山形県知事の主張 第1話:「山形の文化の価値を生かす」

齋藤 弘 (山形県知事)
さいとう・ひろし
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1957年生まれ。81年東京外国語大学外国語学部卒後、日本銀行に入行。この間、国際通貨基金に勤務し、預金保険機構勤務、日銀退職、山形銀行入退行を経て、2005年山形県知事選挙に当選。
「県民と『助け合い』、『分かち合い』、『育みあう』ふるさと山形づくり」、「百年後にも誇りに思える元気なふるさと山形づくり」、「子ども夢未来宣言~子育てするなら山形県」などを提唱し、「百年後にも元気な山形」の実現のため、様々なアクションプランを実践している。
山形の文化の価値を生かす
地域の価値を考えるとき、2つの意味があろうと思います。1つは、今までにない、全く新しい価値を生み出す、という意味での「価値の新創造」、そしてもう1つは、伝統文化に裏打ちされ、地域で長らく育まれてきた価値に、現代のいぶきを吹き込む「価値の再発見」です。
今、山形県では、特に後者で成功事例が芽ばえつつあります。すなわち伝統的なものづくり力を海外にも発信するというものです。メゾン・エ・オブジェというパリのインテリアシーンを扱っている国際見本市があって、2006年からそこに山形の伝統品を展示しました。こうした取り組みを企画・コーディネートしているのが、山形県出身の人で、奥山清行さん。もともとフェラーリのデザイナーとしても活躍している工業デザイナーです。彼がヨーロッパで洗練されたアイデアを山形の伝統工芸にどんどんぶつけてくれた。本来、曲がらない木を曲げたらせん形の照明付きコートハンガーをつくる、また、山形の1000年の歴史ある鋳物で、注ぎ口からお茶が絶対垂れないような形にしてもらったティーポットもあります。
それらが今、大ヒットして、世界中のいろいろな雑誌に何十冊と取り上げられています。中には、大ブレークして生産が追いつかないものもある。ティーポット「まゆ」は、ニューヨーク近代美術館のニューヨーク市内3つのショップからも展示販売させてくれと注文がきて、2006年9月から売り出されています。
こうした取組みをカロッツェリアプロジェクト、日本語では「山形工房」という名前にしています。カロッツェリアというのは、イタリア語で工房ということなんです。日本人は海外の動向に関心が強い国民性をもっていますから、日本で情報発信するよりも先に海外から情報発信する、そして海外で受けたとなると、注目度もグンとアップする、そういう効果を狙ってやっています。これを我々は「黒船効果」と呼んでいます。
ところで、地方の再生だと言いながら、本当にそこに生活している人たちは地方のことをよく知って、かつ、その自分の地域を愛しているのでしょうか。まず自分たちの住んでいるところを自らが徹底的に知って愛することから、すべては始まるのではないかと思うのです。
山形県は昔から非常に精神性の高い地域です。まさに出羽三山というのは関八州までその信仰におさめたところですし、今でも千葉県の木更津から参拝者が多数訪れる。今だからこそ、物質的なことよりも心の問題など精神的な面が重んじられる時代に似合った地域ではないか、と思います。しかし実際のところ、山形県の人は灯台下暗しで、十分にそれを認識していない。それにあらためて気付いて、それを皆さんに愛でていただけるようにきっちりとアピールする。そして誇りを取り戻す。そういう作業の連続が、「山形県人の素晴らしさ」を意識化、実践化、均霑(きんてん)化するものであり、本当の意味で、地域の再生につながるわけです。その一環が「山形工房」であったりするのです。
何も東京の真似をする必要はないと思います。
2007年05月26日 14:03








