'07参議院選挙 有識者の評価 / 「年金・社会保険庁」編 西沢和彦氏(日本総合研究所主任研究員)
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西沢和彦(日本総合研究所主任研究員)
にしざわ・かずひこ
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1965年東京都生まれ。89年一橋大学社会学部卒業。98年さくら総合研究所(現日本総合研究所)主任研究員を経て、2001年日本総合研究所調査部主任研究員となる。2002年法政大学修士(経済学)。専門分野は社会保障、税・財政。著書に『年金大改革―「先送り」はもう許されない』(日本経済新聞社、2003年)など。
年金問題はその背景の本質論に早く踏み込むべきだ -3-
高齢者医療費の財源をどうするか
医療制度改革は、安倍政権の中では終わったと思っているのでしょう。2002年に小泉政権下で行われたのは、診療報酬の引き下げと自己負担の引き上げ、そして保険料の引き上げでした。これによって病院側も保険者も患者も、金銭的な負担を負うことになりました。それまでは医師会の抵抗が強くてなかなか診療報酬の引き下げまでに至りませんでした。そこで、本体そのものにも切り込んだのが三方一両損ということでした。
診療報酬の引き下げは医療費の抑制に、保険料の引き上げは財源手当て・自己負担の増加によって、給付減につながります。医療費は給付と自己負担で構成されていますから、国の給付する割合が小さくなるわけです。
ただ、当初からずっと言われてきたのは高齢者医療費をどうするかという点です。医療費の約3分の1を占める高齢者医療費は現役の健康保険組合などからの老人保健拠出金で賄われていますが、これが各健保の財政的な負担になっています。高齢化が進み、老人保健拠出金がますます増え、健保の財政は厳しくなるということで幾つかの制度改正案が検討される中で、次期制度改正までに老人の医療費制度についての抜本的な見直しをする附則が2002年の改革時に付きました。
それが2006年改正の結果として来年4月から後期高齢者医療制度としてスタートしますが、最も批判が集まる部分は、高齢者だけを切り離して独立の保険制度をつくってしまったという点です。リスクの多様な人が入るから保険ができるのであって、リスクが高く支払い能力の低い高齢者だけを取り出して保険集団をつくって、果たして保険なのかという疑問があります。
もう一つは、後期高齢者医療制度をつくって、現役の健康保険組合から後期高齢者支援金という形で費用を出すことになりましたが、実質的には老人保健拠出金と同じことです。ここからはかなりテクニカルになりますが、老人保健拠出は今まで各健康保険制度の共同事業として運営されており、理屈がありました。ところが、後期高齢者医療制度は全く別に切り離してしまったため、支援金という名前で巨額のお金を出させるというロジック(論法)は、非常に弱いのではないかという指摘があります。本来であれば、税制改正と一体になって高齢者医療制度をどう賄うかといった議論があるはずでしたが、厚生労働省だけで、かつ一般会計の財源制約が厳しい中で行ってしまった高齢者医療制度ですから、支援金という不透明な形で決着してしまいました。
また、後期高齢者医療制度では、保険料を決定し、徴収し、給付して、保険料があまり上がらないように給付を抑制するという、全体をつかさどる立場である保険者がいません。保険者がいない中で、果たして給付抑制なりが適切に行われていくのかといった懸念もあります。
今度の参議院選挙で、本来医療問題で問われなければいけない問題は、2006年に改正をしたものの、依然として一般会計に約3分の1の財源を依存し、一般会計が毎年20数兆円の赤字を出しているという構造が全く変わっていないことです。この構造を変えないまま医療サービスの供給のみを前面に出しても、その実効性は乏しいでしょう。したがって、マニフェストでは、医療問題を常に財源とセットにして語らせるべきだと思います。
2007年07月05日 13:54
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