明石康×小林陽太郎「世界の大変化の中で日本が考えるべきこと(1)」

2009年1月02日

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◆◆◆◆ 言論NPO コンテンツメールマガジン 
◆◆◆◆ Vol.1(2009年1月2日発行)

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いよいよ新しい年の幕開けとなりました。
言論NPOでは、最新の活動についてお知らせする「ニュースメールマガジン」
とは別に、コンテンツ配信専用のメールマガジンを新たに始動させます!
第1弾は、「世界の大変化の中で日本が考えるべきこと」と題して行われた
明石康氏(特定非営利活動法人日本紛争予防センター 会長)と
小林陽太郎氏(富士ゼロックス株式会社 相談役最高顧問)による
新年対談企画の内容をお届けします。
司会は、言論NPO代表の工藤が務めました。
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□■「世界の大変化の中で日本が考えるべきこと」(1)■□
【1】アメリカが直面する変化とは

(工藤泰志)
世界的な経済危機が実体経済にも影響を及ぼしている中、アメリカでは
この1月にオバマ政権が誕生します。2009年は大きな変化の年になりますね。

(明石康)
2008年に金融危機から始まり、実体経済にまで移っていった危機は100年に1度の
大危機言われていますが、私も同感です。
1929年の世界大恐慌で始まった経済危機との違いは少なくとも2つあると思います。
ひとつはアメリカで起こった後、世界を巻き込んだ危機になるまでのスピードが
速かった。もうひとつは、30年代の危機は特に日本やドイツ、イタリアなど
枢軸国と言われる国ではナショナリズムが強くなり、ドイツではナチズム、
イタリアではファシズム、わが国では軍国主義という形で進みました。
しかし今回は世界中の国々が、アメリカだけではなくヨーロッパやアジア諸国も
立ち上がり、G7や閣僚レベル・中央銀行総裁の会議、首脳レベルのG20が開催
され、中国やインド、ブラジルなども巻き込んで共同で対応策を練り、また
有効需要を盛んにするため、各国政府やIMFなども乗り出す形で対応しました。
そう考えると、グローバル化は大変な問題を巻き起こしたと同時に、前向きな
反応も引きだしたという意味で画期的だったのではないかと思っています。

(小林陽太郎)
今、明石さんのおっしゃったことは本当にその通りだと思います。
グローバリゼーションが進み、実際に多極化とか、無極化という言葉が最近多く
使われています。
アメリカが中心になって進めてきた市場原理主義や、マーケット価値を最大に
すること、あるいは新自由主義という問題のあるシステムも、能力がある人たちが
進めているときはそれなりにバランスをとり、日本を含めた他国もアメリカに
ついていかざるを得ないような時期が続いていた。そのような中、アメリカ史上
最悪の大統領といわれているブッシュさんが大統領になった。
もちろん、色々な政策の失敗や現在の展開ブッシュさんだけの責任ではないと思います。
しかし結果としては、力のあるスマートなアメリカのリーダーシップが急激に綻び
始めてしまった。市場原理主義やマーケット価値の極大主義も、もともと無理が
あったのかもしれませんが、それを維持できなくなってしまった。サブプライム
問題も、アメリカのリーダーシップの質の劣化というものが背景としては非常に
大きかったのではないかと思います。
問題は、ブッシュ政権下で起きたリーダーシップの劣化が、その後も継続されて
いくのかということです。この点については、オバマさんのリーダーシップを含め、
注視していく必要があると思います。しかしアメリカ以外に、2つ目、3つ目の極に
なり得る国があるのかと考えても、ありませんし、やはりアメリカのリーダーシップ
抜きにしては、世界の秩序の維持は考えられない。
そのような中で、日本自身の問題、伸張が目覚ましくこれから期待されている
アジア各国の問題が出てきます。経済を含めて大きな変化に、特に日本や中国などが
どのような方法で、また、新しい形でのグループリーダーシップなり、責任ある役割
を果たしていくことができるのかを考えないといけない。
もし、この辺がしっかりしないと、経済を含めた世界秩序を取り戻すまでに、
すごく長期間を要することになるのではないかという気がしています。

(明石)
ブッシュ政権の勇み足というのはある意味で、同時多発テロの9・11に原因がある
のではないかと考えています。今までの脅威は国家と考えられていたのが、
一握りの目に見えないテロリストグループの仕業であることが判明しました。
この時の反応はアメリカらしいと言えばそうだったわけですが、振り子が急激に
逆の方に振れて、単独行動主義みたいなのが現れてきた。
その兆候はブッシュ政権の前のクリントン政権でも、ないことはなかったわけです。
クリントン政権はソマリアとかボスニアで民族紛争が激化したとき、当初は
コンストラクティブ・マルチラテラリズムと称した多国間主義の方針で政策を進めて
いました。しかし、ソマリアで米軍の被害者が出てくると、急激にアメリカ中心主義に
舵を切りました。
ブッシュ政権においても、9・11を契機にアメリカ中心主義に舵を切った結果、
今のような状態になっているのだと思います。
先ほど小林さんが言われた通り、これからは、ひとつの超大国アメリカを中心として
世界が動くというのではなくなるでしょうし、オバマ政権でのアメリカも、
スーパーパワーではなくなったけれども、最も影響力をもった主要な強国であり続ける
のだと思います。その力の要素は、必ずしも軍事力が中心ではなく、軍事力や経済力、
政治力や文化力などの総合力になると思います。
おそらくオバマさんは総合力で乗り切ることをよく心得ていて、ヨーロッパとの関係、
特に、現在ロシアとの関係は非常にぎすぎすしたものになっていますが、ヨーロッパ
におけるポーランド・チェコのミサイル設置の問題やNATOの西漸の問題など、
色々な関係が修復に向かうと思います。同時にアジアやアフリカに対しても、
アメリカはより密接な関係を築こうとするでしょう。おそらく日本や韓国、その他の
同盟国との関係を重視するでしょうし、それにとどまらず、中国やインドのような
新興国とも協力していくことになるでしょう。これらの国々なしには、世界の大きな
問題を解決することはできないことから、今よりもさらにグローバルな構図を描き
ながら進むことになると予想されます。
その中で、日本は今までのような日米同盟の上に安住し、アメリカの善意や好意
だけに頼り、日本を特別扱いしてくれるだろうという期待を持つことは、もはや
許されない状況になるだろうと思います。

 ~【2】につづく~(全4回でお届けします。次号もお楽しみに!)

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