「憲法改正・国民投票法」に関する安倍政権の実績評価 点数の根拠 / 政策課題の妥当性
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言論NPOでは、これまでに安倍政権が行った政策の実績評価をしました。
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政策課題の妥当性 7点/30点中
安倍政権の掲げた課題
政権構想では、安倍政権の最上位の理念と位置付けられる「政権の4つの基本的方向性」の一つの柱である「文化・伝統・自然・歴史を大切にする国」の中身の冒頭に、「新たな時代を切り開く日本にふさわしい憲法の制定」を掲げています。政権成立時から既に、安倍政権の第一のアジェンダが憲法改正であったことがここに示されています。
そして、所信表明では、「現行の憲法は、日本が占領されている時代に制定され、既に60年近くが経った」として、政権が憲法問題について重視している論点を提示し、「与野党において議論が深められ、方向性がしっかりと出てくることを願う」、「まずは日本国憲法の改正手続に関する法律案の早期成立を目指す」とし、改憲に向けた議論の醸成と手続きの整備を当面の課題として確定しました。さらに、施政方針では、「日本国憲法の改正手続に関する法律案の今国会での成立を強く期待する」として、国民投票法案の成立に課題の照準を絞る形となりました。
形式評価 5点/20点中
上記の安倍マニフェストでは、新憲法の制定→そのための与野党の議論の活発化→まずは改憲手続を整備すべく国民投票法案の成立という、政策マネージメントでいえば、特定の目的を実現するための手段の部分については記載されていますが、目的の部分が曖昧です。すなわち、それでは何のための憲法改正なのかという点について安倍マニフェストを見ると、それに相当するのは、「戦後レジームからの脱却」をして「美しい国」を創るという部分ですが、マニフェスト全体を通して「美しい国」の内容は曖昧であり、安倍総理の言う「戦後レジーム」とは何かの定義がどこにもありません([基準(ア)]が満たされていない)。それではマニフェストの読者はそもそも憲法改正がなぜ必要なのかについての判断もできません([基準(イ)]も当然満たされない)。そこにはわずかに、[基準(ウ)]の手続きだけは踏むとのメッセージがあるだけであり、手段の自己目的化がはなはだしいといえます。
[ 基準(ア) ]まず、日本がどのような国を目指すのか、国際社会の中で何をやる国(あるいは何をやらない国)になるのか、政党としての考え方を明示すること。
[ 基準(イ) ]次に、それを実現する上で、憲法のどこが問題で、どのような方向で見直さなければならないかを示し、国民が改憲の必要性について判断できる材料を提供すること。
[ 基準(ウ) ]議論の手続き自体の政治的中立性、不偏不党性を確保すること。
実質評価 2点/10点中
安倍マニフェスト以外の場でも、安倍総理は官邸配信のメールマガジンなどで、「制定後60年を経て憲法を取り巻く状況が変わったこと」を憲法改正の必要性として述べており、例えば、「環境権などの新しい価値観が生まれたこと、冷戦が終わり、大量破壊兵器の拡散や国際テロといった新たな脅威が出現するなど国際社会が大きく変化したこと、世界第2位の経済大国となり、国際社会における責任が大きくなったこと」などを改憲理由に挙げています。
しかし、現行憲法下においても、例えば新しい人権の保障は憲法13条の幸福追求権と判例により概ね対応されており、テロ対策や国際貢献は集団的自衛権の是非に議論は及ぶものの、現在は個別法により対応されています。例えば「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」の柳井座長も、「憲法第9条をよく読むと、解釈には幅があり、憲法第9条第1項は、「国際紛争を解決する手段として」は武力の行使を放棄しているにすぎず、個別的及び集団的自衛権までを放棄したとは明文上書いてあるわけではないので、解釈に余地があるのではないだろうか。」と述べています。
すなわち、「新しい時代に即した新しい憲法を」という理屈には一理あるとしても、改憲をアジェンダに載せるのであれば、「日本国憲法は基本的人権の保障を確保するために硬性憲法の形式をとっているのであるから、時代の変化に対しては可能な限り解釈によって対応することを予定して制定されているため、時代の変化が直ちに憲法改正を導くとするためには、解釈によってはもはや対応が不可能であることを説明すべきである。」との考え方に応えられるだけの立論や材料が必要でしょう。それが見られなかったのは、[基準(ア)]→[基準(イ)]のプロセスの欠如によるものであるといえます。
国民投票法については、その制定を目指すこと自体は、憲法改正手続きについて定める憲法96条自体が予定したものであり、いわば法の欠缺を埋めるものとも言えます。(過去には、1953年に自治庁が国民投票法案を作成し、吉田首相一任となったものの、「内閣が憲法改正の意図を持っていると誤解を招く」とされ、閣議決定は見送られた経緯があります。)
しかしながら、改憲の必要性について未だ[基準(ア)]→[基準(イ)]の議論プロセスが未成熟な中にあって、改憲の手続き法を制定しようとする課題設定自体が性急に過ぎる印象を与えます。それは、容易な改正を許さないことで基本的人権の確保を図るために日本国憲法が硬性憲法の形をとっていることに鑑みても、順序が逆といえるでしょう。
2006年12月05日 19:17
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