違いが生じた結果、次のミーティングから私は呼ばれなくなり
   ました。

   私がおりました研究所というのは、大体博士課程の人が多いわけであります。
   博士課程の人たちは、一方で研究しながら、一方で学費稼ぎのアルバイトをす
   るわけです。そうしますと、そのアルバイトの場で接触する日本人というの
   は、言うなればインテリというレベルではなく、どちらかというと低いレベル
   の人たちということになるわけです。国に帰りましてから研究所の方をやるよ
   うになりましたが、研究所が日本との間にある程度の往来があったわけであり
   ます。そうなりますと、全く同じように感じたのがコントラストの大きさとい
   うことです。これについて、もっと御説明したいのは、日本に対する印象と感
   想が日本との付き合いによって違うということです。

   2点目の原因として思いますのは、今申し上げたコントラストでございます
   が、今後のコントラストの描写、どのようにそのコントラストを描写するか、
   あるいはそれが人に与える印象、これが事実、現実と違っているということが
   あると思います。

   今、私が手にしていますのは1枚の白紙(真ん中に小さな黒点があるA4版の紙)
   ですけれども、この白紙をごらんになったときに皆様は何を感じるでしょう。
   人によっては、この白紙にポチッとある黒点を見る人もいるでしょう。中日関
   係というのは非常にいろいろな要素を含んでいるわけであります。その中の大
   部分は健全な発展をしているわけであります。例えば経済交流であるとか、文
   化交流であるとか、あるいは人事往来にしても、最近では多くの中国人が日本
   を訪問するようになっていますし、また、日本の方が観光団などでたくさん中
   国を訪問されております。大部分はそういう健全な発展をしている。つまり、
   この紙の白紙の部分ですね。

   しかし、今の白紙をごらんになったときに、多くの方が真ん中のポチッとある
   黒点にのみ着目される。そして、その黒点にのみ着目されて、周りの非常に多
   くの面積を占めている白い部分、つまり健全な発展をしている部分になかなか
   着目されないということが1つあります。特に民衆の認識ということになりま
   すと、これはメディアの役割が大きくなってまいります。特にメディアの伝え
   方ですね。つまり、メディアがいろいろなものを伝えるときに、しばしばマイ
   ナスイメージのものを報道したがる。一方で、プラスイメージのものは報道し
   たがらない、良いものはあまり報道したがらないという部分があるわけです。

   多くの人は―特に中国人ですが―中日関係に関心を持っております。そして、
   日本に対して好意的な感情も持っております。ただ、こういう多くの人たち
   は、しばしばあまり物を言いません。ひんぱんに物を言うのはどういう人間か
   というと、日本に対してあまりよくない感情を持っている人間、マイナスイ
   メージを抱いている人間、こういう連中が毎日いろいろなことを言うわけで
   す。結果、どういう状況になるかといいますと、言うなれば少数の声が多数の
   沈黙の声を圧倒してしまうという現象になります。言い換えれば、今「中日友
   好」ということを反対する言論が多いにもかかわらず、こう言うような言論は
   主流ではないです。

   ですから、工藤先生もおっしゃったように、中日間の関係を語るときに、民
   間、特にメディアの役割が非常に重要であるという点は私も同意であります。
   非常に重要な認識だと思います。ですから、言うなれば、ブローアップされた
   効果というものに注目したいと思っているわけです。

                          ──次号へつづく──

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