言論NPOの評価作業について
マニフェスト評価の意義
マニフェスト評価による有権者への判断材料の提供
私たちは、小泉政権が誕生して以降、これまで3回、小泉政権の実績評価と各政党のマニフェストの評価を行い、その内容を公表してきました。
政権公約を国民との契約という視点で考えれば、その契約の履行を果たすのが政治の責務であり、約束(契約)を曖昧にした政治に対して、国民は投票という手段で明確な意思表明をしなければなりません。私たちが、民間の中立的な立場でマニフェストの評価を行うのは、選挙で政策本位の政権選択を問うためにも、政党側と私たち国民との間に常に緊張感ある関係を構築することが重要だと考えたからです。それは、政党側に安易で不明瞭な公約を許さず、その達成を適宜適切に評価、公開し、その実行を国民が恒常的に監視するための仕組みを作る作業です。私たちは有権者にその判断材料を提供するために評価を公表することにしました。
マニフェスト評価の体制
私たちはこうした評価作業を各分野の専門家の協力を得て行っています。マニフェストの各分野における政策の実行過程の検証、点検作業は定期的に行われ、政策決定当事者や関係者、専門家へのヒアリングを踏まえて評価原案は作成され、同時に行われる有識者アンケートなどの結果や評価会議などの議論を踏まえて評価が確定します。こうした作業には毎回、のべ100人を超す人が参加しています。
これまでの評価を通じて分かったこと
未だ有権者との契約にはなっていない
私たちが行った小泉政権のマニフェスト評価は2005年の総選挙も含めてかなり厳しいものとなりました。数値採点の公表を見送った第1回目の評価を除けば、第2回目と第3回目は、マニフェスト自体の曖昧さのためいずれも「不合格」となりました。目標や理念が不明確で、政策体系や優先順位などが描かれておらず、「不合格」というよりも、現時点ではマニフェストが外部から評価する水準に至っていない、というほうが正確です。
私たちは、政党のマニフェストが国民との「契約」に発展することを期待し、マニフェストの妥当性を重視し、敢えて厳しい評価基準で採点を行っています。マニフェストは、現段階では国民との「契約」とはなっておらず、まだ政党の選挙戦術に使われただけの粋を脱していません。私たちはこれまで3回小泉政権の評価を行ってきたが、いずれも厳しい内容となったのはこうした状況を反映しています。この間、選挙公約は政権公約としての形式的な要件が整い、改善が進んだのは事実です。マニフェストには実現すべき政策の理念や目標とそれに対する施策体系が描かれ、それらが評価可能な形で明示的に示されることが必要です。
小泉政権の5年の間にはっきりしてきたのは、戦後の持続不可能となった制度やシステムの解体だけでなく、再設計し作り上げる作業の重要性です。特に社会保障や国と地方の関係も含め、日本の戦後の公的システムを超高齢化と人口減少社会でも持続可能なものに全面的に見直すこと。それが第2期以降の小泉改革に問われた待ったなしの課題ですが、小泉改革はそうした課題に積極的に回答を出そうとしたわけではありません。
小泉内閣は歴代政権とは異なり一貫として歳出を抑え、財政の規律を取り戻しましたが、それでも国債累増に陥ったのは、社会保障関係費や国債費の増加を抑えられないためです。これらは景気の回復には答えがなく、構造を再設計し、作り直すしかないことを示しています。しかし、年金改革では給付と負担の上限を設け、マクロ経済スライドなどを導入することで公費の削減の仕組みは取り入れたが、制度自体の抜本改革は先送りとなり、三位一体の改革もスローガンや数字合わせの改革に終始し、それが地方の自立に繋がる道筋を描けていません。また、財政再建は増税の議論を回避するあまり目標設定や実行も甘く、再建に向けた戦略ビジョンもでき上がっていません。
これらがマニフェストの曖昧さに繋がっています。小泉改革は政党のあり方も含めてすでに持続可能ではない従来の戦後システムの解体を行った点では高く評価されますが、その再設計に対するビジョンを国民に提示できず、合意を形成する努力を怠っており、それを私たちは小泉改革の限界と考えています。これらの課題に答えを出すことが、現在、政治を舞台に始まっている、ポスト小泉の中で問われている政策課題となります。
![]()
2006年02月03日 16:37
トラックバック
このエントリーのトラックバックURL:
http://www.genron-npo.net/mt/mt-tb.cgi/103
トラックバックルール
工藤ブログおよび言論ブログへのトラックバックは、基本的に歓迎いたします。
ただし、スパムや内容的に不適切と言論NPOが判断した場合は、予告なくトラックバックを削除させていただくことがありますので、ご了解ください。また、トラックバックいただいた文章につきましては、当方から本文中に引用させていただく可能性がございますので、予めご了承ください。
前の記事:マニフェスト評価に関して
次の記事:マニフェスト評価について / 評価基準
コメント
コメントしてください
(戴いたコメントは担当者が選択し掲載させていただきます。)






