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 第1話: 都市と地方の財政格差論議には誤解がある

松沢成文(神奈川県知事)
まつざわ・しげふみ
profile
1958(昭和33)年、神奈川県川崎市に生まれる。1982(昭和57)年、慶應義塾大学法学部卒業後、松下政経塾に入塾。1984(昭和59)年、米国ワシントンD.C.にて、ベバリー・バイロン連邦下院議員のスタッフとして活動。1987(昭和62)年、神奈川県議会議員に初当選。1991(平成3年)年、同2期目当選。1993(平成5)年、衆議院議員選に初当選。1996(平成8)年、同2期目当選。2000(平成12)年、同3期目当選。2003(平成15)年、神奈川県知事に就任。2007(平成19)年、同2期目就任。
[主な著書]
「破天荒力-箱根に命を吹き込んだ「奇妙人」たち」(講談社)
「インベスト神奈川-企業誘致への果敢なる挑戦」(日刊工業新聞社)
「拝啓 小沢一郎殿 小泉純一郎殿」(ごま書房)
「知事激走13万㎞!現地現場主義-対話から政策へ」(ぎょうせい)
「実践 ザ・ローカル・マニフェスト」(東信堂)
「僕は代議士一年生」(講談社)


都市と地方の財政格差論議には誤解がある

 都市と地方の格差が大きくなって大変だと言うけれども、これはもう少し冷静にみた方がいいと思います。人口1人当たりの税収額の偏在度を都道府県ごとにみると、平成元年度の時点では、1人当たりの税収の一番多い東京都と最小の沖縄県とは5倍の差があった。それがどんどん縮小してきて、平成15年度には2.7倍にまで下がり、その後、やや拡大しましたが、それでも17年度は3.2倍です。平成に入って以降、中期的には税収格差は縮小しているのです。

 夕張市のようなこともありましたから、地方が大変で、都市が裕福で、この格差はどうするんだという話になっている。でも、1人当たりの税収の格差をよくみると、傾向としては縮小している。格差が大きくなっているというよりも、実態は小さくなっているのです。

 もう1つ指摘したいのは、確かに1人当たりの都道府県税収(平成17年度)を比べると、東京都が一番多くて、沖縄県が一番少ない。神奈川県は12位です。多いのは、大体大都市圏ですね。大阪府とか、愛知県とか。でも、地方交付税を配分した後の1人当たりの一般財源(地方税+地方交付税)で見ると、一番多いのは島根県で、次いで鳥取県、高知県、福井県の順番です。そして、一番少ないのが神奈川県なんです。

1人当たりの地方税の額で比べたら、住民が多くて、企業が集積している都会が多いに決まっている。でも、その後、都市と地方の税収格差を調整するために、政府が地方交付税を配分するわけですから、一般財源として使える額で見ると、一番少ないのは神奈川県であり、埼玉県、千葉県なんです。

 だから、格差が大きくなっている、問題だ、問題だと言うけれども、数字をよく見ると、むしろ都市の方が使えるお金の1人当たりの額は少なくて、こっちを助けてくれよと言いたいぐらいの部分もあります。


ふるさと納税は地方税の原則に反する

 ふるさと納税の議論でも、地方で子供を育ててきて教育でお金がかかっているのに、成人したら、みんな都会へ出ていっちゃうという。でも、その人たちを受け入れて福祉や医療でお金を使うのは都市部の自治体です。それは大変な負担です。教育論を言うのであれば、こっちの福祉論はどうなるんだという話です。私は、格差が大きくなっていると言うこと自体を懐疑的に見ています。

 では、なぜ地方が困っているのかというと、2つ理由があると思います。1つは、小泉政権で公共事業を減らしてきた。それで仕事がどんどんなくなり、建設業者などが倒産して、失業者があふれるという事態になったわけです。

 もう1つは、地方交付税をこの3年間で5.1兆円も急激に減らしたことです。みんなの税金を財政力の弱い自治体に配ることによって、必要な財源を保障し、地方自治体間の財政力を均衡させるのが地方交付税なわけです。それを、国の財政が厳しいからと言って、一方的に5.1兆円も減らしてしまった。交付税が減ったので、ますます地方は使える金がなくなって困ってしまった。

