福岡県知事の主張 第5話:「国は世界標準の戦いに徹するべき」

麻生 渡 (福岡県知事)
あそう・わたる
![]()
1939年生まれ。63年京都大学法学部卒業後、通商産業省(現経済産業省)入省。通商政策局国際経済部長、近畿通商産業局長、商務流通審議官、特許庁長官を経て、95年福岡県知事に就任(現在4期目)。05年からは全国知事会会長を務める。
全国知事会会長として、地方分権推進の先頭に立つ一方で、県立病院の民営化や、民間の発想や専門的能力を県庁に取り入れる「人材ハイブリット県庁」への転換など、時代の変化を洞察した創造的な県政を展開している。
国は世界標準の戦いに徹するべき
道州制についてですが、最終的には道州制になっていかざるを得ないし、私の先ほどの多極創造力拠点というものを考えた場合にはやはり道州制だと思います。
その場合、考えるべき道州制は分権型じゃないと意味がない。そこに統合力を持って、まさに我々はどんな教育をつくろう、どんな大学をつくろうということから始めて、どんな文化をつくっていくんだとか、相当広くアジアとの関係はどういうふうに構築していこうとか、そういうことをやれる分権でないとだめです。それも国にただ求めるのではなく、自分たちでそういう地域経営の構想や意志を持つことです。
私が分権なり道州制を必要だと言っていることのもう1つの大きな理由は、実は日本の国はこのままではいけないと思っているからです。なぜいけないかといいますと、東西の壁が破れた後、世界は本当に変わったわけです。変わってグローバリゼーションで一体化したのですが、そのときに私たちの繁栄のために何をやらなくてはいけないかというと、要するに、世界標準の戦いになったんですよ。例えば会社運営のルールはどうするのかとか、裁判制度はどうしたらいいかとか、高齢者をどういうふうに社会は遇すべきかとか、あるいは環境問題とか、そういうようなことで、私がかつて通商産業省(現経済産業省)担当していた特許なんかは典型的にそうなんです。そういう意味で、世界標準にどの標準を使うのか。会社法は日本型でいくのか、アメリカ型でいくのか、ドイツ型でいくのかというような戦いになったわけです。それをもっと国はやらなくてはならない。あれだけの人材を持っているのだから、世界と世界標準を戦う、普及させるということにもっと取り組まなくてはいけない。
だから、国家公務員は、世界標準の戦いにどれだけ日本が登場してやりきるかということに目標を置くべきであって、地方をいろいろ金をやるからどうしろ、ああしろとか、そういうようなことはもういらない。日本は「標準局」とかそういうものをもっと強化しないといけない。今、業界の人たちが嘆いているのは、世界標準を巡っていろいろジュネーブでやっていますが、よその国は一生懸命役人が出てきてやっているのに、一番、日本政府が応援してくれないことです。だから、国家のあり方を考えて、本当にやるべき国家の仕事は変わったのだから、国はその仕事にシフトすべきなんです。
地方のことは地方に任せればいいのです。国の役人はあれだけ優秀なんだから、それを世界に向けて戦わないともったいないでしょう。
私たち知事は別にびっくりするようなことを言っているわけじゃないんです。地域を自ら経営するから、国は余計なことを言わないでくれと。
自らやるからと私たちが言っているのは、その方が仕事が進むからです。例えば今、国中の課題は少子化でしょう。少子化の場合に、子育て応援はどうやるかということですが、子育て応援の非常に重要な要素は、核家族になっているから、赤ちゃんを育てるのはどうしたらいいか家庭もよくわからないんですね。だから、子育てを応援するセンターをつくって、風邪を引いたら、それはこうしなさいとか、たんこぶができたら、それはほったらかしても大丈夫ですよということを教えないといけない。そのセンターをつくれというわけです。
それはそのとおりなんですが、国がやると「センターとは何か」と定義してしまうわけです。こういう場所が必要なのではないか、こういう人間を3人揃えなくてはいけないとか、そういうことばかりやるわけです。だけれども、本当に必要で、一番大事なのは、子育てセンターに誰が座ってアドバイスするのかとか、一生懸命やってくれて、みんなから信頼される人はここに誰がいるのかということから考えなければいけない。そして、この人が本当にやってくれるためには、場所を用意してやればいいのか、あるいは3人ぐらいのアシスタントがいるのかなど、逆算して考えなくてはならないのです。
ところが、それは地方だからこそできるのです。人間中心に考えられますから。東京は人間の顔が見えないから、形から入ってくる。だからどうしても全国一律の形になる。これは、費用の面でも非常に無駄が多いし、実際にはサービスの満足度が低くなる。今みたいに少子高齢化という非常にきめ細かい、高齢者のお世話を毎日どうしたらいいかということを行政が考えることが、非常に重要になったときには、地方にやらせた方がはるかに効率的で、予算も安い、かつ満足度の高いことをやれるわけです。だからこそもう地方に任せなさいといっているわけです。
2007年05月25日 13:47
前の記事:大阪府知事の主張 第3話:「アジアの中の”グレーター大阪”」
次の記事:大阪府知事の主張 第4話:「対東京で何が”強みか”を見極める」







