「外交・安全保障」に関する安倍政権の実績評価 点数の根拠 / 政策課題の妥当性
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言論NPOでは、これまでに安倍政権が行った政策の実績評価をしました。
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政策課題の妥当性 15点/30点中
形式評価 12点/20点中
評価のポイント
外交マニフェストについては、外交分野がそもそも相手のある問題であり、国際情勢も日々変動するものであることから、他の分野のように特定の目標を公約する等のマニフェストの性格にはなじまない面があります。
従って、外交マニフェストの役割は、
①現下の国際情勢と日本の置かれた状況について政権としてどう認識し
②その中で日本として国際社会や特定の国・地域との関係で何を実現すべく努力するかの理念を方向として明示し
③それに向けた方針を提示することにあり、それらの要素が体系性をもって満たされているか
が形式的な評価のポイントとなります。
評価の視点で見たように、「安倍マニフェスト」には全体として、ポスト小泉外交の課題に即して、上記①、②、③に相当する内容が形式的には盛り込まれています。
例えば、①については、北朝鮮のミサイル発射を巡る一連の動きを踏まえて日本が「主張する外交」へと転換しなければならない局面であること(所信)、日本を巡る安全保障環境が大きく変化していること(施政)などが挙げられており、②についても、「基本理念」で触れた通り、イ.ロ.ハ.の3つの柱を提示しています。③の方針についても、外交マニフェストに入れるべき項目には一通り万遍なく触れられています。
【 外交政策の体系性が不十分 】
しかし、これは「安倍マニフェスト」を上述のように整理して初めて理解できるものです。現実の安倍マニフェストにはわかりやすい体系性がありません。
恐らく、この政権の外交の最上位のビジョンは、政権構想で示された「世界に信頼され、尊敬され、愛される、リーダーシップのあるオープンな国」であり、その下に最も色濃く出ている基本理念が、「主張する外交」です。しかし、それは安倍政権の外交が、いわば「国際社会の中で日本が強い国になることである」と言っているという印象を強く与えてしまい、不要な誤解を生む(誤解を排除する効果がマニフェストにはない)基にもなったといえます。
実質評価 3点/10点中
【「主張する外交」でどんな日本独自の価値を目指すのか提示するべき 】
個別の課題については、評価の視点でみたように
[1]対米協調路線が色濃かった小泉政権の成果を進め
[2]日米同盟一辺倒だった小泉政権のもたらした歪みを修正し
[3]小泉政権では実現できなかった課題に取り組む
という、安倍外交マニフェストに盛り込むべき内容が、インプットとして盛り込まれているという意味でほぼ適切といえます。
しかし、体系性・論理性の不備は、[1]~[3]を通じて安倍政権が全体として何を目指すのかを分かりにくくしています。
例えば、「戦後レジームからの新たな船出」をする「美しい国」を掲げ、憲法改正や集団的自衛権の問題解決と「主張する外交」を唱える安倍政権は、まずは日本が主体性のある強い国になって、その上で、日米関係をパートナーの関係とし、アジアなどとの連帯を強めるとの、第三の道を路線選択している印象をもマニフェストは与えています。ここには[2]の歪みの修正の要素が強く出ており、2つの軸の間で政権の性格を読みにくくさせています。
【 安倍マニフェストが応え切れなかった重要課題 】
以下は、安倍政権がその課題設定の段階で直面していた日本の外交・安保政策の課題です。安倍マニフェストは、その多くに応えていませんでした。
イ)日米同盟の次に来るもの
安倍政権に求められたのは、小泉政権に欠けていた基本的な外交戦略ビジョン(日本の国益のためにどのような国際秩序が望ましく、そのためにはどのような国とどう組んでいくのか)をもう少し明確に国民に説明しつつ、外務省などの各省庁や周囲のスタッフの知識を吸収し、アメリカ、中国、東南アジア、あるいは欧州などとの関係の構築にリーダーシップを発揮していくことです。