 国の財政運営の失敗で地方の財政が厳しくなってしまったのに、国は財政が厳しいから、ふるさと納税によって自治体同士で調整しろなんていうのは本末転倒です。そもそも、住民税というのは、地域の住民がその地域の自治体から行政サービスを受ける対価として払う会費です。それをよその自治体に回そうというのは、税理論としておかしいわけです。

 また、同じ県民で、同じ所得なのに、片や私はこの県に10割納税します、片や私は9割で、1割は他の県に納税しますということになったら、同じような収入があり、同じ行政サービスを受けているのに、税金を10割払っている人と9割しか払わない人が生じてしまい、公平性の面でも問題があります。それから、ふるさとの自治体に納税したときに、その自治体の行政をチェックするために議員を選べるかといったら選べません。「代表権なきところに課税なし」というのは民主政治の原則ですから、こうした点でも問題があるわけです。

 また、経費の面でも問題があります。ふるさとへの納税の可能性としては、1800の基礎自治体と47都道府県にお金を送る可能性があるわけです。どうやって税の移転を管理するのか、コンピューターシステムをつくるだけだって相当なお金がかかりますが、だれが出すのか、国がやれと言うなら国が出してくれるのか。これも地方の負担になるわけでしょう。税理論上おかしいし、公平性も損なわれる。そして、経費もかかってしまう。だから、ふるさと納税には絶対反対です。

 ただ、ふるさとを思う気持ちを大事にしてあげたい、夕張がかわいそうだ、という人に何らかの選択肢はあってもいい。それには、寄附金税制を活用すればいい。落としどころは寄附金控除を充実させようということだと思います。

2007年11月20日 10:07

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コメント

 激、正しい!全面同意します。大阪なんて、いったん財政崩壊しています。都市だから豊かではけっしてないです。
 もう一つ、上記にはありませんでしたが、努力して人や企業を何十年も集め続けてきた自治体と、努力せずに窮地に陥った自治体を一緒にするのもおかしいと思います。努力している自治体から努力していない自治体に配分するのは不公平だと思います。努力に見合った報酬があって良いと考えます。
 収入格差も同じで、努力した人がたくさん稼ぐのは当然で、最低レベルのみ保障してやって、それ以上の部分は格差があって良いと思います。たくさん税金を払った人がより大きい福祉を受けるのは当然です。ただ、現在はその最低レベルが全く保障されていないために格差社会を問題視する間違った論調に行ってしまうのだと思います。
*不公平に関しておまけ:最低レベルの保障の一部とも考えられる年金や生活保護費も土地ごとの平均生活費に見合った配分をして良いと思っています。同じ15万もらっても、地方では裕福に生活できるけれど都市部では住居費と光熱費くらいで食費は切り詰めないといけません。生活レベルを住む地域によって変えてしまうのは不公平だと思います。都市部で暮らす人ほど苦しい。これでは弱者は生活費の安い田舎に引っ越せと言ってるのと同じです。

投稿者 通りすがりです : 2007年12月03日 14:06

神奈川県の人口密度3,680人/1k㎡
島根県の人口密度110人/1k㎡

県民1人分配されるお金が1万円の場合。
神奈川県の1k㎡の街で使えるお金3680万円
島根県の1k㎡の町で使えるお金110万円

神奈川県民一人当たり82坪の土地と行政を維持
島根県民一人当たり2750坪の土地と行政を維持

いろんな比較があると思いますが、一人あたりのお金が同じなら都会がお得な気がします。


投稿者 伊藤 : 2007年12月10日 21:37

松沢知事に全面的に賛成です。格差格差と言う政治家や報道機関はもっとその格差の内容を精査して言うべきです。東京の近県である埼玉、神奈川などの実状を知った上で述べるべきです。知事のいう一人当たりの一般財源以外にも、一人当たりの負債を差し引いた貯蓄残高では神奈川が36位埼玉が39位、物価が高いのでその貯蓄で生活できる日数はそれぞれ、40位と41位。また一人当たりの住宅延べ面積は42位と41位、一人当たりの医師の数は41位と47位、教員一人当たりの小学校の児童は46位と47位、それ以外にも一人当たりの警官数、都市公園面積 さらには主要道路の舗装率でも神奈川は低い状態であり、県民の生活や受ける行政サービスは北陸や四国の瀬戸内海側等に比較した段違いに低いものです。これ等の統計は総務省の発表しているもので容易に得られます。もっと調べてから格差というべきです。

投稿者 溝呂木利昭 : 2007年12月12日 16:37

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