2007年参議院選挙 「医療」に関する各党の「マニフェスト評価」
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「医療」に関するマニフェスト評価
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評価の視点
医療問題の解決は、財源をどう確保するかというマクロレベルの問題が解決しなければ本質的には何も進みません。
しかし、三党とも医療については医師不足対策や医療サービスの供給拡充などについてのミクロの各論レベルにとどまったマニフェストになっています。
若人に比べて5倍かかるとされる高齢者医療費が高齢化とともに急激に増大していくことは避けられず、現行制度の下では、医療制度の持続可能性は明らかに確保されていません。これまで、医療の持続可能性に向けた政策は専ら医療費抑制に向けられてきましたが、国民経済的には全体で約30兆円との日本の医療支出の規模は、そのGDPに占める比率でみて他の先進国に比べて低いという状況があります。
結局、医療費の負担は、保険料か税金か自己負担の3つの組み合わせの中からしか選択肢はないのであり、医療サービスの水準や質を高齢化社会の進展の中で確保していくためには、そのどこまでを公的負担で賄うかについて、政党は国民に選択肢を提示しなければならないはずです。
【医療システム改革の選択肢】
既に現状で顕在化し始めた医師不足の問題が、高齢化社会の進展で医療需要が拡大していくにつれ一層深刻化していく中で、いずれ医療制限が免れられなくなるという事態が懸念されます。
今後の医療システム改革の選択肢を描くとすれば、次の2つのいずれしかあり得ないことになります。
(A) 二階建て保険制度の導入をする
(B) 等しく国民が医療サービスの提供を受ける現行の公的国民皆保険制度のみでいく
のいずれかです。
二階建て保険制度とは、ナショナルミニマム部分は公的保険制度で賄うが、それ以上の部分は、混合診療を導入して、民間保険での選択に委ねる方法です。すなわち、相互扶助型社会システムの良い部分は残し、そのベースの上に、自己責任・選択型システムを乗せることです。それは継ぎ接ぎではなく、日本には優れた国民皆保険制度があるからこそ、それをベースに構築できるものといえます。
二階建て部分には、高所得層の民間資金が入り、それが医療の世界に入ることによって、全体として医療ニーズの拡大に対する財政的な裏づけがなされます。そこには、民間保険会社のビジネスチャンスや、新しい医療産業の広大なビジネスフロンティアも広がる可能性があり、日本経済の成長戦略にも資することになります。
確かに、この選択肢(A)については、「金持ち優遇」、「命に値段の差はない」、「全ての国民に同じ医療サービス」との現行公的医療保険の考え方の立場からの強い批判があるでしょう。しかし、(B)の道を続けていけば、国民が医療制限を受ける事態が到来するのは不可避だとすれば、この点を政治が国民に明確に説明した上で選択肢として提示するのがアカウンタビリティーだと考えます。
その結果として、量的な意味での「小さな政府」路線は修正し、消費税増税で路線(B)が選ばれるのであれば、それはマニフェスト政治の結果としてなされた国民の選択ということになるでしょう。
評価結果
総計 15点 / 100点中
1.形式要件 11点/50点中
■ 「理念や目的は書かれているか」 0点/10点中
理念・目的については、「日本型社会保障制度の構築」が医療分野にかぶさる理念に相当します。しかし、何が「日本型」なのか全く不明であり、マニフェストに掲げるべき理念・目的としておよそ意味をなしていません。
■ 「目標設定の明確性」 5点/10点中
目標設定の明確性については、
①地域の医師不足問題を解決すること
②救急医療を拡充すること
③国民が質の高い医療サービスが適切に受けられる体制を整備すること
④健康で安心できる国民生活を確保すること、の4つが提示されている。
しかし、③、④については、その中身を読んでみても、その達成が検証できるような具体的な目標設定になっているとはいえません。
■ 「財源の裏付け」 0点/10点中
財源の裏づけについては全く触れられていません。
■ 「ロードマップは描けているか」 0点/10点中
全体に個別施策の並列的な羅列であり、目標実現のためのロードマップが描かれているといえる項目はありません。
■ 「目標実現のための施策・手段の体系」 6点/10点中
施策の目的整合性や手段の体系性については、①、②は、緊急かつ明確な必要性に手当するための具体的な施策が盛り込まれていますが、③については内容が抽象的な作文の域を出ず、具体的な施策が見えてきません。
また、④については、がん対策、メタボリックシンドローム対策など、それぞれは必要かつ有効な対策を提示していますが、政策方針にとどまり、具体的な措置のレベルで約束しているものがみえにくいです。