日本には、日米同盟をグローバルパートナーシップの関係にまでバージョンアップするとして、その上で、日本が世界で何をしようとしているのかが問われています。日米で共通の戦略目標をつくり、実質的なオペレーショナルな面での安全保障協力は着々と行っているという意味で、日米関係は基本的に次の時代へと動いています。次の動きは、他の大国間関係、国際関係全体を見通した中で、日本がどうポジショニングをとっていくかということになります。しかし、現段階では、最後の国際社会のところが不明確で、内容が詰められていません。
ロ)戦後レジームからの新たな船出
安倍総理が政権構想において国連安保常任理事国入りとともに「戦後レジームからの新たな船出」を掲げたのであれば、まず取り組むべき課題は、国連憲章の改正だったのではないでしょうか。国連が体質改善をして、もはや第2次世界大戦の延長線上に国連があるのではなく、第2次世界大戦との連続性を切るという形で国連が憲章を改正してからこそ、日本は安保理に堂々と入るのが筋で、入って既成事実をつくってから、集団的自衛権もやむなしというなし崩し的な改憲論議は、手続的に適切ではありません。
また、海外からみた安倍総理には元々、ナショナリストというイメージがあり、周辺国や世界に対して警戒心や不信感を持たせるようなナショナリストではないという点にいかに説得力を持たせるのかという点が、戦後レジームからの転換を円滑に進める上での課題となります。
この点では、時に「強い」姿勢も必要ですが、日本の国際社会での存在感を高めるために、安倍政権はむしろ、国が自らの利益のために動くことが日本の利益にもなるような場をつくるという、日本の強さを活かし、「リーディング・フロム・ビハインド」という背中を押すようなタイプの外交手法をより一層進めていく方が現実的ではないでしょうか。
「強い国」を標榜するとしても、日本の影響力は基本的には少子高齢化の進展とともに弱まる傾向にある中で、それを補う何かを見極めることが安倍政権の課題です。
ハ)安全保障政策と軍事力の位置づけ
日本の外交力の弱さについては、「強い、主張する」といった姿勢や気概の問題ではなく、日本が戦後、日米安保の最大の利益享受国であり、日米安保に甘え、それがラクであったがゆえに、マルチな関係に十分な対応を行ってこなかったことに一つの大きな原因があります。
その中で最も問われているものの一つが、日本が国際社会のプレーヤーとして動く上で必要な軍事力というコンセプトをどう位置づけ直すかという点です。その際に必要なのは、現在の日本を取り巻く国際環境の中長期的潮流と、日本が国際社会の中で有する強さや弱さを見極めた上で、まず日本としてどのような国を目指すかを描き、日本の国益を再定義することです。そして、それを実現するための外交関係のあり方を論じ、その下に日本の軍事力のあるべき位置づけを見出すという順序での作業が必要となります。
その際に踏まえるべき視点は、軍事力を巡る国際的な潮流の変化です。小泉政権の下で、日本の防衛政策が国際安全保障に大きくシフトし新たに再浮上してきたのが、北朝鮮問題や中国の台頭といった、領域防衛の伝統的な世界の重要性です。国際安全保障と領域防衛の両方の要請への同時対応を日本は迫られており、そこにどの程度資源を投入するかが新たな課題となりました。
それは、
①ダイレクトな日本防衛の所要
②国際平和協力ではあっても、ダイレイクトに日本の利益に関係する事態への所要
③国際貢献における「おつき合い料」
という3つの要素の間でどう資源配分を行い、何をどうするのが最もコストエフェクティブなのかを判断する作業といえます。
二)中東・イラン問題
中東には裏でつながっている3つ問題の問題、すなわち、①イスラエルとパレスチナの問題、②イラク問題、③イラン問題があります。いずれも日本にとって困難な問題である中で、最も日本として貢献できるのは、①である一方、③が大きな難題です。欧米にとっては、イランの核兵器所有はイスラエルに対する大きな脅威という点で、日本にとっての北朝鮮の核保有に匹敵する問題であり、イスラエルの安全保障問題に関連し、欧米がイランについては真剣(逆に北朝鮮に対して欧州は無関心、アメリカは手ぬるい)である中で、日本がどう対応するかが安倍政権には迫られています。
2006年12月05日 19:17
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