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【読売新聞】 日中関係改善へ新たな議論の場

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2005/9/29 読売新聞・夕刊

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第1回 北京-東京フォーラム 日中関係改善へ新たな議論の場

共通認識となった相互理解の未熟
8月23日、北京のホテルの会場に日本と中国の2000人を超す有識者が集まった。
日本のNPO法人である言論NPOが中国の大手メディアや大学と組み、日中関係を改善するための、継続的で新しい議論の舞台を立ち上げたからだ。言論NPOは日本の各界の有識者が個人の資格で参加し、政府などの政策評価や政策提案を行っている。

 戦後60年の節目の夏に、大きなフォーラムを北京で開くのは、ある意味で勇気が問われる作業である。だが、そうした時期だからこそ、私たち民間団体が動かなくてはならないと考えた。小泉首相は総選挙前に靖国参拝を取りやめたが、歴史認識をめぐる中国国民の不信感は根強く、政府レベルでの関係悪化や半日デモを背景にこの間、民間の交流事業も中断や延期に追い込まれていた。

 私たちが中国との議論交流に取り組んだのは、今の日中関係はアジアや日本の将来にとって危ういと考えたからである。経済のグローバル化の中で中国は台頭し、アジア経済の一本化が進んでいる。だが、日本だけがその変化を活かせず、緊張と孤立を深めているように見える。日本と中国の対話のチャンネルは少なく、それもなかなか機能していない。 2年前から私たちは何度も北京を訪ね、各団体と協議を続けた。日中問題やアジアの将来に向けて有識者が個人の資格で参加する自由で本音の議論ができる新しい舞台を作りたい。それが私たちの提案である。要請に応じたのは中国の4大新聞のチャイナ・デイリー(中国日報社)と北京大学・国際関係学院だった。この3者の間で日中議論促進などに関する提携などが結ばれ、対話の準備が始まった。私たちはこれを「第1回 北京-東京フォーラム」と名付け、北京、東京で毎年交互に10年間継続的に行うこと、さらに議論に民意の動向を反映させるために毎年共同の世論調査を行うことも決めた。

 準備作業を進める中でも、日中関係はさらに悪化した。だが、国務院の新聞弁公室、対外友好協会などの全面協力を得て、この日のフォーラムは実現したのである。2日間にわたる実際の議論には、出席者のうち趣旨に賛同した約70人が加わった。日本側からは総選挙の準備で大部分の政治家は欠席となったが、安斎隆アイワイバンク銀行社長、溝口善兵衛前財務官、白石隆政策研究大学院大副学長など有識者17人と北京在住の日系企業代表約10人、中国側からは趙啓正前国務院新聞弁公室主任、徐敦信元駐日大使、陳彤「新浪網」編集長など政府関係者、ジャーナリストなど約40人が議論に参加した。

 さらに公開討議には中国や日本などのメディア約70社が取材に加わり、議論の内容はインターネットなどで中国だけでなく世界に同時中継され、確認しただけでも50を超す中国メディアが会議の内容を国内に向けて報道している。これほど多くのメディアが日中の議論に関心を寄せ、大量の報道を行ったのは近年では極めて稀だが、逆に言えば日中関係の現状の行き詰まりを反映している。新しい建設的な議論のチャンネルを中国もまた期待しているのである。

 今回のフォーラムを成功した、と私が思うのはその報道の量よりも、会議の参加者が「議論が噛み合った」と口を揃えたことにある。会議では歴史認識などで意見が激しく対立することはなく、メディアの役割や各分野の対応策に話が進んだ。初日に公開した日中の世論調査の深刻さが参加者の共通認識になったからである。

 世論調査は今年7月、中国では5大学の学生アンケートのほか6大都市の2000人に対して集計が行われ、日本でも全国で実施された。日中関係は重要だが今は最悪の状態にある。日中の大部分の人はそう答えたが、その背景には余りにも初歩的な理解の低さが双方に示されていた。ほとんどの国民は相手国への渡航経験や知人もなく、認識の大部分をメディアなどに依存している。例えば半数を超す中国人は日本の現在の政治思想を軍国主義、民族主義などと答えていたのである。

 日中韓には様々な交流があるが、表面的な有効を繕うだけでは、現状の危うさを解決できない。日中の関係改善のために大切なのは、考えや立場の違いを認め、お互いを尊重できる関係、仲がいいから喧嘩ができる関係なのである。それが第1回フォーラムでの合意だった。次回は来年8月、舞台を東京に移し議論を行うことになる。

工藤泰志
言論NPO代表
1958年生まれ。「週刊東洋経済」記者、「論争 東洋経済」編集長などを歴任。
著書に「図解『土地神話』のゆくえ」。

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