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【vol.112】 座談会『日中のコミュニケーションギャップをどう乗り越えるか(6)』

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■■■■■言論NPOメールマガジン
■■■■■Vol.112
■■■■■2004/12/21
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●INDEX
■ 座談会『日中のコミュニケーションギャップをどう乗り越えるか 最終回』

●TOPICS
■ 12/15 「言論NPO設立3周年記念パーティー」報告
■ 12/17 「第6回アジア戦略会議」報告
■ 12/17 「第5回アジア戦略会議」報告


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■ 座談会『日中のコミュニケーションギャップをどう乗り越えるか 最終回』
  張仲梁 (新生代市場監測機構CEO)、霍虹 (新生代市場監測機構副長経理)
  五十川倫義 (朝日新聞社論説委員)、山田賢一 (NHK放送文化研究所主任研究員)
  古畑康雄 (共同通信社メディア局編集部記者)
           司会:工藤泰志 (言論NPO代表)、牧野義司 (言論NPO理事)
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●中国メディアと政府のコントロール

張  それから2点目ですが、これは私の理解ですけれども、中国の政府というのは
   あまり宣伝が上手でない、別の言い方で言えば、メディアを利用することにあ
   まり長けていない政府だと思っています。政府としては、問題を大きくしない
   ために報道をコントロールしようとしたわけですが、結果として民間の人た
   ち、つまり読者の人たちが、逆に問題の本質が見えないことになってしまっ
   て、2人の日本人学生が悪いのだということになってしまったわけです。この
   点に関しては五十川先生と基本的に同じ観点です。ですから、西北大学の問題
   について言えば、政府がマスコミをコントロールしようとしたのは、問題を拡
   大したくないという、言うなれば善意から出ているわけですけれども、結果は
   主観的な願いと逆になってしまったということです。

   ですから、そういうことを振り返ってみますと、私が思いますのは、中日両国
   のメディア間での交流、それによってコンセンサスをつくっていくということ
   が非常に大事だろうと思います。今も言いましたとおり、政府はやろうと思っ
   てもそれがやり切れない、あるいは逆効果を生んでしまうということがあるわ
   けですから。

   これと関係のあるエピソードを申し上げてみたいと思います。恐らく皆さんあ
   まりご存じないことだと思いますが。北京に中国農業大学というのがありまし
   て、学長は陳章良(チンチャンリャン)という方で、アメリカから帰ってきた学
   者です。この陳学長と私は年齢的にも近いですし、非常にいい友人なもので、
   時々会っております。昨年の11回大会の期間中だったと思いますけれども、非
   常に遅く会いまして、それで聞いたのは、農業大学の日本語学科の学生が、国
   慶何十周年を祝うというような日本語のスローガンを書いた。農業大学の中に
   は日本語だけではなくて、当然中国語のお祝いのスローガンもあったし、英語
   のお祝いのスローガンもあったのです。いろんな言語のものがあったわけです
   が、日本語で書かれたものに対してだけ農業大学の内部のブリティンボードの
   ネットワーク上に意見が出た。なぜ日本語のスローガンなんか出すのだ。明
   日、日本語のスローガンを外せ、外さなければそいつを燃やせという意見が出
   た。

   陳学長というのは、中国の学生においては非常に威信のある学長です。レベル
   も非常に高い学者です。彼はブリティンボードに書いた。このスローガンは日
   本語学科の学生が日本語で書いたものであって、だから、いいことだというふ
   うに書いたわけです。それに対して学生から返答が来た。学長、あなたのおっ
   しゃることはわかる。しかし、この日本語のスローガンは出せない。陳学長
   は、しばらくブリティンボードを見ないでいたのですが、しばらくして見る
   と、ずっとその日本語のスローガンに関する論争が続いているわけです。それ
   で、もうどうしようもなくなって、最後は学長の決裁で外せということになり
   ました。

   この問題がまさに先ほど五十川先生がおっしゃった問題にも関連してくるわけ
   です。つまり、ネット上のブリティンボードにいろんなことを書き込んだ人間
   というのは恐らく十数人です。それに対して農業大学の学生は1万人ぐらいい
   ますけれども、そのスローガンを支持している1万人ぐらいの声は表面にあら
   われないで、ネット上でわあわあ騒いだ十数人の意見が現実になってしまった
   わけです。

   私は陳学長に言いました。あなたは非常に威信のある学長なのだから、学生投
   票をやったらどうだと。つまり、農業大学の学生で日本語のスローガンに賛成
   する人間はどのぐらいか、反対する人間はどのぐらいか、学生投票をやったら
   どうかと言いました。あるいはスローガンに反対している人間だけではなく
   て、農業大学のすべての学生にブリティンボードの上で意見を表明させたらど
   うかと言いました。それに対して陳学長は、いや、だめだ、とにかくこの事柄
   は今日で終わりにしたいということだったわけです。

   まさにその辺のところが今五十川さんがおっしゃった問題と同じでして、要す
   るに、「この問題はこれまで」ということで終わりにしてしまう。しかし、問
   題は実際には終わっていなくて、むしろそこで蓄積されているわけです。です
   から、そこでもう少し時間をかけて話し合いをすれば、実態は一部の人間が空
   騒ぎしていただけだということが分かるわけです。そういうことをしないと空
   騒ぎをした人間の声が実現されてしまう。

   これは何を意味するかというと、そういう空騒ぎがまた将来、実現される可能
   性を意味してしまいます。このスローガンというのは、今も言いましたとお
   り、ただ日本語で書かれていたというだけで、その中身自体は、中華人民共和
   国建国を祝うというものだったわけです。そういうものでも問題になってしま
   うわけです。


●中国における報道の自由について

牧野 今、中国で言論の自由というのはどこまで確保されているのかというのは非常
   に興味があるところで、そこはどうなのでしょうか。

張  実際には、中国の言論というのは非常に自由です。もちろん政府は、内容に
   よってはあまり報道してくれるな、あるいは少なくとも重点的に報道してくれ
   るなという意向は持っています。ただ、私の知る限り、今日、中国で行われて
   いる報道の90%以上の内容は記者が自分で書き、そして新聞社、テレビ局、ラ
   ジオ局が自ら決めて流しているものです。もちろん10%足らずのものは、当然
   ながら政府から出された情報、あるいは政府が出してくれと言ってきた情報だ
   ろうと思います。

   ただ、今も言いましたとおり、量的にそんなに多いものではありませんし、関
   心度もそんなに高くありません。大事なことは、量が少ないというだけではな
   く、その効果があまり高くないということだろうと思います。というのは、先
   ほども言いましたとおり、中国政府はうまくマスコミを利用するということを
   あまり知らない政府ですから。

   中国のメディアというのは、今、基本的に自由に言論を発表しております。も
   しもある程度のコントロールがあるとすれば、政治、特に政党絡みの中身にな
   りますと若干のコントロールがあります。

工藤 こうした自由で建設的な議論がこれからの日本と中国の間に必要だと思いまし
   た。今日は時間が短く十分な議論はできなかったかもしれませんが、初めに提
   起したコミニケーションや認識ギャップを解決するための議論の第一歩には
   なったと思います。言論NPOではこうした議論をこれからも継続的に行いたい
   と思っています。今日はどうもありがとうございました。

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●TOPICS

■ 12/15 「言論NPO設立3周年記念パーティー」報告
http://www.genron-npo.net/about/history/041215_partyreport.html


■ 12/17 「第6回アジア戦略会議」報告
http://www.genron-npo.net/forum/asia/041217_01.html


■ 12/17 「第5回アジア戦略会議」報告
http://www.genron-npo.net/forum/asia/041209_01.html

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