【読売新聞】 「手帳」ネット上に論争の場

2001年10月17日

2001/10/17 読売新聞夕刊

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 「言論不況」と呼ばれる状況が続く中で、インターネットの双方向性を生かした新たな言論の場を作ろうという組織が旗揚げし、このほど都内で記者会見が行われた。元編集者や弁護士などが一個人の立場で参画する「言論NPO」で、担い手がNPO(非営利組織)という点でも型破りなこの試み、果たして論壇に旋風を巻き起こせるか--。

「言論NPO」代表は、今年休刊になった「論争 東洋経済」の元編集長、工藤泰志氏。「日本は歴史的な転換期にある。しかし、論壇はなかなか活性化しない。今こそわれわれは人任せではない議論を始めるべきだと考えた」と語る。ネット上の論文に一般の人々が反論するようなやりとりから、政策提言につながる建設的な議論を掘り起こす。そんなコンセプトの下に賛同者を集め、今年7月にはホームページ上に「ウェブ論壇」を開設。竹中平蔵・経済財政担当相へのインタビューなどを月替わりで掲載してきた。一方で、助言役の「アドバイザリースタッフ」には評論家の山崎正和氏、経済同友会代表幹事の小林陽太郎氏らが就任。基盤が固まったところで、正式に設立を宣言する会見が開かれた。

同席した山崎氏は、「“プロ”でない人との議論で“プロ”が奮起するとしたら、この試みにはおおいに意味がある」と激励。代表工藤は、ネット上の議論の精髄を「アウトプット」する雑誌を来春創刊する構想も示し、「(米国の)フォーリンアフェアーズのような質の高い雑誌にしたい」と意欲をみせた。

記者発表後の記念パーティーには小泉首相、民主党の鳩山代表らが来賓として駆けつけるなど、華々しいスタートを切った言論NPO。しかし、課題もある。運営予算は会員が納める会費が頼りだが、現在約150人の会員がどこまで増えるかはまだまだ未知数。  現在はだれでも見られるホームページを順次会員専用に切り替えるなど、本格的な論争の場を今後整えていく中で、どれだけ多くの人を巻き込んでいけるか。「志」の行方が注目される。

(ホームページアドレスはhttps://www.genron-npo.net) (時)


 

2001/10/17 読売新聞夕刊