2007年07月02日
総評 / 安倍政権9ヶ月間の「実績評価」・'07参議院選挙 3党の公約の「総合評価」はかなり厳しいものになりました
![]()
言論NPOが行った、「安倍政権の実績評価」と「各党のマニフェスト評価」の結果を公開します。今回の評価は、小泉政権の3回の評価に続く4回目となります。
私たちが行ったのは、安倍政権の9ヶ月間に及ぶ実績の評価と、自民党、公明党、民主党の3党の公約(マニフェスト)の評価で、実績評価は憲法、成長政策、年金など20分野、公約評価は18分野について、言論NPOの評価基準に基づいて評価を行いました。総合点はいずれもこの分野合計の平均値で算出しております。
また、この評価結果は7月1日に行われた21世紀民間臨調の政権公約評価大会で公表しました。
![]()
安倍政権の実績評価は39.35点
安倍政権の実績評価は総合点で100点満点の39.35点と4割にも届きませんでした。小泉政権が誕生した後の初の評価が60点だったということと比較すると、安倍政権の立ち上がりはかなり厳しい評価となります。
内訳は「実績」が40点満点で16.3点、「実行過程」は30点満点中15.25点、「説明責任」は30点満点中7.8点となります。特に実績と説明責任に対する評価が低くなっています。
政策分野では特に低い評価となったのは「政治とカネ」の16点で、また「憲法改正」は24点、「NPO政策」は27点、「経済成長(成長政策)」は29点、「年金・社会保険庁」と「医療」がそれぞれ33点となっております。これらはいずれも安倍政権の中核的な政策課題であり、そこでの評価が厳しいものとなっています。逆に最も評価が高かったのは「地球環境」の57点、「少子化対策」の56点、「農業・食糧」の55点、「公務員制度改革」などの50点でした。
この評価の区分は、21世紀臨調の区分に合わせたものです。言論NPOではこの「実績」「実行プロセス」「説明責任」の三区分のほかに、プラン自体の評価を組み入れた「政策課題の妥当性」の評価も行っていますが、それは評価区分の比率を変えただけで、総合点は同じ結果になっています。
安倍政権の政策運営の評価は40点
これとは別に、私たちは安倍政権の「政権運営に関する評価」(政権公約のサイクル形成に関する責任と政治主導体制の仕組みと運用)は100点満点で40点と評価しました。
この政権運営に関する評価は、21世紀臨調の評価大会で追加された評価項目でした。これをどう評価したのか、ということに対しては、評価大会で代表の工藤が次のコメントを行っていますので、説明はそれに代えたいと思います。
安倍政権の「政策運営に関する評価」ついては
①政権公約のサイクルに関する責任と
②政治主導体制の仕組みと運用
に分けて評価を行っています。以下、言論NPOのコメントです。
安倍氏の政治運営や政策実行には二つの制約が課せられている。一つは自らの公約の履行であり、さらに前政権の公約の制約である。安倍氏の政権基盤は前の郵政解散での大勝を背景にしたものとの前提を考えれば、前政権が国民と合意した公約との大きなかい離には説明義務が問われる。この点で、首相就任後の郵政造反組の11人の復党は問題がある。
安倍氏は「美しい国」の実現を政権構想とそれに続く所信表明などで具体化している。形式的にはこのサイクルは成立しているが、所信表明以後の施策の展開が初期の政権構想時の目的や理念上の展開から外れ、あるいは別のものと変わっていきながらその説明を曖昧にしていることがある。
基本的に美しい国の具体化の政策体系が、前政権の小さな政府との間で整合性が取れておらず、マニフェストサイクルがある意味で部分的にも途中から断絶した可能性もある。
また経済の課題では人口減少社会では生産性を上げなくては現状のシステムを維持することは難しいが、経済成長は民間活動の結果おこるもので、政府の役割は成長基盤を構築することであるはずだ。ところが、安倍政権は希望的な数字は追いかけるが、骨太の方針が骨抜きになったように、その基盤、つまり労働市場や資本市場改革を抵抗を排しながら進めていくことに指導力を発揮していない。
これではオープンやイノベーションといっても小泉政権下で進めた改革の加速化は難しい。
官邸機能は補佐官を加えた会議が乱立しチームとして形式上は強化されたが、実質的には強化されていないばかりか混乱が目立った。前政権時の諮問会議のように首相を軸とした司令塔的な会議の存在が形骸化し、重複するテーマでの複数の会議の存在が指導性を弱めた。
官邸は国会議員を主体とした補佐官と主務大臣の関係の制度設計の問題があり、また官僚を使いこなせない政治主導の問題も顕在化した。官邸と省庁間の重複テーマでの会議の整理などの問題が放任され、議論の集約が国民の目から見えにくい。首相が国民に向かい合って約束を履行し説明する姿勢を欠いた。
また、安倍政権政策分野ごとの実績の評価やその理由については本日より順次公開していきますので、そちらをご参照ください。
![]()
|
||||||||||||
各党の公約(マニフェスト)の評価は、自民党が26.94点、民主党が27.88点、公明党が17.06点とかなり低い点数となりました。
