福岡県知事の主張 第4話:「東京にどのように挑むのか」

麻生 渡 (福岡県知事)
あそう・わたる
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1939年生まれ。63年京都大学法学部卒業後、通商産業省(現経済産業省)入省。通商政策局国際経済部長、近畿通商産業局長、商務流通審議官、特許庁長官を経て、95年福岡県知事に就任(現在4期目)。05年からは全国知事会会長を務める。
全国知事会会長として、地方分権推進の先頭に立つ一方で、県立病院の民営化や、民間の発想や専門的能力を県庁に取り入れる「人材ハイブリット県庁」への転換など、時代の変化を洞察した創造的な県政を展開している。
東京にどのように挑むのか
福岡の戦略は経済についていえば、もう極めて明確でして、産業政策としては、21世紀に成長する産業を集積させて、非常に成長力の強い先端産業構造にしていくという政策です。具体的にそれをやる産業分野ですけれども、1つは自動車、1つは半導体、1つはバイオ、水素、あとナノテクノロジー、そういう分野で必ず我々は次世代の産業を域内につくり出していく、あるいは集積させていきます。その政策手段はいわゆる産業クラスター政策というやり方でして、その有力な手段は産官学協力の技術開発と、それぞれのセクターごとに必要な人材を育てる学校をつくっていくというやり方でやってまいります。
私は21世紀の日本が伸びていくためには、今までどおり、東京と三大都市じゃもうだめだと考えています。新しい地域が必要になる。その地域は我々のところである。ただし、我々はあの東京の轍は踏まない。過密都市はつくらない。我々はネットワーク型でこの地域をつくっていきます。ネットワーク型というのは、機能分担した都市連携によってそれを実現していく。これは九州全体でもいいのですが、今は北九州、福岡で考えています。当然、頭の中には独立できるくらいの経済圏をつくっていくという発想はあります。
ただ、こうした経済戦略を考える場合、九州とかアジアとかそんな漠たる考え方をしたって何の役にも立たない。だから、我々が今進めているプロジェクトは経済面で言いますと、まず自動車は我々の方で150万台の生産拠点をつくっている。ただ、この構想の中には、70%まで地元調達率を上げるという第2の目標がある。第3番目は、我々はアジア最先端の自動車拠点になるということをやっていく。それはどういうことを意味するかというと、我々のところをマザー工場にするということです。さらにもう1つの目標は、未来の自動車をつくるという未来カーの開発拠点になるということも考えています。今後、自動車は環境の配慮、安全面での機能向上、情報サービス機能の高度化に向けて進化していきます。だから、半導体と一体化するためのいろいろな作業を今やっています。また、環境への配慮として水素エネルギーも開発しています。自動車の産業もアジアの各地に随分拠点ができていますけれども、その中で、技術的に、あるいは新しい概念の車を開発するのに断然我々がリードするという地域になる。単に生産力を競うのではなくて、頭脳の面で勝つところにする。
半導体のプロジェクトの名前は、福岡計画なんてけちなことは言わない。シリコンシーベルトプロジェクトといっている。なぜシリコンシーベルトプロジェクトかというと、これは海があって大陸があり、そこに福岡があり、朝鮮半島、上海、香港、台湾、シンガポールがある。これは今、世界の大半導体生産地域ですね。もう世界の生産の半分を超えています。この中で我々が一番の拠点になるという、だから、シリコンシーベルトプロジェクトというのです。
抽象的にアジアとの協力といっても、具体的には各セクターごとにアプローチをしないと意味のあることにならないと思います。何か時々会議をしたって、具体的な成果に結びつきません。会議は雰囲気をつくるのには意味があるけれども、具体的な成果は、半導体ではどういう協力関係をつくりますか、自動車ではどういう分業体制をつくりましょうかということをやらないといけない。
かつ、東京に勝つためにどうしたらいいかということですが、これは生活の質です。東京にない、東京で働いて得られない生活の質を我々は保障しなければいけない。生活の質とは具体的にどういうことかといいますと、1つは不動産が安い。東京で通勤1時間圏内で家を買ったら、それだけで家のローンの奴隷になっちゃうじゃないですか。新しい家に入ったとたんに夫婦げんかが起こるという悲劇は我々には起こらない。この地域の不動産価格は、通勤時間のことを考えた場合におそらく東京の3分の1ぐらいじゃないかな。
例えば2500万から3000万円出せば、ちゃんとしたマンションが買えると思います。そうしたマンションは通勤に1時間もかかりません。一戸建てで少し郊外型であればもう少し高いけれども、2500万から3000万円ならローン地獄にはならない。
しかも空港も近く、かなりのコンパクトシティー。「たかが住むところ、されど住むところ」なんです。それを東京では自分のものを確保しようとしたら、それだけで大変じゃないですか。だから、我々のところに来れば、快適な通勤時間でちゃんとした居住が得られますよと、これはものすごく大きな魅力です。それから、ここに来れば、山がすぐ見えるじゃないですか。海もすぐ近くできれいです。魚釣りに行ったらよく釣れる、というふうな自然環境が保障されたよい生活ができます。
文化という点でいえば、我々のところは、歌舞伎もあれば、相撲もあり、ヤフードームの野球もあります。シンフォニーも世界的なものがよく来ています。韓国から韓流が山のように来ている。一昔前の言葉で言うアメニティー、生活の質の面で、東京で得られないものを私たちは用意できます。
2007年05月24日 13:47
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