「衆議院選挙で各党は日本の課題にどう向かい合っているのか」公明党編

2017年10月17日

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代表の工藤が公約に切り込む

石田祝稔:公明党政調会長
聞き手:
工藤泰志(言論NPO代表)

⇒ 公明党の公約説明
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第一部で、石田氏の公約の説明を踏まえつつ、公明党の公約に代表の工藤泰志が切り込みます。

第二部:公明党の公約について代表・工藤泰志が切り込む


私立高校無償化は、2%の増税とは別に財源を工夫する

kudo2.jpg工藤:どうもありがとうございました。今、お話をお聞きしてほっとしました。生活の視点の話をしているわけですね。ただ、有権者から見ると、この政策が実現できるのか、実現するということがどういう意味を持つのかを聞かなくてはいけないわけです。では例えば、私立高校の授業料無償化にはどれくらいかかるのでしょうか。

IMG_2736.jpg石田:約840億円です。これは2%の増税とは別立てでできるだろうと思っています。8日の党首討論で山口代表が総理に投げかけた時も、検討すると言っていたようです。840億は大変な額ですが、1兆円とか何千億円とかいう話ではないですので、2%とは切り離してもできるのではないかと思います。もちろん財源の工夫はしなくてはいけないのですが。

工藤:それに関連して、今回の2兆円を使途変更するということは、本来赤字国債を削減するために使おうと思っていたものをそちらに使うわけですから、結局将来世代の負担になるということですよね。結果的に負担を先送りしていくことについてのご意見はどうでしょうか。

石田:ラジオを聞いていてこういう意見がありました。「消費税が平成元年に導入されてたかだか30年弱だ。これから生まれる人は一生消費税を負担しなければならない、これは大変だと」。

 なぜ教育に注目するのかというと、教育によって本人の未来を開くというところに重要性があります。実際は経済的な理由で学校に行けない人がいるのは間違いないです。教育によって能力を開発できるチャンスができる。日本の経済を考えても、潜在成長率がなかなか上がらない。どうしても、(潜在成長率の3要素である)資本と労働力と生産性とを考えると、労働力が減っている状況では、一人一人の生産性を上げなくてはならない。そのためには教育しかない。

 教育投資を受けることによって、将来のパフォーマンスをあげていただくことが可能ではないかと思います。

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既に社会保障費の伸びを抑えている中で、「この世代は守らない」とは言えない

工藤:社会保障に関連して、100年生きて幸せに暮らせるというシステムなどがなければ、長生きできることが不幸になり得るわけですね。2025年、団塊の世代が後期高齢者になる時に、今でもそれまでに何十兆円と必要になると言われているのですが、誰がどういう形でその負担を負うのか。また守らなければならないのは誰なのか。公明党はどういうふうな考え方を持っていますか。全世代全て、現役世代も引退した世代も将来の世代も全てなのでしょうか。

石田:年金一つとっても、今までであれば「現役中に掛け金を払い、退職して受け取る。私は掛け金を全て払っています」という形でした。ただ、今は消費税という形によって、年金を受給している世代も掛け金の原資を払ってもらっているわけです。全世代型の社会保障ということになると、全世代で負担も公平に分かち合ってもらわなければならないということになるのではないかと思います。

 来年、医療・介護の報酬の同時改定、さらに生活保護の見直しがあります。障害者の法定雇用率の見直しもあります。ですから、選挙が終わって来年度予算編成の段階ではものすごい課題があります。

工藤:それは選挙では触れないのですか。

石田:これは予算編成過程でこれらはやるかと思います。同時改定はもう決まっていますので、重点化・効率化は、去年も実は社会保障の伸びを5000億円に抑えるというのをやったのですが、非常に大変でした。

工藤:さっきの守るという話ですが、全部を守ろうとしているように思います。それは可能なのですか。

石田:「この世代は守るけれど、この世代は守らない」ということは言えないわけです。それをどうするか。例えば、高齢者から見たら若い世代は自分の子供や孫の世代でもあるので、年金一つとっても受給者世代にも「辛抱してください」ということになっています。掛け金についても、厚生年金についてはやっと今年で18.3%と一番上までいきましたし、国民年金も掛け金が上限までいきました。政府も基礎年金の半分は出します、これは税金ということですから。様々にやりくりをしてやっていかなければならないと思います。


2025年の社会保障原資をどう賄うか、2019年の参院選では提案を出す

工藤:今の状況では、確かにマクロ的な(団塊の世代が後期高齢者になる)2025年問題もあるのですが、個人の生活レベルでは育児が終わったら介護もあり、大変な状況になっている。年金の話にしても、モデルではなく具体的な話にしてみるとかなり少ない。そこに目線を入れた政策は提起されていませんよね。

