フォーラム「日本の民主主義を考える」報告

2012年10月08日

 10月4日の公開フォーラムでは、言論NPOのアドバイザリーボードである増田寛也氏(野村総合研究所顧問)、武藤敏郎氏(大和総研理事長)、宮内義彦氏(オリックス株式会社 会長兼グループCEO)をゲストにお迎えし、「日本の民主主義を考える」をテーマに議論が行われました。 



121004_top.jpg まず、代表の工藤は「有権者が代表を選び、代表が日本のために政治を行い、その成果を評価する、という民主主義が、今の日本で機能していないのでは」と問題提起しました。これに対して、宮内氏は、今の政治について「今の民主主義は日本の民意と今の制度を反映した姿であり、この状況をいかに改善するのか」と述べ、問題は「民意が移ろいやすい」ことであると指摘しました。また、増田氏は「大衆迎合的な主張に有権者は惹かれる」と述べ、民主主義の危うさを指摘しました。一方で、宮内氏は「政治家はポピュリストにならないと選挙で選ばれない」状況があると述べました。また、武藤氏も「政治家が選挙のために政治をするようになっている」と述べ、それを防ぐために「政治家と有権者との間に緊張関係を作り直す必要がある」と、代表の工藤は指摘しました。

 続いて、政党政治について増田氏は、2大政党制では民意を集約できなくなっていることに言及し、「多様な意見を組み入れる」ための知恵が必要であると述べました。また、宮内氏は現在の政権与党は、「内部の意見が全く一致していない」、「マニフェストの整合性が取れていない」と指摘し、政党自体を立て直すべきとの見解を示しました。これらの原因について、武藤氏は「政党のガバナンスが機能しない仕組み」に問題があると指摘しました。


 今回の議論に先立ち、言論NPOでは有識者のアンケートを行いました。有識者413人が回答した「次の選挙で何が問われているのか」についてのアンケートの「民主主義を機能させるためのアイディアに何があるか」という設問では、「有権者、市民の当事者としての自覚」との回答が43.9%と最多となり、有権者の自覚と参加を求める声が大きくなっています。その他には、「両院制の改革」(30.8%)または「政治家の定数削減」(21.8%)などの制度改革を求めています。

 このアンケート結果を踏まえて、増田氏は代表制民主主義の機能回復を主張し、「マニフェストを軸とした政治サイクルをきちんと回すべき」と提起しました。武藤氏は「二院制を一院制にするような制度改革は短期的には難しい」とし、その前に政党の政策およびその決定プロセス、党員の選考基準を明確にし、実現出来ない政策の説明責任を果たすために「政党のガバナンスをチェックすべき」と提案しました。最後に代表の工藤は、言論NPOの「私たちは政治家に白紙委任をしない」というキャンペーンに触れ、「この決意はスタートである。これから賛同の環を広め、日本の民主主義において大きな変化を作りだしていきたい」と語り、締めくくりました。

 今回の議論を起点として、言論NPOは「私たちは政治家に白紙委任をしない」というキャンペーンを推進していきます。このキャンペーンに賛同していただける方は、こちらのサイトで賛同の意思表示をしていただき、メッセージをいただければ幸甚です。

 10月4日の公開フォーラムでは、言論NPOのアドバイザリーボードである増田寛也氏(野村総合研究所顧問)、武藤敏郎氏(大和総研理事長)、宮内義彦氏(オリックス株式会社 会長兼グループCEO)をゲストにお迎えし、「日本の民主主義を考える」をテーマに議論が行われました。