2007年参議院選挙を総括する / 増田寛也氏 (内閣府地方分権改革推進委員会委員長代理)
![]()

増田寛也 (内閣府地方分権改革推進委員会委員長代理)
ますだ・ひろや
![]()
内閣府地方分権改革推進委員会委員長代理
1951年生まれ。77年東京大学法学部卒業後、建設省入省。千葉県警察本部交通部交通指導課長、茨城県企画部交通産業立地課長、建設省河川局河川総務課企画官、同省建設経済局建設業課紛争調整官等を経て、95年全国最年少で岩手県知事となる(3期)。現在、内閣府地方分権改革推進委員会委員長代理を務める。
2007年参議院選挙を総括する -1-
参院選挙の結果をどう見る
地方政府のありかたの問題については、選挙できちんと答える政党はありませんでした。ただ、地方の厳しい状況が選挙の結果には反映しました。
年金は問題も大きかったと思うけれども、やっぱり地域の格差とか、地域の実態経済をどうするんだというようなことについて、地域住民の悲鳴に近いような声が投票結果に現れたのではないか、自民党が今まで得意分野としていたところに、構造的な大きな変革の波が押し寄せてきているんじゃないかなと思って見ていました。
これは非常に根が深い問題で、単に赤城大臣じゃないほかの農水大臣を選んでいれば違う結果だったということでは決してない。
これは、地方の衰退、過疎の問題にどう取り組むのかについて、選挙民が自民党に対して明らかにノーと言った結果でしょうけれども、では、それが民主党に対してイエスか、積極的に民主党を推したものなのかどうか、ここはまだわからない。ですから、今言ったような地方の問題に早く答えを出した政党が次の総選挙の主導権を奪うのではないかと思います。
今回の選挙では、両政党は、少なくとも公約では答えを出さなかったのではないかと見ていますが、答えを出してくれない不満は、どうしても現政権に厳しく向かうことになる。それが参院選挙の結果に現れた。
今政府では、3年以内に提出する新分権一括法の制定に向けて取り組みを始めており、地方分権改革推進委員会が5月30日に基本的な考え方、「地方政府を確立する」という方向を示した。にもかかわらず、自民党は選挙にあたって、国と地方のありかたについてどうするか、きちんと打ち出せなかった。ちょうど年金の大波に翻弄されていた時期だから、多分余裕がなかったんでしょうね。
今回の選挙結果は選挙民がアメを期待しているようなもので、どっちかというとちょっと昔に戻った回帰的な感じ。だからそれをそのまま民意だと受け取ることが非常に怖い。多分、改革のビジョンを示しても、非常にみんなの抵抗感が多いし、きついと思うけれども、ただ、それでも国民全体の共感というか、理解はぐっと深まると思う。
きつい道だけれども、どこかでそれを乗り越えていかなくちゃいけない。全体のビジョンから入って、それで対症療法的なところまで行き着くような、そういうことをやらないと、この地方の問題は解決しないのじゃないかな。この先のビジョンで、ああ、こういうことだったら現在の痛みに耐えよう、こうした共感を得るのでないと、なかなか票には結びつかないんじゃないですかね。
改革というのは、私も県庁で職員に言いましたが、抵抗は大きいけれども、ステップ、ステップで、少なくとも次こうなっていく、次こうなっていくという全体像が見えていないと、やっぱりついていけない。だから、すごく大変ですし、難しい。抵抗は必ず出てくるけれども、余り独善的であってはいけないと思います。
参議院選挙は建前論でいうと政権選択の選挙じゃない。今回、安倍審判であるのは間違いなかったが、中間選挙的なものですから、好意的に言えば、参院選挙でのマニフェストは本当のマニフェストをつくるための事前テストというのですかね。だから結果は、いいマニフェストをつくれという国民のメッセージだと思うしかないんじゃないですかね。
次の総選挙まで非常に短いですから、今回も今月(8月)中に自民党も民主党も選挙の総括をきちんとやらなきゃいかんと思います。自民党は敗戦の総括をやる。そして、すぐ9月から新しい体制のもとでいいマニフェストづくりに取りかかる。民主党は民主党、自民党は自民党、それぞれ競い合い、本当のマニフェストをつくる。そういうことじゃないのかな。
そこで崩してほしくないのは、財政をよくするという大きな制約要件です。それを外して刹那的に財政を膨らませるようなことじゃなくて、やっぱり次世代に向けて何をするかということで考えていかなくちゃいけない。次世代にツケを残さないというか、もうツケがいっぱい出ているのだから、それを少しでも減らすような、そういうメッセージが含まれたマニフェストでなくちゃいかんと思います。そこを外さずにやってほしいなと思います。
農家へのばらまき政治は時代に逆行する
政治のリーダーシップが本当にきちんと必要なところにピンポイントで発揮されるということを多分地域の人たちは待っているんじゃないでしょうか。別の余計なところで何かしてくれるということじゃなくて。
というのは、地方の実態経済をよくしないと、分権の基礎は成り立ち得ない。
実態経済が弱いままだと、国から財政的な支援をもらい続けるしかない。少しでも実態経済を強くするとなると、私は1次産業がとても重要じゃないかと思う。
とはいえ、民主党が言っている通り所得保障を1兆円近く農家にやっていくということに自民党もかじを切って、それで民主党と一緒にやって日本の農業がよくなるかというと、それは今の農業の現状を前提に、その構造をただ単に支え続けるということにすぎないのではないかと思います。
2007年08月17日 16:08
前の記事:2007年参議院選挙を総括する / 増田寛也氏 (内閣府地方分権改革推進委員会委員長代理)
次の記事:'07参議院選挙 「日本の政治を採点する」/有識者の評価議論一覧