石田:年金についてはある一定の約束のもとに、「何年掛け金を払ったらいくらもらう」ということになっているわけです。例えば私も国民年金をもらうわけですが、妻とは「何とかやっていくためには二人とも元気でいなければならない。それで国民年金+付加年金をもらっていかないといけないと。一人になってはとてもやっていけない」と話しています。もともと国民年金は、定年がない、仕事をし続けるという前提の制度設計なのに、今は無業の人が結構入っている。そこは大前提を変えることができるのか、なかなかちょっと難しいところがあると私は思います。一人一人のことを考えて、本当にやっていけるんですかと言われると、自分のことを考えても大変だなと正直思います。そうすると原資をどこから持ってくるのかという課題があります。

工藤:それは公明党としては、ある程度の提案を出さなければいけないのではないですか。

石田:一つは、今の基礎年金を国が半分持っているところを、これをもうちょっと増やせないかという議論ももちろんあります。それは税金が増える話になります。それに介護もある、医療も増えていく、こういうことを一体として、どうやっていけるかというのが非常に大きな課題です。2025年に団塊の世代が後期高齢者になるということを考えるとあまり時間はない。社会保障をどう全体として支えて行くかというミニマムアクセスが必要です。

工藤:選挙が次にいつあるのかということを考えると、今回こそ2025年問題のプランを競わないといけないのではないですか。

石田:これは私としては、今年後半、全国各地に11ヵ所に赴いて、地元の政策、生の声を聞いて年内に取りまとめようと思っていたのですが、突然選挙が早くなってしまいましたから、次の参議院選挙までに準備したいと思います。


財政収支目標は堅持するが、その年限は今のところ示せない

工藤:財政問題について、安倍さんはプライマリーバランス(基礎的財政収支)の黒字化についての2020年目標を諦めました。黒字化の目標自体は堅持しているのですが、2020年というのは断念したということです。しかし、すでに消費税の使い道変更がなくとも、2020年の達成は厳しいという試算が政府発表で出ていました。ということは、自公政権は財政再建に熱心じゃないのでしょうか。公明党のマニフェストにもあまり書いていません。

石田:プライマリーバランスは2020年までは無理だろうと、我が党としては考えています。今回の消費税増税がなくてもなかなか難しい。しかし旗は降ろさないので、いつまでに達成するかというのは非常に大事な課題です。いつまでというのは今のところ、現時点では何年だというのは確定的に申し上げにくいです。

 しかし、これは一応、2015年に作られた財政再建計画を来年検証することになっています。2020年目標の設定時は様々な数字がデフレ状況での設定だったのではないかと思います。それをもう一度見直すということもありうると思います。総理もお考えだと思いますし、我々もしっかりすべきだと思います。現時点でいつまでに、ということを申し上げるのは難しいと思います。

工藤:マニフェストに書かないのはあまり重要性がないということですか。

石田:そういうことではないです。これは隠しておこうという意図は全くありませんでした。たぶん、そういうご質問が、消費税の使途変更の話に伴って必ず聞かれるだろうということは重々分かっておりましたが、2020年でない次の目標は、今のところなかなかお示しできない。


まず国際社会が一致し、対北朝鮮制裁の厳格な履行を。
  戦争には「ならないように努力する」としか言えない

工藤:外交・安全保障の問題について、安倍さんは北朝鮮問題を「国難」だと言っています。確かに、世界的に国連決議による圧力を強めていくべきだなどというのはいいのですが、国民は「ひょっとしたら戦争になるのではないか」という不安がある。それに対して政党からきちんとした説明がないことにも違和感を覚えています。つまり、現政権があることをやった結果何を実現するのか。安倍さんは「国民の生命を守る」といったのですが、公明党はどういう立場で、それを実現するためにどうしようと思っているのでしょうか。

石田:外交問題について、特に北朝鮮問題に限ってのお話だと思いますが、私たちは戦争には反対です。しかし戦争は反対でも、日本海を挟んだ隣の国がミサイル・核開発を進めており、指導者の意図がわからない。意図がわからないままに能力だけが向上していっている。これは日本だけでどうにかできることではありませんので、国連の安保理もこれまでより厳しい決議を出しましたが、まず穴を開けないような実践をやってもらう。あれは確か3ヵ月くらいで報告を出すようになっていると聞いています。国際社会で一致して考えていく必要があると思います。特に、ICBM(大陸間弾道ミサイル)となるとヨーロッパも能力の範囲に入ってくるわけです。ヨーロッパの国の中にも北朝鮮のミサイルの射程に入っているという不安を持っていると思います。核ミサイル・拉致については国際社会と連携して取り組んで行く必要があると思います。最後に、「とにかくやってしまえ」というのには反対です。

