by Google 運営者 お問い合わせ

 「公務員制度改革」に関する安倍政権の実績評価 / 評価の視点

「言論NPOの評価基準」をみる

言論NPOでは、これまでに安倍政権が行った政策の実績評価をしました。

詳細をよむ
詳細をよむ
形式評価
実質評価
形式評価
実質評価
形式評価
実質評価
7/20
5/10
7/10
6/10
7/10
6/10
12/30
13/20
13/20
12/30


評価の視点

 この分野は、以下の視点に基づいて評価を行います。

ア) 公務員定数是正の意味

イ) 全体システムの再設計

ウ) 公務員制度改革の理念の再構築

エ) 再就職あっせん禁止規制の問題点

オ) 再就職あっせん禁止規制の課題として問われるシステム設計


 公務員改革の分野では、量的な改革としては、小泉政権下で行政改革をプログラム化した「行政改革推進法」に基づき、総人件費改革を着実に進めることが安倍政権の課題となりました。一方、質的な改革としては、公務員制度改革を実効力あるものにするための必要な法案化が課題として残されました。

 このことを踏まえ、基本的な論点をまとめると、上記の5点になります。以下では、それぞれについて、概説を加えます。


ア) 公務員定数是正の意味


 政府部門の無駄を排除し、合理化・効率化に努めることは極めて重要で、どの時代にあっても追求すべき永遠のテーマです。しかし、日本は既に「小さな政府」を実現しており、 本質的な諸課題の中で、公務員の5%純減という定数純減目標がプライオリティーの高い課題かどうか、基本に立ち返って再考する必要があります。

 そもそも中期的な純減目標は、必要となる増員と、必要性の低下した部門の減員を差し引きして算出されるはずです。この作業に基づかない手法は、定数削減を行政管理局の論理(毎年一律に定員を削減する一方、行政需要が増加しているところには増員査定し、全体としてメリハリある定員管理)から、専ら財政当局の論理に一本化するものです。

 また、政府は、府省間での国家公務員の配置転換と採用抑制で純減目標の達成を図っていますが、これは当該部門の機能や効率性の確保にとってマイナス要素ともなり得ます。

 例えば、行政ニーズが高まっている専門性の高い部門において、農林統計等のニーズの低下した部門から中高年職員を大量に受け入れ、長い目で専門的な教育を施すべき新人の採用削減を突きつけられる場合が考えられます。こうしたリスクを払ってでも公務員の純減は優先されるべきか、それが本当に行政効率の向上につながるかは、再検討が必要です。

 求められているのは、政府の質的な機能を描く中から、具体的にどのような種類の公務員がどの程度必要か、公務員の定数を量って「簡素で効率的な政府」を描くことです。そうでなければ政府に行政機能を付託した国民に対して無責任ではないでしょうか。


イ) 全体システムの再設計

政府の質的な機能を確保するために、公務員純減を推進と並行して進める必要があるのは、日本の全体システムの再設計です。すなわち、行政に必要な機能の担い手が「官」に限られないとすれば、従来は官が担ってきた「公」の機能の担い手を「民」に求めることになります。しかし、その仕組みの構築は日本のシステムの組み替えを要します。

その意味で、政府が進めている「市場化テスト」には、一定の成果を期待できます。しかし、そこにあるのは市場原理で計った「効率性」という物差しであり、一方で「公」とは本来、「市場の失敗」の分野という本質的な属性を前提としているのです。

それに加え、21世紀の潮流はむしろ、「公正」や「安心・安全」といった要請や、社会基盤を支えるコミュニティーの再生、そのためのインフラ整備など、市場の外側にある部分での課題が突きつけられてきています。そこでは市場原理とは別の組み立てで「民」の「公」への「参加」を促すシステムを設計する必要があるでしょう。

また、地方に徹底的な行革を求めるのであれば、地方政府に依存した地方経済の組み立てそのものを改革し、自立的に「公」を担う民の力を養うことによって、地方に新たな受け皿を強化していく必要があります。

