by Google 運営者 お問い合わせ
トップ > 発言者(言論ブログ/メディア評価)  >  加藤紘一

 第2話:「靖国問題」

加藤紘一

加藤紘一(衆議院議員)
かとう・こういち
profile
1939年生まれ。64年東京大学法学部卒、同年外務省入省。ハーバード大学修士課程修了。72年衆議院議員初当選。78年内閣官房副長官(大平内閣)、91年内閣官房長官(宮沢内閣)、95年自民党幹事長。著書に『いま政治は何をすべきか―新世紀日本の設計図』。


 「靖国問題」

 私は、ご承知のように、小泉さんには、靖国神社参拝は辞めたほうが良いですよと、総裁選挙で約束したんだし1回目だけはしょうがないかなと、第1年目に総裁に呼ばれて意見を求められたのでそう申し上げて、8月15日は外してせめて13日にしたほうがいいんじゃないかと言いました。当時、武大偉がまだ在東京の大使でして、私は彼とも連絡を取ってぎりぎりの時に、彼は中国に戻って、党幹部がみんなリゾートに行ってる中、武大偉は飛んで行って、そこで幹部なんかと話して、大体8月13日は大丈夫ということを、僕と武大偉で携帯電話で話しながら小泉さんにアドバイスしたんです。それで、1回目はたいして大きな問題にはならなかったのです。

 中国側にしても、はじめは、1回は中曽根さんだって参拝したし、そのうち分かってくれるという多分甘い見方でいて、小泉さんが2年3年4年と続くというふうには思ってなかったのですが、ところがだんだん小泉氏のほうが頑張っちゃったもんだから大事件になってきてるのだと思います。
外交問題は今はこのことだけにしたいのですが、靖国問題はかなりシリアスな日米問題に転化してきたと私は思っています。

 2年ほど前に靖国の理念と沿革を描いた遊就舘陳列所ができ、800円の入館料で入ればかなり勉強にもなる展示がずっと続いています。近代日本の歴史を、靖国神社の解釈できれいに統一的にまとめられ、写真もあり、遺品もあり、あれほど近代の歴史を勉強できるところは無いと思います。私は去年6回、合計8時間ぐらい丹念に見てきたんですが、まだまだ読み足りない、見たりないというぐらいのすごいものでした。あれは、多くの歴史学者、文学者、考古学者の人たちも入って徹底的に検討し書き出したものだというので生半可なものではありません。

 近代の日本の歴史は、明治維新で作った日本の自存自衛を考え、なおかつ中国や朝鮮半島を含むアジアを欧米植民地主義から解放するための正しい戦いであったと。太平洋戦争は、アメリカから戦わざるを得ないようにされて戦ったものであり、パールハーバーは奇襲ではなかったんだと。で、その1カ月前にホワイトハウスは全部わかっていたが、先に先制攻撃させたほうがアメリカとしては対応しやすいということで、まずさせろということになって、日本はそれを知らずに突っ込んでいったのですと。そして、2本ほど映画を上演する場所があって、そこでは、「アジアの極東の小国日本がなぜ戦わざるを得なくなったか、そのことを我々は忘れない」と、最後に非常に甲高い女性の声であじるわけですよ。シーファー在東京アメリカ大使はそれを見に行ったか話を聞いたかしたそうですが、不愉快であると言っているそうです。

 外務省の実質的な広報誌に「外交フォーラム」という雑誌がありますが、最近、その中に栗山元駐米大使が論文を書いてます。栗山さんといえばご承知のように外務事務次官およびワシントン駐在大使もやった方で、ここ20年ぐらいの中では最も権威のある親米派ですが、栗山さんが先月中旬、「靖国の遊就舘は大きな問題になる」と、意を決して書き、警告を発しています。

 アメリカの対日政策は、東海岸にいる20人ぐらいの人が、時には大学に、時にはシンクタンクに、時には政府に、時にはメディアにいて、グルグル回りながらその人たちが論調を決めているんだと思いますが、その中のドンは、ご承知のようにジョセフ・ナイですが、彼が2カ月ほど前に日本の靖国問題が対アジア外交にもたらす影響について、東京新聞にかなり率直に、「日本は孤立するよ」と言っております。1月4日の毎日新聞によれば、ホワイトハウスのナショナル・セキュリティー・カウンシル、NSCのアジア部長をやっていたマイケル・グリーンが、辞めるにあたってインタビューをして、「靖国神社参拝をやめるというのも一つでありましょうが、それは日本が決めることです」というところまで言い、さらに、「日中の関係が悪くなってアジアの中で孤立する日本は、言うなればアメリカの外交パートナーとして力弱い存在になっていくのが心配である」というところまで言われている。にも関わらず、靖国問題をアジアの問題として捉え、日中問題として捉えている。日本外交の戦略性がないのではないかなと思います。

 一言で言えば、第一次世界大戦と第二世界大戦の間のドイツみたいな誤りをしてはいけない。サンフランシスコ体制をちゃんと守るかどうかという大問題であり、この体制が良いかどうか、ヤルタ会談についての歴史的な議論を、民間でするのならばいいけれども、政府を代表とする総理や官房長官などが、靖国史観に基づいたところに参拝に行っては、かなり後々まで事がこじれていく問題だと思います。

※第3話は2/18(土)に掲載します。

※以下にコメント投稿欄がございます。皆さんのご意見をお待ちしております。

2006年02月16日 09:38

トラックバック

このエントリーのトラックバックURL:
http://www.genron-npo.net/mt/mt-tb.cgi/118

前の記事:第1話:「日中の環境」
次の記事:第3話:「危ないのは日本の社会の崩れ」

コメント

「靖国神社に参拝するのは心の問題だから、、、、」と言う人は多い。その根底には「心の問題には他人が立ち入ることは許されない」という前提がある。しかし「人間の心に間違いはない」のだろうか。心の中は間違いだらけであると思う。その点では釈迦やキリストも完全な心ではなかったであろう。もちろん、普通の人よりは遙か良い心を持っていたであろうと思うが。
 食うに困る人が、食べ物を盗んだとしよう。腹が減れば食べたくなる、しかし金がない。そこで『盗む人』と『盗まない人』に分かれる。その分かれ道は心の分かれ道の問題でもある。窃盗は法律に触れる問題であるが、法律以前の倫理の問題でもある。
 では靖国神社をどう考えるべきか。靖国神社の成り立ちと、戦後処理の経過を考えれば自ずと答えが見えてくる。靖国神社は神が造ったものではなく、人間が造ったものである。その神社に心を持って行っただけの話である。新しいものを造って、そこに心を持って行けば同じことである。なぜ靖国にこだわるのか私には理解できない。靖国神社にこだわる必要は何もない。それでも靖国にこだわるというのは「利害」が入り込んでいるからだろう。「利害」を思うのは人間のもっとも間違った心である。「利害」で動いている限り人間社会に平和はやってこない。論理的に正しい方向に向かって動くべきである。それが正義である

投稿者 堺の一休 : 2006年03月10日 09:39

コメントしてください




保存しますか?


(戴いたコメントは担当者が選択し掲載させていただきます。)