工藤:北朝鮮を核保有国として認めることはしないということでいいですか。

石田:はい。核保有国として認めたら、ずっと意図がわからない国が隣にあるということになります。早くNPT(核拡散防止条約)に復帰してもらいたいと思います。

工藤:安倍さんは一生懸命頑張って、外交政策で解決するように努力しているのですが、トランプ政権がある時軍事行動を決断し、日本政府に「戦争になる」という連絡が来たとします。そういう時、公明党はどうしますか。

石田:そういうふうにならないように努力するとしか言いようがないですね。圧力が必要だと言っていますが、向こうに政策を変更させる、(国際社会は)本気だと考えてもらうということだと申し上げています。(1994年、核開発を一時凍結する米朝枠組み合意にあたって)金日成総書記のところにカーター元大統領が行った時が、すごく緊張感が高まった時でした。結局、カーターさんが行って、小康状態になったのですが。それから20年経って、どんどん核を開発してしまったという歴史があります。国際社会に復帰してもらい、国際社会と連携して自国民の幸せのために努力してほしいと思います。

工藤:公明党には、中国と話をして何かやるというアイデアはないのですか。

石田:中国はもうすぐ党大会があります。それが終われば、今の習近平政権の体制が固まってまた新たな動きがあるかもしれません。

 また、ロシアが実はキーパーソンなのではないかと。ロシアの方が影響力をもっているのではないかと、考えています。

 また、ある人が言っていたのですが、日本の政治家も外交政策関係者も、ロシアの新聞をあまり読んでいない。


公明党の「原発ゼロ」とは新設をしないこと。
  2030年の電源構成見直しはこれからの課題

工藤:原発の問題について、政府は2030年までのエネルギー基本計画で、原発の比率は20~22%という形を描いて、その中でやろうとしています。これ自体が達成するかどうかに関して、我々の検証ではかなり難しいとされているのですが、公明党のマニフェストを見ると「原発ゼロを目指す」と書かれています。政策が政府とかなり違うのではないでしょうか。

石田:一つは新設を認めないということです。再稼働については、原子力規制委員会が審査し、地元自治体の理解があればよいのではないかと。ただ、40年という稼働年数の縛りがありますね。再稼働を認めても、一回だけ、20年しか延長できない。そうすると自ずとフェードアウトしていくわけです。地元である四国の伊方の第一原発も今度廃炉になります。

 ただ、そうなった時に、再生可能エネルギーが間に合うのか。今、再生可能エネルギーに使われているお金が電気代の1割くらいあります。そうしたことに耐えられるのかということを考えていかなくてはいけないと思います。東日本大震災以来、原発が全部止まり、再生可能エネルギーを早くやらなくてはいけない。それで、当初インセンティブをつけるために、太陽光発電に1キロワット40円と、ちょっと高い値段をつけたのですが、逆に風力や地熱に目が向かなかったのです。

工藤:公明党は閣議決定についても参加しているわけですから、政府の公表している2030年の電源構成は認めているということでよいですか。

石田:それは認めています。

工藤:そのあとの話として、原発ゼロにということですね。いつごろゼロになるのでしょうか。

石田:私も完全には把握していませんが、稼働年数は40年または60年という縛りがあるわけですから、100年かかるということはあり得ないと思います。

工藤:そうすると、火力発電に切り替えるということですか。

石田:そういうことではありません。火力についてもパリ協定ができて、26%削減しなくてはいけない、2050年には80%削減する、となっています。今年、エネルギー基本計画の3年ごとの見直しもしますから、原子力と再生可能エネルギーの進み具合、石炭などを使った発電をどう組み合わせるか考えていくかは課題だと思います。

工藤:今回の選挙は何を問うのでしょうか。

石田:将来の安心でしょう。

工藤:だとしたら、そのプランが出ていないというのは問題ではないですか。

石田:おっしゃる通りかもしれません。我々の考え方の中での教育ということでお示しをして、不安を払拭して本人の能力を発揮できる、それによって日本の未来を開くという、そういう提示をしているわけですが、もちろん他に目を瞑っているわけではありません。それは特に与党・政府になったら、1日も行政は停滞できません。我々も党の立場でも行政については責任があるということですので、これからはいろいろなご意見をいただいてやらなければならないなと思っております。

工藤:今回の選挙の構造や意味がちょっと見やすくなったと思います。

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