そのための仕組み設計に必要なのは、中央→地方、官→民といった縦軸ではなく、横軸の協働システムの構築です。中央-地方、官-民を超えた横軸横断的な協働システムの設計により、「公」を様々な主体が担い合う社会へとシステム改革を進めなければ、公務員純減を可能とするだけの「公」機能の受け皿は生まれないでしょう。

また、横軸横断的な全体システムの改革の必要性は、質的な改革についても同様です。官民交流の進展には実態として様々な障害が指摘されてきましたが、障壁の除去の実現には、人材活用や労働市場を巡る諸制度についての官・民を超えた横断的なシステム再設計や、官と民との関係についての抜本的な考え方の転換が必要です。

さらに、公務員の行動原理やモチベーションを突き詰めて考えれば、それは各公的領域で培った専門的な能力を、退官後に活かしうる再就職先の確保にあると言っても過言ではありません。とりわけ日本が超高齢化社会化する中、この点に明確な解答を示さない公務員改革は、官の士気や機能の低下、人材の劣化につながりかねない危険性すらあります。

確かに、霞ヶ関問題の大半は、現状では再就職の確保が専ら各省庁ベースでの組織の力に委ねられているところに淵源があるのは事実です。しかしこうしたネックの解消に必要なのは、公務員の高い能力を政府部門の外側で活かせるような、日本全体としての人材流動化と人材活用メカニズムの構築です

残念ながら、小泉政権はこうした視点を欠き、再就職=天下り=悪というネガティブな論理のまま、人材の有効活用と逆行する場当たり的な改革を進めてしまいました。それでは、公務員改革=出口なき公務員の閉塞状況にほかならず、必要な政府機能の確保に欠かせない公務員のインセンティブの構築には、本質的な限界があったといえます。

このように、官の人材も民の人材も各々が全体を構成する要素として、その有効活用を図ることにより全体最適化を目指すというポジティブなシステム改革こそが、安倍政権に残された課題となっていたはずです。


ウ) 公務員制度改革の理念の再構築

 以上の(ア)、(イ)を踏まえ、公務員制度改革の理念の再構築が迫られています。本来、公務員制度改革に求められていたのは、
 ・政治、特に総理のリーダーシップを発揮しやすい制度改革(マニフェスト型政治の定着という観点)
 ・行政目的の効率的な実現を確保できる制度改革(効率性の観点)
 でした。しかし、より重要なのは、

 ・今後の日本が必要とし、国民が求める「公」の機能を、新たな全体システムの設計の中で実現するために、公務員に何が求められるのかを明確化し、それにふさわしい公務員制度を構築すること
です。

 本来、公務員制度改革は「行政目的の効率的な実現」の手段に過ぎません。日本の将来に向けた全体ビジョンの下で設計される(ア)や(イ)の姿に基づいて、その改革を検討すべきものでしょう。

 例えば、政府の企画部門では、横断的な設計を通じて日本が今後直面する重要課題を企画・調整できるにふさわしいインセンティブを官システム入れ込むことが課題となります。一方、執行部門では、構造化された「市場の失敗」の拡大やリスク増大の中で、「労働基本権」を公務員に認めることが、本当に国民のニーズなのかどうか見極める必要があります。

 すなわち、全体システムは、単一の論理ではなく、それぞれ存在理由のある異なる論理によって構成されているのです。重要なのは、それらをいかに有機的に組み合わせて、相乗効果を生み、全体として生産性の高い効率的なシステムを設計するかです。ですから、安倍政権の課題は、これを踏まえた公務員制度改革そのものの再設計であるはずです。


