'07参議院選挙 有識者の評価 / 「NPO・公益法人/構造改革特区/市場化テスト」編 田中弥生氏(大学評価・学位授与機構准教授)
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田中弥生(大学評価・学位授与機構准教授)
たなか・やよい
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独立行政法人大学評価・学位授与機構 准教授
(株)ニコン、笹川平和財団、国際協力銀行、東京大学助教授をへて現職。国際公共政策博士(大阪大学)、政策メディア修士(慶応大学)。
財政制度審議会臨時委員、日本NPO学会副会長。外務省ODA評価有識者委員、内閣府公益法人制度改革委員会有識者委員、政府税制調査会特別参考人、参議院行政改革委員会 参考人などをつとめる。
専門は非営利組織論と評価論。ピーター・F・ドラッカー氏に師事。
主な著書に『NPOと社会をつなぐ ~NPOを変える評価とインターメディアリ~』(東京大学出版会 2005年)
NPO
最後に、もう1つ、NPOの問題ですが、社会的使命や意思はありながらも公共サービスを担える力が不足しているという問題がありました。それに対して安倍政権は初めの政権構想で、そういう公共の担い手となるNPOをバックアップしますと、アジェンダを非常にはっきりさせていまして、それは適切であったと思います。しかし、その後、そうした姿勢が見えなくなってしまいます。マニフェストにも、どのような非営利セクターの将来像をめざすのか、この点について全く書かれていませんでした。ということは、現政権は、公の担い手としての非営利セクターに対して余りご関心がないんだろうなというふうに私には受け取れたので、がっかりしました。
一方で、非営利セクターの現状はどうなっているかということなのですが、確かに行政からの発注、例えば指定管理者制度、それから介護保険でも担い手となるNPO法人がずいぶん出てきています。しかし、その実態は非常に苦しい状況で、これはNPOの方々の経営技術が、力量がないと言われればそれまでなのですが、実際に委託を発注している側の官側にも原因があると私は見ています。
実際にヒアリングをしてみますと、大型の施設を委託するにしても、行政職員の給与分を全部差し引いて、そして事務局長の給与を年間200万円ぐらいで受託しろというようなケース、非常に安く買いたたくというケースが出てきています。それから、介護保険も確かに問題が出てきています。昨年の介護保険の改定等々で、とても運営をできるような収入が得られない構造になってしまいまして、とてもあの制度だけでは採算が合わないという状況にまでどんどん事業費を削られている状況です。
こうまで事業費を削られると、経営母体が一番脆弱なNPO法人は、多分真っ先に打撃を受けるのではないかと思います。官から民へという考え方は日本の現状、将来を考えれば必然だと思います。しかし、官から民への仕事の移し方にも見直しをする必要があります。また、担えるだけの財政的、または運営基盤が育っていないNPOにおいても、何が課題で、どう育成していくかということを制度設計に入れ込まなければ、官から民へという流れは成り立たないと私は思います。
去年9月の総裁選挙のとき、安倍政権が歴代の政治家で初めてだったのですが、官と民という問題をかなり重要視して、説明していました。しかし、それは9月の所信表明演説までで、その後は一気になくなります。特に大きく変わったなと私が感じたのは、1月に出された「進路と戦略」からです。それ以降、どんどん美しい国路線、コミュニティー再生路線に走っていきます。そういう意味では、去年9月に出された政策は、もしかすると安倍さんではない方が書かれていた可能性もあるだろうと思います。
官から民へ、それから新たな公共の担い手というのは、実務者の間でも研究者の間でも、流行とも言えるほど高い関心事になっていたのに対して、肝心の政治家の方が一挙に冷めてしまったかなというのが今回のマニフェストを見た私の感想です。
また、今回のマニフェストでもそうなのですが、NPOの問題では、寄付税制、つまりNPOを支援するために寄付条件をかなり緩和するという議論がいつも出ます。
しかし、NPOセクターを育成するための手段として、これが必要十分条件とは思えません。寄付というのは、多分大口の寄付と、それから小口の会費や寄付で成り立っているのですが、大口の寄付というのは、言わばピラミッドの上の方です。ピラミッドを支えているのは下のほうの小口の寄付です。この小口の寄付をいかに増やしていくか、循環させていくか、というのが寄付をマネージする一つの方法です。
しかし、税制優遇措置は大口の寄付、例えば遺贈等々には寄付税制は効果があるのですが、小口の寄付の方たちにとって税制優遇というのはそれほど効きません。むしろ小口の寄付の方たちに関しては、彼らといかにコミュニケーションをとっていくか、寄付をしてもらった後でどのようにケアをするか、そちらの方が重要になってきます。こうした努力をしないで寄付税制によって問題が解決するとは、私には思えません。これがまず1点です。
もうひとつは、制度を司る論理の立て方の問題です。自民党マニフェストの該当箇所の前半部分では、寄付税制優遇団体をふやすために認定要件の緩和をするとあります。一方、後半部では、信頼性を担保するために情報公開制度を検討すると書いてあります。
しかし、認定要件を緩和するということは、NPOのガバナンス要件を緩和するか、もしくは収入全体に占める寄付比率を減らしていくかのいずれかしかありません。ガバナンス要件を緩和すると、NPO制度そのもの、法人制度そのものの信頼性というのがおのずと減っていくわけですよね。他方、寄付比率を減らすことの問題です。寄付をした人というのは、ある種NPOを監視するという機能も担うわけですけれども、そこの数を減らせば減らすほど監視機能は減っていくわけです。マニフェストに書かれている前半と後半は、厳しくみると論理が背反するところがあるのではないかと思います。
NPOは、阪神・淡路大震災直後、NPO法ができるまでは、国民の信頼とか関心は高かったんです。しかし、それ以降、暴力団等々の不祥事の問題も少しずつ増えています。それから、合法的に活動はしていても、まさに自分たちの利益のためだけの共益団体等々も増えています。結果として、NPOセクター全体の姿が、複雑になっていてよく見えなくなってしまっています。こうした点が、信頼性を失いかけているというんでしょうか、以前の勢いをなくしている原因になっていると思います。
2007年07月08日 13:54
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