30点以下というのは、公約としてまったく体をなしていない、ということです。
それではなぜここまで各党のマニフェスト評価は低いものとなったのでしょうか。
私たちの評価は、各党とも①形式要件②内容・実質要件(それぞれ40点の配点)を中心に評価を行い、さらにマニフェストの策定過程(20点の配点)の評価を加えてその点数を集計しています。
このうち形式要件と実質要件は言論NPOの評価基準を元に評価を行っています。形式要件とは、マニフェストが有権者との約束となるために必要な基準で①明確な目標設定②財源の裏付け③目標実現のロードマップが描かれているか、などを評価します。
実質要件とはその公約が本来、政治が取り組む課題として適切か(課題抽出の妥当性)、さらにその課題解決のための明示された政策手段などが適切か(課題解決の妥当性)、その課題解決のために公約は答えを出そうとしているのか(課題解決の指導性)を判断します。
その基準から評価を行うと、自民党の公約は155項目を公表しましたが、すべての公約がすでに政府で決まったり、検討が始まっている項目の羅列に過ぎず、目標や期限、財源などが示されず、従来型の公約に逆戻りした内容となっており、約束と言えるものではありません。
また消費税の問題も含めた税の問題は選挙後に先送りされ、公約では今年度中に税制改革を実現することだけしか語っていません。増税も含む税制など本来、有権者に問うべき内容は全て選挙後に先送りされており、明らかに説明不足です。これでは、選挙で有権者に選択肢を提示し、合意を得ながら政治を進める姿勢が乏しいと判断しました。
公明党のマニフェストは、 公約が生活視点で具体的で、政策集では進捗情報の説明を含めてまとめています。有権者との具体的な約束を軸とした公約の形態を維持していますが、全体がサービス提供型の約束で、その財源や具体的な目標やその実行手段を含めた説明はほとんどありません。
社会保障関係の公約を重視はしていますが、年金の本質的な制度改革などは基本的に終わったという立場で、医師不足も絶対数が足りないのか、摩擦的不足なのか、その課題認識と解決案が見えにくく、さらに、集団的自衛権など連立政権の上で論点になりそうな骨太の課題に言及がなく、政権与党としての説明責任が問われていると判断しました。
これに対して民主党はこれまで政権政策を争うマニフェスト選挙を主導してきましたが、今回は現段階で政策集と10本柱の重点政策しか公表していません。生活視点で対立軸を形成しやすい年金問題や格差問題などの10テーマに重点政策を絞り、分かり易い半面、財源などを明示できず、実効性に疑問が残りました。
例えば、教育では公財政支出5割増、中小企業への税支援、農業への戸別の所得保障、最低賃金引き上げに伴う中小企業へ支援などばら撒き項目が多いが、財源は明示していない。年金は税による基礎年金制度という制度案を前回の選挙同様唯一提示したが、現行の5%の消費税で賄えるとしているなど、その根拠で説明が足りない、などです。
全体的にばら撒き色が強く、日本の経済の体質強化の方向性が見えない。また、現時点ではマニフェストという言葉も使わず、マニフェスト型政治の実現からは大きく後退し、前回選挙から政策内容もそう発展していません。
こうした評価基準に伴う判断から、3党の公約の評価は厳しいものとなったのです。
日本の政治は「約束」を軸にまだ回っていない
ここで、私たちが皆さんに考えていただきたいことは、そもそもマニフェスト選挙とは何か、ということです。
それは有権者との間に、「約束」を軸に日本の政治が回る仕組みをつくろうということです。
選挙では政党の約束が問われ、政治はその約束の実行に責任を果たす。そうした緊張感ある関係が、日本の政党と有権者との間で必要だと考えたものです。
私はこの約束を一歩進めて、国民との契約という関係が政治との間に必要と考えていました。
約束であるならば、そこでは抽象的なスローガンではなく測定できる目標の明示やそれを実現するロードマップや時期、財源などの実効性を担保する手段が書かれなくては、有権者は信用できません。
つまり、従来までのスローガンや課題の羅列のような公約ではなく、そうした約束がしっかりと書かれ、かつその実行に責任を持つ政治が、この間、この日本でも問われ始めたのです。
ところが、私たちは安倍政権になってこうした約束のサイクル、さらには約束することで政治を運営するという姿勢自体が崩れ始めているように思います。
こうした曖昧な公約が許されるのは、有権者側のカウンターバランスが崩れているからだとおもいます。こうした選挙への後戻りを許してしまうのか、どうかは私たち有権者側にかかっていると思えるのです。
日本の政治は来週に迫った参議院選挙告示に向けて動き出しています。
私は7月1日の評価大会で公約を書き直して提案するべきと提案しました。それは、有権者との間に約束が何も形成されず、また有権者は本当は判断をしなくてはならないことが、何も提起されないまま、選挙に入っていくことは、民主主義の観点からも許されないと判断したからです。
これからの政治の議論の推移を私たちは厳しく見守りたいと思います。