エ) 再就職あっせん禁止規制の問題点

①公務員制度改革全体をどうするかが明らかでない段階で、能力実績主義の徹底と再就職規制の厳格化だけを先取りして実施することの妥当性

→ 公務員の任用や官民交流の将来的なイメージが確定していない中にあって、改革が目指す公務員像の実現に向けた現実的な道筋が見えていません。今国会での成立に執着しすぎていることもあり、このままでは参院選対策向けのポピュリズムとの謗りを免れなくなります。

  ②「新・人材バンク」の機能に対する疑問

→ 「新・人材バンク」では、各省ごとに行われているあっせんを内閣府に設ける「官民人材交流センター」に一元化し、一定期間後には各省による企業との直接の接触等は全面的に禁止することになります。

これまで、民間企業が公務員の再就職を受け入れてきた最大の理由は、省庁とのパイプを強化し、企業にプラスとなる情報や行政行為を見返りとして得ることでした。能力や識見を生かすならば、公共部門や公的要素の強い機関への再就職がふさわしいですが、特殊法人等への再就職も厳しく制限される流れにあります。

すると結局、民間側と公務員側の間で、公務員の再就職の道を探ることになります。しかしそこでは需給がマッチせず、マッチさせようとすれば、公務員側が従来より著しく低い条件を飲まざるを得なくなるという懸念は拭えません。

  ③以上の結果、現職公務員の士気が低下するとともに、従来公務員が持っていた職種としての魅力が薄れ、優秀な人材が公務の分野に集まらなくなるという問題

→ 従来公務員、特にキャリア官僚が公務に給与以上の「滅私奉公」を行ってきた背景には、それが所属省庁の人事当局の評価につながり、官房が待遇の良い再就職先を斡旋することで、将来の生活設計や個人的な豊かさを心配することなく、退官後も所得の上昇カーブが続くことが保証されていたという側面があります。

こうした構造がもたらしてきたインセンティブに十分代替し得るものがなければ、給与以上の「滅私奉公」をする官僚は限られてくるでしょう。公務の就職先としての魅力についても、野心の実現と公共的要請を両立させる形で優秀な人材を公吸収する仕組みが必要です。


オ) 再就職あっせん禁止規制の課題として問われるシステム設計

 以上の相互に密接に関連する問題を克服するためには、今般の改革の基本的な設計思想に照らした課題設定が必要です。公務員制度については、

 ①官と民はおよそ異なる世界であり、公務で培われた能力は極力、官の分野で活かし続けることが人材の有効活用としても本人のためにも望ましい

 ②官と民が同じ土俵で相互に出入りし合う関係となることにより、人的資源の最適配分が実現する

 という2つの両極の考え方があります。明確に②を志向する今般の改革が機能するには、官と民の間で人材マーケットが成立し、共通の人材評価基準が確立していることが必要です。それを通じてマーケットで正当に評価されることで、プロとしてのインセンティブが形成され、改革の趣旨である、官民の人材の前向きな流動化が実現されます。

 そのためには、公務の「能力主義」の内容を、マーケットに通用するプロフェッショナルなものに組み立てることが必要です。それには終身雇用制を見直すなど、民間側の変革も不可欠で、全体の変革を待つだけでは、改革は進みません。ここに、日本の全体システムの組み換えのビジョンの中で公務員のあり方を位置付け直すべき大きな理由があります。
 全体として安倍政権は、小泉政権の構造改革路線の継承を標榜しつつ、それがもたらした歪みの修正、さらには政府の役割の強化に踏み込もうとする政権とみられます。しかし、そのスタンスが具体的な政策体系として現われるには、まだ至っていません。参院選に向け、新たな政策ビジョンと財源措置とを両建てで示すことが求められており、消費税増税論議につながることを恐れてそれを回避するならば、マニフェストは有権者との契約として機能しないものとなるでしょう。


coming soon....

「安倍政権の通信簿」を購入する


2007年06月25日 15:07

前の記事:「農業・食料政策」に関する安倍政権の実績評価 / 評価の視点
次の記事:「地球環境」に関する安倍政権の実績評価 / 評価の視点