「郵政民営化」に関する安倍政権の実績評価 点数の根拠 / アカウンタビリティー
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言論NPOでは、これまでに安倍政権が行った政策の実績評価をしました。
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アカウンタビリティー 10点/30点中
【必要なパラダイム転換】
日本郵政が提出した実施計画などが公表されているため、それを仔細に読んでいけば、本評価で述べた郵政民営化の実態や、それが抱える課題は、ある程度は把握できます。しかし、評価の視点で指摘した①~③の論点で触れたように、それは各界関係者や国民に十分共有されていません。
例えば、郵政民営化のために必要な郵政事業の再生に向け、西川社長が自民党の集票マシンのイメージが強い特定局長へインセンティブ付与(自立性や人事制度など)を講じると、「改革の後退」と捉えられ、郵便事業の生き残りに向け金融機能の多角化を打ち出せば民業圧迫論が出るという現状があります。
これは、郵政民営化問題を見る思考の枠組みが、未だ前記の視点ア(政治論)や視点イ(小さな政府、行革論)に留まっていることを示しています。しかし本評価を踏まえれば、現時点の課題は、民営化→株式上場に向けて、郵政事業の再生をいかに達成するか、すなわち、視点ウ(民営事業の構築)へと、思考の枠組みは既に転換しています。
【民営化が直面する中長期的なジレンマ】
視点ウの立場から、株式上場までの思考パラダイムを確定させた場合、焦点は、民営事業としての郵便貯金銀行のビジネスモデル構築の成否に当てられることになります。そして、その成否の度合いに応じては、次の3つのシナリオが考えられます。
[シナリオ1]
民営ビジネスモデル構築が進捗しない中で、金融情勢の変動などにより郵貯銀行に資金ショートが発生。
⇒ この場合、郵貯銀行の国債売却、それがもたらす国債金利の上昇が郵貯銀行の財務内容をさらに悪化させるというスパイラル的現象により、郵政民営化そのものが頓挫するだけでなく、国民経済にも悪影響が及びます。
[シナリオ2]
郵貯銀行の業務多角化などの経営努力が郵貯の預金減少をオフセットする程度の成果を挙げ、現状が維持される。
⇒ 最も蓋然性が高いシナリオ。このときは、基本的に定額貯金などを集め、それを国債に運用する郵貯銀行のあり方が問われます。
そもそも民から官への資金の流れが問題とすれば、その原因は巨額の国債発行残高という官の側での資金需要の大きさです。むしろ郵政民営化で資金の流れを民に戻すことの本質的な意義は、郵貯の巨額な資産が民間の生産的な分野でのリスクテイクに向かうことにあるはずです。
[シナリオ3]
郵便貯金銀行が将来にわたって持続的に存続できるだけのビジネスモデルが構築される。
⇒ これは、郵便貯金銀行が銀行業として存立し、資産運用面でリスクテイクを行える状況です。その一つの理想的な姿が「地域に密着したリテイルバンク」ということになります。
この達成は中長期の将来になりますが、その時点で地方金融機関の経営が現状のままであれば、それは地方銀行にとっては明らかに脅威で、民業との競合問題が発生します。また。地域でのリテイルバンクに限らず、例えば、巨大に投資ファンドとして成り立っていく場合にも、民業との競合は問題になるでしょう。
このように、郵政民営化は、それが現時点で突きつける課題を解決しなければ国民経済的に大きな悪影響が生じ、逆に、それを解決すれば、中長期的に民業との関係で困難な問題を抱えかねないという、「ジレンマ」を内包するものであるといえます。
【必要な将来像の提示】
こうしたジレンマがあるとすれば、郵政事業の民間企業としての再生が成功した後に基本となる考え方は、既存の民間金融との競争的補完関係の構築だと思われます。そこでは、民営化された郵政事業が、地方銀行を含む民間金融と一定の競争をしながらその効率化を促すと同時に、ビジネス面で有機的につながっていく姿が望まれます。
これを可能にするためにも、民間金融の側で金融技術革新を進めるとともに、依然として経営が安定しない、地方銀行の再編や競争力の強化を進めておくことも必要です。
こうした官・民両者にわたる全体的な見取り図を描いてこそ、郵政民営化はその出口の解が描かれるはずです。それが現時点でなされていない以上、アカウンタビリティーが十分に果たされているとは評価できません。
また郵政事業は郵便局ネットワーク=長年官が蓄積してきた国民共通のインフラ、を有す事業です。安倍政権が「美しい国」を実現する要素に「官と民のパートナーシップ」を打ち出すならば、その下に、そうした官のリソースを「民」のセクターと有機的に組み合わせ、国民経済的メリットを生み出すことをアジェンダに設定すべきではないでしょうか。
2007年06月25日 15:07
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