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 佐賀県知事の主張 第5話:「幕末の幕臣のような気持」

古川 康 (佐賀県知事)
ふるかわ・やすし
profile
1958年生まれ。82年東京大学法学部卒業後、自治省(現・総務省)入省。自治大臣秘書官、長崎県総務部長などを経て、03年無所属から佐賀県知事に当選。日本で初めてマニフェストを掲げて選挙を戦った政治家の一人であり、当時全国で最も若くして知事となった。07年に再選を果たし、現在2期目。全国知事会政権公約評価特別委員長。
「がんばらんば さが!」をキーワードに、「くらしの豊かさを実感できる佐賀県」の実現を目指して県政に取り組む。

幕末の幕臣のような気持

自治体も国も、例えば夕張市のように経営不可能になったらだめだと思いますが、では、山形県の齊藤知事が言っているように、借金の残高が減少しゼロがいいのかというと、ゼロではなくても、持続可能にするかどうかということだ と思います。ただ、持続可能かというときに、12月20日にならないと交付税が決まらないという状況もあるわけです。

佐賀県の場合、税収は800億円です。それに対して交付税は今1300億円ぐらいです。税収をはるかに超える交付税の額というのが決まらないと予算が組めないのです。この構造がある限り、本当の意味で経営は難しいのです。この部分は変えていかなければなりません。自立のメインは税収にあると考えなければ、自立的な経営はできないのです。例えば、消費税をもっとメインな位置づけにしてほしいと私が言っているのは、国が裁量で鉛筆をなめて地方に幾ら配るといったことはやめるべきだからです。

今、多くの都道府県の税の組織というのは、とにかく、税をいただくだけなのです。どうやって税源をふやすかということを余り考えていない。佐賀県では、去年から今年にかけて、佐賀のものを買おうという運動をしています。なぜそういうことをやっているかというと、去年の4月から今年の3月までの1年間の小売の売り上げの数字が、今年調査される。その結果で地方消費税の配分割合がある程度決まる。だから、この調査統計の結果が実は税収を左右する。調査統計の数字で鉛筆をなめるわけにいきませんから、この1年間に何とか売り上げを伸ばさないといけないのです。そこで1年間とにかく買おうということをしました。

県庁も、例えば今年の4月に買うとだめなので、今年は高校総体ですが、高校総体の備品で腐らないもの、帽子や服などは前年度に買わせています。そういったことを市町村にも、また商工会も通じて、とにかく昨年4月1日から今年3月31日までの間に売り上げを伸ばしてくれとお願いしました。それが結局は自分たちにとってもプラスになるのだということを一生懸命訴えました。それで皆さんに地元のものを見直してほしいということと、一方で、県庁の中でも、税源というのは増税ではなく、税率を変えなくても増収というのはあり得るのだということを訴えたのです。

アマゾンの本社を佐賀県に誘致したいと思っているのも、税収がふえるからです。我々は税金をお預かりして、その使い道を決めてやっていくということですから、とにかく税収を上げるしかありません。人からもらってくることばかり巧みになってもいけません。

私たち地方の自治体にとっては、短期間でやれることと、地方分権の2次改革の中でやっていくことと、道州制でなければできないこととがあります。短期間でやっていくこととしては、例えば、法人住民税と消費税の交換をやろうではないかとかという議論をやっていて、これは今度の骨太の方針に書かれるかもしれません。一都栄えて万村枯るです。もう東京だけ栄えて万村枯れている。万村だけならともかく、地方がかなり厳しいということを分かってほしいのです。

県庁所在地は支店経済がそこそこ成立しています。県庁経済も成立している。ですから、官公需があり、民間の支店がありということで、厳しい中でもそこそこもっています。ぜひ注目してほしいのは、ナンバーツー・シティーです。県庁のない町の今の経済実態や、暮らしの状況がどうなっているのかを見ていただくと、地方は未来に希望を失っているという部分も随分見てとれてきます。

もうすべての市や町が栄えるというのはあり得ません。それをやるべきだとも思いません。例えば、人口二、三十万人の単位ぐらいの生活圏域の中では、そこそこ暮らしていけるような働く場もあり、また、暮らしも充実している感じがあった方がいいのではないか。いつの時代にも、二、三十万人ぐらいの単位でというのは大体言われていることですが、よく考えると、衆議院選挙の小選挙区と同じぐらいなのです。

何か幕末の幕臣をやっているような気が私はしています。つまり、世の中が変わるだろう、今、制度疲労がいろいろ見てとれる、このままではうまくいかないとわかっている。では、このままではだめだから、それを捨てるかというと、私は地域を代表する政府の長ですから、捨てられない。今の中で一生懸命やらないといけない。しかし、今の中で一生懸命やってもそこには限界があるということを感じているということなのです。

道州制を見据えていくかというと、それはもう私も見据えます。なぜなら、私の役割は県民の暮らしの豊かさの実現だと思っているからです。佐賀県という政府があった方がいいのか、なかった方がいいのか。私は県庁のトップだから県庁があった方がいいということではなく、仮に佐賀県庁がなくなって九州が全部一緒になった方がいいのであれば、その道を選ぶべきです。それは県民のためですから。

道州制の議論に私が一生懸命になっているのは、道州制になるときに佐賀県のような比較的コンパクトな県が困らないような仕組みとか、きちんと我々のことを意識した制度設計でないと困るので、それをやっていくためには自分で議論をリードしなければだめだと思っているからです。だから、道州制の制度設計をリードするということと、今のような状態でも佐賀県を磨き上げていくことによって、仮に佐賀県を売りに出すときも蔵つきで売るということなのです。そうしていかなければならないというのが、私の思いです。

2007年05月20日 10:43

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