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 佐賀県知事の主張 第2話:「知事の役割は何か」

古川 康 (佐賀県知事)
ふるかわ・やすし
profile
1958年生まれ。82年東京大学法学部卒業後、自治省(現・総務省)入省。自治大臣秘書官、長崎県総務部長などを経て、03年無所属から佐賀県知事に当選。日本で初めてマニフェストを掲げて選挙を戦った政治家の一人であり、当時全国で最も若くして知事となった。07年に再選を果たし、現在2期目。全国知事会政権公約評価特別委員長。
「がんばらんば さが!」をキーワードに、「くらしの豊かさを実感できる佐賀県」の実現を目指して県政に取り組む。

知事の役割は何か

これまでの伝統的な知事像というのは、いわば制度に乗っている存在であり、それを変えるということではなく、執行者だったと思います。そこでは、着実に安心して任せられるという人が選ばれてきました。ところが、地域全体が揺らいでいる今は、安心して任せられる人だけでは、とても地域の将来は託せないという感じになってきている。まさに地域を引っ張っていける人を求めています。引っ張るということは、すなわち今までやってきただけではだめなわけですから、そこに新しい提案をし、改革をし、実行できる人が求められているということだろうと思います。

いわゆる改革派と呼ばれた人たちは、多分何かアプリオリな、当たり前という感覚がないのだと思います。すべてに対して、まず本当かというところから入っていく。片山(善博前鳥取県知事)さんのように内部の事情に詳しい者の犯行のように確信犯的に変えていくという人もいれば、浅野(史郎前宮城県知事。以下、同じ。)さん、橋本(大二郎高知県知事)さん、北川(正恭前三重県知事。以下、同じ。)さんのように、何も知らない市民ではなく、思いもあり、勉強もし、プロフェッショナルな市民の代表として県政を預かる人もいる。

私自身も、図らずも同じことを言っていますが、知事の仕事は職員のリーダー、トップであるという仕事と、県民の代表者であるという仕事の両方あるわけです。職員をまとめる仕事では、これは県庁株式会社の社長ですから、従業員の士気高揚も含めて組織を束ねていかないといけない。一方で、そこに出てくるアウトプットについては、株主である住民からチェックを受けるわけですし、株主の代表者でもあるわけです。逆に県庁の仕事がしっかりなされているかという、株主代表兼監査役のようなチェックもしなくてはいけない。一方で、別に社外監査役として議会があるわけです。その両方の仕事が自分にあることをどれだけ認識しているのかということではないかと思います。

佐賀県は大きな県ではありませんが、私はその中でもこの地域を引っ張るために様々な提案をしています。

実は、佐賀県は国に対して法人住民税と消費税を交換しないかという交換論を提案しています。もう2年ぐらい前になるかと思いますが、それ以来ずっと言い続けています。ですから、税源移譲ではなく、税源交換です。消費税は地域ごとの偏在が比較的小さいが、法人住民税は偏在が大きいので、同じ地方税収でも偏在がない方がいいからです。

または、地方交付税の財源である税のうち、法人税の割合を高めていく、その代わり、消費税を交付税の財源の対象から外していく、そうしたことを通じて、地方税を偏在のない税制に持っていくことが必要ではないかと思います。

もう1つ、私は東京都の直轄化を平成16年に提案しました。東京23区といっても、板橋と練馬は後から入ってきましたから、もともと21区や20区だったのですが、そのいわゆる東京をもう一度見直したらどうか。特に、私がイメージしている東京というのは都心3区、千代田、中央、港です。新聞で言えば、もう14版というか、最終版が配布されるような地域の経済活動は、実は東京都という自治体の事業活動の結果でも何でもなく、それは首都であることによるものではないのか。そうしたものを東京都にだけ帰属させることが税制上正しいのか。そういう首都機能のおかげによる税収を地方の共有財源にしていくようなことを考えたらどうですか、と提案したのです。

東京都知事選の結果についていろいろ思うことがあります。私は、首長というのは批判ではだめだと思うんです。何よりどういう東京都にしたいのかというところがうまく伝わってこないと、多くの都民の心をつかむことはできないし、そういう考えがご本人にないのであれば、私はやっぱり浅野さんは出ない方が逆に浅野さんらしいということを考えていました。別にアンケートをとったわけではないですが、根っこのところに田園風景の広がるようなふるさとを持っている東京都民の割合が、21世紀に入った今、激減しているのではないでしょうか。かつて、自分の精神的な尾っぽを田舎に残している人には、自分は稼ぎに来ているとか、自分たちの稼ぎの幾ばくかが仕送り代わりに地元の振興に使われることに対して、精神的に、あるいはほっとする感じがあったかもしれませんが、今や多くの東京都民の人たちはそうは思わないだろうと思います。

私たちも東京問題を大変な問題だと思っています。浅野さんを応援する人たちとは、東京を東京だけの東京にするのではなく、日本の共有財産のようなイメージで何かできないのだろうかと話をしました。これまで三位一体を進めてきた中で東京都に入ってきている税収をどうするかというのが大きなテーマになり始めています。ですが多くの東京都民は、そうだと思うような感じになっていないのではないでしょうか。

これから地方が自立をして、自分たちで制度設計をやっていこうとすると、どうしても水平的調整の問題が出てきます。水平的調整とは、自分のところに入った金を、要するによその家にやるということです。子供に仕送りするのならまだいいのですが、なぜ隣の家にやるのかということになる。

では、東京都に入るべき税収が、例えば佐賀県に行くということに対して、それは「そうだろう」と思うのか、「ちょっと待てよ」と思うのかということです。 水平的調整ができる機運が今回の東京都知事選で見えるかと思ったのですが、それは思った以上に厳しかったという感じを持っています。東京都民にとってみると、東京問題というのは、東京都自身にとって直接プラスになる話ではないという判断があったのではないでしょうか。

東京都の超過課税をかなり厳しくして、東京にいることのコストが高過ぎるようにしたらどうかという提案もあります。そうすると、よその国に行ってしまうという問題があります。今、世界的に法人税の引下げ合戦が始まっています。特に今、ネットが普及してくると、どこにある会社かという議論があまり意味を持たなくなってきている。

実は佐賀県は、アマゾンの本社を佐賀県に誘致できないかと考え、アマゾンと交渉したこともあります。あのような企業の事業税収が、今、東京都に帰属していますが、別に東京都に帰属させる必要はないではないかということです。税金をまけるから佐賀県に本社を置かないかという提案をしています。会社戦略上、六本木にも本社があった方がいいというのであれば、東京にも本部らしきものを置いていい。それによって、アマゾンから上がる事業税収を佐賀県に持ってこれないかということも議論しています。かって三重県の北川さんがやられたように、企業誘致で補助金を出すというやりかたもあります。

2007年05月17日 10:43

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