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 福岡県知事の主張 第3話:「東京集中と多極創造力拠点」

麻生 渡 (福岡県知事)
あそう・わたる
profile
1939年生まれ。63年京都大学法学部卒業後、通商産業省(現経済産業省)入省。通商政策局国際経済部長、近畿通商産業局長、商務流通審議官、特許庁長官を経て、95年福岡県知事に就任(現在4期目)。05年からは全国知事会会長を務める。
全国知事会会長として、地方分権推進の先頭に立つ一方で、県立病院の民営化や、民間の発想や専門的能力を県庁に取り入れる「人材ハイブリット県庁」への転換など、時代の変化を洞察した創造的な県政を展開している。

東京集中と多極創造力拠点

東京への集中が加速していることを、おかしいと私が考えるのは、これでは日本国民全体のいろいろな能力を十分発揮できないし、おそらく今後の多様な世界の動きに対応できないと思うからです。それはどう考えるのか。それこそが非常に本質的で一番大事なことです。その問題を税目の計算の仕方だけで考えるのは、我々にとっては非常に重要なことですが、国全体はもっと本質的なことを考えなければいけません。

政策的に言うと、もっと分散させるという政策を日本は明確にとるべきです。これは政府機能というか、経済とか文化とか情報とかいう機能です。教育もそうです。例えば、かつては大学を新たに東京につくってはいけないという規制がありました。これはもう今は止めている。それから、工場立地も制限して、地方分散の工場立地をやったこともあります。今は、大学や工場も自由に東京で立地ができるようになっています。かつて東京にあまりにも集中するからということで規制していたものを、国際的な競争に勝てないじゃないかという名分のもとに外していった。むしろ今、ものすごい勢いで集積しているけれども、それは政策の結果として起こっている部分が随分あるわけです。

では、このやり方でなぜいけないのかということです。本質的に言うと、このやり方は20世紀のやり方であってそもそもそこに住んでいる人たちはそれで幸福なのかということです。とにかくあのように何でも機能を東京に集中させることがいいことなのか、という問題があります。もう1つは、東京が全国で一番出生率が低く、赤ちゃんが生まれない。赤ちゃんが生まれないところに一貫して地方から人口が流れているわけです。生まれないところの人口がずっと増え続け、我々のような地方は人口減少に大分前から入っている。だから、逆スパイラルじゃないかと思うわけです。一番、赤ちゃんができないところにまた人間が地方から集まる。これでは少子化を一番促進するメカニズムを容認している、としか言いようがありません。

しかし、私はそれ以上にこれからの日本は複数の実験をしなくてはいけないと思います。かつてのように、何か先行事例があってそれを真似しながらやっていても大過ないという時代は、もう明らかに80年代に終わったわけです。そうすると、いろいろな制度の設計の仕方、教育の仕方、文化のつくり方、あるいは経済もこれは多様なやり方をしてみる。その中で実験をしてみて、うまくいくところと、いかないところがありますが、幾つかの選択肢を実験するという国の仕組みにしておくべきなのです。みんな東京で決めたことだけを一緒にやっていくことになった場合に、多分にやり損なうんです。

その一番いい例がゆとり教育です。皆、右へ倣えでゆとり教育だとやったわけです。あれから学力低下を起こして、今慌ててゆとり教育をやめようじゃないかと言い出している。今度は英語ですよ。英語教育を全国で小学校からやって、気がついてみたら、何のために英語に力をいれたのかわけがわからなくなったということにもなりかねない。ゆとり教育という考え方も確かにあるんでしょうけれども、一方で石原さん(慎太郎東京都知事)が言うように、知識というのはある程度詰め込まないとだめなんだと。だから、詰め込みはちゃんとやらなければいけない。また知識だけじゃなくて、徳育ということをもっと充実させないと、人間としてだめになるのではないかとか、それが教育なんですね。それを東京一極型でやっている限りは、同じことをやって、同じ失敗をしてしまう。

だから、地方にも任せてほしいのです。私は多極創造力拠点といっていますが、新しいことをやる拠点を幾つか全国につくる。例えば関西もやりますと、九州もやりましょうと、東北もやりますと。我々はこういう教育の考え方でやりますとか、そういうような国の体系にしなければ、日本はうまくいかないし、危ないと思います。東京一極集中の問題は、日本の将来の繁栄を複眼でやっていくために、もっと機能を分散する、あるいは、九州なら九州の考え方で独自のやり方をもっとさせることを考えなければなりません。

地方に任せてほしいと主張する以上、自治体側も経営をする意志を貫かないとなりません。この間、総務省のほうでも破綻法制から一括交付税を含めて様々な動きが始まっています。そういう破綻法制の動きには、今までの財政再建団体と違って、もっと踏み込んだものにしなくてはいけないという点で我々も意見が一致しています。その一番の中心は早期是正措置ですね。早期是正措置をとるためには早期ウオーニング(警告)が発せられなくてはならない。したがって、ウオーニングの元になるような新しい指標のつくり方をやっていこうということなんです。早期ウオーニング、早期是正の体系は今回随分よくできてきたと私は思っています。

その次に問題なのは、それでもうまくいかなかったときの債務整理はどうするんだということをまだはっきりさせていないんですね。その点について踏み込んでいきますと、債務の整理をする場合に、銀行の借り入れもカットの対象にするかどうかです。

そういう議論は一見、会社なんかの整理をするときにはやっていますから、当然のことのように見えるのですが、実は、これはよく勉強しておかないと、全く金融機関はもう地方自治体にお金を貸せない状態になるんですね。この部分はまだ残したまま、早期是正のところに手をつけて、再生の場合は聖域なきカットというのが今回の法律なんですね。

また一括交付税についてですが、地方交付税も補助金的な交付税が随分増えているんです。これはやはりおかしいと私も思います。あまりにも複雑になっています。ですから、そういう交付税ではなくて、整理をして、もっとわかりやすくということで、新型交付税ということを考えたのです。この一括交付税は今後も拡大した方がいいと私も思います。新型交付税という考え方自体は間違っていないし、交付税を特定の政策誘導手段として使うほうが本当はおかしいと思います。新型の交付税は、これをやるから、あるいはこれをやったからと配分するのではなく、面積とか人口とかわかりやすい手法で分けましょう、そうしておいてあとはどういう使い方をするか、地方側の裁量で行うという方向ですから、考え方は「簡明化」ということです。もちろんお年寄りが多いとか、いろいろな要素はあると思いますが、そういう要素をたくさん見たら、また昔に戻ってしまうわけです。

地方が経営するためには、国がやたらに関与したり補助金で使途を決めて出すのでは困るわけです。金そのものは使い方は自由でよろしいということで出すべきで、地方交付税もそういう格好にすべきと考えています。しかし、その結果、うまくいかなければ、国が早期ウオーニングでちゃんとチェックしますと。あなたのところは、財政指数も、いろいろな満足度指数もこんなにうまくいっていないじゃないかと言えるというふうにすればいいということです。地方が経営するためにはそういうことになっていかざるを得ないと思います。

自治体も経営をするということを嫌がってはいけないと思います。経営者として闘わないといけないのです。各知事もそうだし、市町村長もそうです。一生懸命頑張って、自分の地域の特色を生かして魅力づくりを一生懸命やらなければいけないのです。それをかつてのように、何かお国にずっと面倒を見てもらえるとか、そういう発想でいる限り、分権の主張など成り立たないでしょう。

2007年05月23日 13:47

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