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 呉鍾南氏(IMF理事)と言論NPOの懇談会開催

言論NPO懇親会 呉鍾南氏(IMF理事)

 2月2日、呉鍾南氏(IMF理事)を招き、懇談会を開催しました。参加した言論NPOのメンバーと各界有識者との間で、世界経済や高齢化社会の問題、韓国の内政問題などにつき、活発に意見交換を行いました。

 言論NPOは2月2日、韓国出身で現在IMF理事である呉鍾南氏を招いて、言論NPOと関係の深い各界有識者による夕食懇談会を開催しました。呉氏は、国際経済交流財団の招待で来日しましたが、この懇談会は、言論NPOアジア戦略会議の主査である深川由起子・東大教授の呼びかけで実現したもので、議論は深川氏の司会により進められました。

 呉氏は、韓国の経済企画院(現在の経済財政部)の出身で、金大中政権では金融改革の最前線に関わり、アジア経済研究所の客員研究員も経験した日本通です。韓国統計庁の長官(Commissioner of The Korea National Statistical Office)を経て、韓国が通貨危機の後に初めて送り込んだIMF理事として活躍しています。深川氏は、呉氏を招いたのは、韓国でも日本に通じた対日政策担当者が減っている中で、数少ない日本通である韓国の国際派が日本をどう見ているかを聞く貴重なチャンスとなるからであるとしました。


 最初に、呉氏から、ともに議論したい論点として、以下の3点の問題提起が行われました。

 第一に、世界経済の中に占めるアジアのウェイトは1990年の25~26%から、2004年には35%へと15年間で10ポイント上昇しており、かつてはアメリカと日本とEUが仕切っていた世界経済の中で、80年代までは世界の10位以内に入っていたアジアの国は日本だけだったのが、2005年には日本以外にインド、韓国、中国が入り、中国とインドが世界経済のエンジンとなっている。こうした変化の中で、2015年、2025年にはどのような事態が予想されるか、中国がどうなっているだろうかという問題提起です。

 第二に、アジアの黒字と裏返しになっているアメリカの大幅な対外赤字の中で、ドルの価値はサステイナブルなのかどうかという論点です。すなわち、グローバルな不均衡が拡大している中で、外国人によるドル保有比率も1975年の30%から現在は44%まで拡大し、今や、アジアが一生懸命に働いてアメリカの財政赤字を支えている。この姿がいつまで持続可能なのかという問題提起です。

 第三に、97~98年のアジア通貨危機のような事態が再来しないようにするにはどうすれば良いのか。外貨保有高は現在、日本が第1位で8,470億ドル、第2位が中国の8,190億ドル、アジア全体では2.5兆ドルで、これは日本のGDPの約半分の規模にものぼりますが、IMFは3,000億ドルしか保有しておらず、今はIMFはまだ力を持っているものの、アジアはその8倍もの外貨保有高を誇っています。こうしたアジアは、自らの地域の中で何か協力できることはないのか、エコノミック・パワーとポリティカル・パワーの間に大きなギャップがあり、世界第2位の経済大国である日本も政治的に世界第2位ではないという状況の中で、この問題をどう考えるのかという問題提起です。

 これを受けて、深川氏からは、このように日本は世界の中で過少評価されているが、その理由は、金融についてはただカネを貯めているだけで仲介能力がないことであり、地域協力といってもアジアは常にまとまることができない地域である。外貨準備をいくら貯めても、それを価値がいつ落ちるかも知れないアメリカのTB(財務省証券)に運用するしか選択肢がない状況をどう考えるかというコメントがなされました。

  

 出席者との意見交換では、主として以下の論点を中心に議論が行われました。

 まず、世界経済の問題については、人口減少に直面する日本では、国民所得を増やす方法としてGDPにカウントされない海外からの利子・配当の伸びに活路を求める道があり、そのために人口の多い地域に投資していくという考え方があるとすれば、GDP中心の考え方は見直すべきだとの指摘がありました。また、石油ショックに際して、外貨準備はTBではなく、石油の備蓄に回すべきだとの議論もあったが、今、何かより良い使い道は工夫できないのかという意見もありました。

 さらに、プラザ合意時には、アメリカの経常収支赤字の対GDP比を1%下げるためには10%の為替レート調整が必要との考え方がとられていたのであり、現在の6%という赤字の水準を当時の考え方で2%まで減らすためには40%ものドル価値の下落が必要ということになるが、IMFはそのソフトランディングシナリオをどう考えているのかという質問がありました。

 これについて呉氏は、アメリカの赤字がなくなると困るのはアジアだが、それがなくなる可能性はないとのソロス氏の言葉を引用し、結局は、アメリカ人が貯蓄率を上げる以外に方法はなく、為替レート調整だけに頼ることは適当でないとしました。

 また、日本の超高齢化、人口減少の問題についても活発な議論が交わされました。呉氏からは、そもそも人口減少の問題はどこにあるのかという問いかけがなされ、出席者からは、それは人口ピラミッドの崩壊であり、人口減少のスピードが急激であること、その中で持続可能な社会を確保するためには財政構造の改革が急務であることなどが指摘されました。また、高齢化社会とは「年齢不詳社会」でもあり、高齢者と若者の対立という図式ではなく、働く高齢者が働かない高齢者を支えるシステムとして考えるべきであり、重要なのは、高齢者が持つ莫大な資産ストックをいかに健康のための消費需要として引き出していくかであるといった指摘もありました。

 高齢化の問題については、呉氏は、日本よりも韓国のほうが、むしろ、「高齢化社会」から「高齢社会」への移行のスピードが速く、かつては30+30+αだった平均寿命が、30+30+30+αになる中で、理想的な消費は死ぬ直前までに使い切ることだとすれば、70~80歳の頃までに使い切ってもまだ寿命が残ってしまうこと、自分たちは、親の面倒を見る最後の世代であるとともに、親の面倒を見てもらえない最初の世代であることなど、韓国も同様の状況に直面しているとしました。

 さらに、議論は韓国の内政問題から、北朝鮮の問題へと及んでいきました。その中で、呉氏は、韓国は北朝鮮との南北統一を望んでいることはないことを強調し、同国の対北援助も、戦争の緊張をなくし、リスクを軽減させるための保険料だったとしました。

 その他、論点は多岐にわたりましたが、呉氏が提起したアジアの将来像や国際的な不均衡の問題、アジアの協力の可能性といった論点については、今後、言論NPOでもアジア戦略会議などの場で議論を本格的に掘り下げてまいります。

 いずれにしても、今回は、アジア戦略会議のメンバーに加え、前民主党党首の岡田克也氏や元防衛庁長官の中谷元氏といった政治家や霞ヶ関各省の官僚の方々なども加わり、相互に忌憚のない意見交換が行われという意味でも、意義のある懇談会となりました。

 言論NPOは、今後とも、このような、各界の当事者の方々による個人の立場での自由な議論の場を設けていきたいと考えています。

2006年02月06日 15:26

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