「憲法改正・国民投票法」に関する安倍政権の実績評価 点数の根拠 / 実行プロセス
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言論NPOでは、これまでに安倍政権が行った政策の実績評価をしました。
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実行プロセス 7点/10点中
形式評価 7点/10点中
国民投票法を巡る一連の動きは、小泉政権期の2006年5月26日、第164回通常国会において、与党案である「日本国憲法の改正手続に関する法律案」、民主党案である「日本国憲法の改正及び国政における重要な問題に係る案件の発議手続及び国民投票に関する法律案」がともに議員立法の形で国会に提出されたのが始まりでした。
憲法改正の手続法を定めるプロセスにおいては、党派的利害を超えた見地からのコンセンサスがとられていたか、あるいは、とるための努力がなされていたか、が評価の視点となりますが【(基準(ウ)]】、この点では、安倍政権・与党には評価できる点も見られました。
[ 基準(ア) ]まず、日本がどのような国を目指すのか、国際社会の中で何をやる国(あるいは何をやらない国)になるのか、政党としての考え方を明示すること。
[ 基準(イ) ]次に、それを実現する上で、憲法のどこが問題で、どのような方向で見直さなければならないかを示し、国民が改憲の必要性について判断できる材料を提供すること。
[ 基準(ウ) ]議論の手続き自体の政治的中立性、不偏不党性を確保すること。
まず、安倍政権下で、衆議院憲法調査特別委員会内に「日本国憲法の改正手続に関する法律案等審査小委員会」が設置され、5回にわたり学識経験者・報道関係者等の参考人から意見が聴取されました。また、与党・民主党両案の審査と並行して、自民党、公明党、民主党の3党合意を前提とした新たな法案も模索され、自民党の船田元衆議院議員、民主党の枝野幸男衆議院議員らが中心となって合意に向けた協議が行われました。
また、参議院では衆議院で可決された与党の併合修正案に対して、民主党から議員立法の形で出された民主党案が参議院憲法調査特別委員会で審議された際には、議員提出法案としては異例となる首相や関係閣僚出席のもとでの質疑等が行われました。また、参議院で与党案が可決される際には、18項目にわたる附帯決議が民主党の賛成をも得てなされました。
このように、三党合意を目指す動きや、首相の異例の出席、部分的とは言え与野党一致の決議がなされたことは、憲法問題を超党派的コンセンサスの下で解決することを目指す行政権・立法権の意識的な努力に資するという点で評価できます。
しかし、中央公聴会の開催も省略するなど、4月13日の衆議院可決からわずか1ヶ月のスピード審議で国民投票法案の採決が強行され、結果として賛成122に対し反対が99もあったことは、コンセンサスがとれたとは到底言いがたい状況といえます。
5月14日に成立した国民投票法の特徴は、(1)国民投票のテーマを憲法改正に限定(2)投票年齢は18歳以上(3)国家公務員法などによる公務員への「政治的行為の制限」を原則適用(4)公務員と教育者の「地位を利用」した運動を禁止、などが柱となっています。但し、国民投票法の施行は成立から3年後の2010年で、それまで国会への改憲原案の提出・審議はできません。この3年間の凍結期間中に、公務員への「政治的行為の制限」の具体的な基準づくりや、選挙権年齢も18歳以上に引き下げる法整備も検討するほか、与党側は改憲案の骨子・要綱案を作成できるとしており、実質的な改憲論議が始まる可能性もあります。改憲案を投票にかける前に個別の論点を国民に問う「予備的投票制度」についても今後検討するとされています。
改憲そのものを巡る動きとしては、所信表明や施政方針演説で憲法改正を打ち出すのは、自民党初代総裁の鳩山首相以来51年ぶりのことです。安倍総理は、「集団的自衛権は有するものの、その行使は禁じられている」との従来の政府解釈の見直しについて、それに向けた具体的研究を行う考えを示しました。自民党は2005年に新憲法草案を策定しており、安倍総理もかつてその作成に関与しています。第167回国会から、衆参両院に「憲法審査会」が設置されることも決められました。このように、憲法問題は政治スケジュールに乗り始めました。