2.内容(実績基準) 4点/50点中
■ 「課題抽出の妥当性」 0点/20点中
確かに医師不足対策など、掲げられたミクロのアジェンダは日本にとって喫緊の課題であす。しかし、上述のように、その本質的な解決に欠かせないのは、マクロでの財源論や制度論なのですが、そこには全く目が向けられていません。
制度の持続可能性に向けたミクロ対策として、安倍政権下でもレセプトのオンライン化などの医療の効率化に向けた施策が議論されてきたところであり、今秋には来年度の診療報酬の改定も議論されることになります。しかし、そうした公的給付抑制につながる施策に一切触れられていないことも、これから本格的な高齢化社会を迎える日本という国の責任政党として無責任といえます。
■ 「課題解決の妥当性」 4点/20点中
課題抽出が妥当でない限り、その解決の妥当性は評価できません。しかし、地域的あるいは特定診療科における医師不足問題など掲げられたミクロレベルの対策そのものについては、緊急対応策としての妥当性は認められます。
しかし、例えば、それらを講じるためには消費税率引上げが必要という文脈においても、財源論を明示すべきでした。
■ 「課題解決の指導性」 0点/10点中
選挙対策で国民負担増に触れたくないあまり、医療についての本質的な問題から目をそらし、前述のような選択肢の提示も行わず、その解決への道筋の提示を先送りしたことは、アカウンタビリティーの上で大きなマイナスです。
総計 31点 / 100点中
1.形式要件 25点/50点中
■ 「理念や目的は書かれているか」 7点/10点中
「国民の命に責任(命のマニフェスト)」とのキャッチフレーズはあるものの、理念・目的を述べるに足るメッセージかは疑問である。しかし、これをマニフェストの冒頭に持ってくることで、公明党が国民の命を守る政党であり、医療対策を何よりも重視しているとのメッセージが伝わってくる。
■ 「目標設定の明確性」 8点/10点中
目標設定の明確性については、①地域や産科・小児科の医師不足問題を解決すること、②がん対策を充実すること、③ドクターヘリを全国に配備すること、の3つが明確に示されている。
■ 「財源の裏付け」 0点/10点中
財源の裏づけには全く触れられていない。
■ 「ロードマップは描けているか」 3点/10点中
ロードマップについては、①にはなく、②についても、10年以内の「緩和ケア」の実施に達成時期の明示が見られる程度である。但し、③については、「5年以内に全国50箇所」が明示されている。
■ 「目標実現のための施策・手段の体系」 7点/10点中
施策の目的整合性や手段の体系性については、①~③とも、明快で分かりやすい具体的な個別施策の約束がなされている。
2.内容(実績基準) 6点/50点中
■ 「課題抽出の妥当性」 0点/20点中
基本的に自民党と同じです。
■ 「課題解決の妥当性」 6点/20点中
掲げられた施策は具体的であり、ミクロ対策の提示としてはマニフェストとして優れた点があります。しかし、基本的に自民党と同じ問題があります。
■ 「課題解決の指導性」 0点/10点中
基本的に自民党と同じです。
総計 21点 / 100点中
1.形式要件 17点/50点中
■ 「理念や目的が書かれているか」 0点/10点中
医療について理念・目的のレベルでの記載は見当たりません。
■ 「目標設定の明確性」 10点/10点中
目標設定の明確性については、産科・小児科やへき地での医師不足の解消を明確に提示しています。
■ 「財源の裏付け」 0点/10点中
財源の裏づけには全く触れられていません。
■ 「ロードマップは描けているか」 0点/10点中
上記目標に向けたロードマップはどこにも示されていない。
■ 「目標実現のため施策・手段の体系」 7点/10点中
施策の目的整合性や手段の体系性については、医師不足解消との目標に向けて、医師・看護師等の配置を適正化するための「緊急行動計画」の中身が問われます。
「女性の医師・看護師等が仕事を続けやすく、復職しやすい環境」は確かに医療従事者の不足解消の上で有効な方策の一つであり、そのための具体的な施策が掲げられています。「全ての地域で最善のがん治療、最新のがん情報」も具体的な約束となっています。
内容(実質基準) 4点/50点中
■ 「課題抽出の妥当性」 0点/20点中
基本的に自民党と同じです。
■ 「課題解決の妥当性」 4点/20点
掲げられているミクロ的な施策は妥当性ですが、自民党、公明党と比べて射程が狭いものになっています。基本的に自民党と同じ評価になります。
■ 「課題解決の指導性」 0点/10点中
基本的に自民党と同じです。
2007年06月25日 15:07
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