集団的自衛権の問題については、安倍総理は2007年4月に「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」 を設置し、(1) 米国に向かう弾道ミサイルを日本が迎撃できるか(2)公海上で米軍艦船が攻撃された場合、近くの自衛隊艦船が援護できるか(3)国連平和維持活動(PKO)などの活動で他国部隊が攻撃を受けたときに自衛隊が救援できるか(4)PKOなどでの後方支援のあり方、の4類型を検討対象に挙げています。
実質評価 0点/10点中
安倍首相の政権基盤は、郵政民営化を争点にして小泉前首相が得た2005年衆議院選挙大勝利の結果の禅譲を受けたものです。それなのに、「まず改正ありき」の安倍首相が、自身や憲法改正路線が支持されたわけではないにも関わらず、現在手にしている衆議院の多数議席を背に、国民投票法案を成立させ、粛々と改正へ向けて急いでいます。こうした政治的雰囲気のまま、国民的コンセンサスの醸成を経ずに、自民党が掲げるように平成22年に憲法が発議されたとしても、混乱することが必定でしょう。
戦後の日本に問題があったのは間違いありません。従って、それは色々な形で是正していくべきで、是正の最終到達点が憲法改正であるのはその通りです。だからこそ、腰を落ち着けて議論すべきところは多いはずなのですが、その進め方をみると、改憲を先導している人々の力学が先行している感が否めません。
国民投票法があること自体は当然であって、ないことの方がおかしかったというのは正しく、それは安倍政権の成果として評価できる要素ではあります。しかし、改憲の衝動を強く持つ人たちが中心になって国民投票法ができるというのは、必ずしも完全に民主主義的とはいえませんし、特に[基準(ウ)]に照らして妥当だったとはいえません。 これは、党派を超えて、政治家主導ということでは必ずしもなく、法律の専門家等による法律論の立場から検討を加え、それで出来上がった投票法の結果として、改憲が認められる場合もあれば否定される場合もあり得るという、両方のシナリオから見て中立的な法律をつくるというのが、望ましいプロセスでした。
国民投票法案の中身も、うがった見方をすれば、最低投票率を決めないのは、「改憲させないために投票に行かない」運動で改憲がつぶされることに対する防御という発想がないとはいえません。つまり、改憲をできるだけ速く実現したいという衝動があって、国民投票法という まさに法律として政治性のないものをつくるべき作業に、それが力学として働いてしまっているという図式が透けてみえます。憲法改正そのものが長期的な課題であるがゆえに、こうした実行プロセスであっては将来に禍根を残しかねません。
現状は、改憲で何をやるのかについての深い議論のないまま、「戦後トラウマ」に突き動かされています。本来は、何のための改憲なのか、将来、日本はどういう方向に動いていくべきなのかという前向きの議論を行って、そこで具体的な中身に対する国民的な討論を盛り上げた上で、その中から落ち着くところに落ち着かせていくというプロセスを経るべきです。現在の政治的な雰囲気はそうではありません。
また、自民党案を出して、イエスかノーか、反対者は護憲論者だという図式の提示は、日本国民全体にとって将来的に希望を持てるような議論の仕方にはなりません。
集団的自衛権については、前述の有識者懇談会のメンバー構成をみても、行使容認論者で固められており、基本的に反対派はそこに入っていないという構図があります。確かに、 日本の安全保障の論理立ての空隙部分をどうするかは重要な課題であり、早くとも3年後の改憲までの間に生じ得る事態に対する手当てとして、政府解釈の変更を行っておくという安倍総理の考え方は理解できないではありません。しかし、それは憲法9条の改正先にありきで、そこに持って行く上での既成事実化につながるものであって、日本国憲法の硬性憲法としての性格上求められる[基準(ウ)]に照らせば、政府解釈の議論の段階においても、せめて中立的なメンバー選定による不偏不党の審議のスタイルは確保すべきだったといえます。
2006年12月05日 19:10
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