日本の課題を考える

2019年参議院選挙 マニフェスト評価(社会保障)

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<評価の視点>

 言論NPOが実施している世論調査結果では、半数近くの人たちが日本の将来を悲観的に見ており、その理由として半数を超える人たちが、急速に進む高齢化と人口減少に対して、有効な政策が打ち出せていないこと、社会保障制度や年金など、自分の人生の将来自体に不安を感じていることを挙げている。こうした国民の不安に対して、各党が将来の日本の社会としてどのようなビジョンを描いているのか。そして、そのビジョンに向けてどのような政策で実現しようとしているのか、そうした視点が重要となってくる。

 特に社会保障分野においては、大きく2つの課題に直面している。団塊の世代が75歳以上の後期高齢者になる2025年、医療・介護費が爆発的に増える。さらに、2040年には、団塊の世代の子供たちが後期高齢者になり、労働力は大幅に減ってくることが想定されている。そうした、これから訪れる節目の見通しも示しながら将来像をどう描き、給付と負担、労働供給力はこうなる、ということを政府・与党が示すと同時に、野党もそうしたデータに基づいた政策を国民に判断しえているのか、が評価のポイントとなる。

 もう1つは、社会保障制度の現代化である。社会保障制度は、家族形態および就労形態などに一定の前提をおいて作られている。例えば、年金の第3号被保険者は、正社員の夫と専業主婦の妻からなる世帯を標準的な世帯として作られているが、今日ではそうした世帯携帯はもはや一般的ではなくなっている。あるいは、複数疾患を慢性的に抱える高齢者人口の増大によって、医療にも治療(キュア)のみならずケアがより強く求められるようになっている。医療に対するニーズが変わっており、さらに、医療と介護の緊密な連携が不可欠になっている。このように家族形態、就労形態などは変化しており、社会保障制度もそうした形態に合致させるいわば現代化が不可欠である。各党のマニフェストは、そうした変化を的確に捉え、その上でICT技術の進展なども踏まえながら制度改革のビジョンを提示出来ているか。

 こうした点で各党のマニフェストを見ていくと、細かい政策が大量に記載されているものの、ウィッシュリスト、願望を述べただけであり2025年、2040年に向けてどのような日本の将来像は、年金、医療、介護など、そうした社会保障制度をどうするか、という負担や給付の話についてはほとんど記載されておらず、今回の公約だけでは国民が、各党が日本の将来や、これから訪れる人口減少、高齢者化社会における社会保障制度をどう構築していくか、判断するのは難しい。


<評価結果>

与党(自民党・公明党)

 本来、自民党・公明党は政府を形成している政党であり、現実的な2025年問題、2040年問題に向けた将来像を、様々なデータと突き合わせてある程度予測できる立場にある。しかし、自民党、公明党の公約からは、これから直面する様々な問題に対して向かい合いおうとしているのか、読み取ることはできない。

 唯一、自民党は「『自助』・『自立』を第一に、『共助』と『控除』を組み合わせ、税や社会保険料を負担する国民の立場に立って、持続可能な社会保障制度を構築する」との記載はあるものの、「持続可能な社会保障」とは何なのか、負担と給付、特に負担の部分をどうしていくのか、そうした記載は存在しない。公明党も含めて給付ばかりを記載するウィッシュリスト化しており、今回の公約からは社会保障政策の将来を何ら語っておらず、点数化はできない。

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野党(立件民主党、国民民主党、日本維新の会、共産党、社民党)

 野党は、仮に政権に就いた場合、どのような日本にしていくのか、党としての方針を示し、その上で、給付と負担の割合をどうしていくのか、ということを示す必要がある。

 立憲民主党は「老後に備えて『2000万円貯めなければならない社会』ではなく、『大きな蓄えがなくても安心できる社会』を目指す」と方向性を示しているといえなくもないが、ではその社会をどのように実現するのか、その言及がない。また、そうした社会を実現するために出されているのは、民主党時代の総合合算制度の導入、最低補償年金の導入など、旧民主党の政策の焼き増しでしかなく、将来設計に繋がっていない。

 国民民主党は、「世代間公平に配慮しつつ、重点化と効率化によって、こどもから高齢者にわたる、持続可能な社会保障制度を構築します。以前の自公政権のように一律に社会保障費をカットしません」と記載し、数多くの政策が羅列されている。しかし、社会保障の全体像が全く見えず、単なるウィッシュリスト、希望や願望を述べているにとどまっており、どのような社会保障の将来を描いているか、何ら示しておらず無責任と言わざるを得ない。

 日本維新の会は「医療・リハビリ・介護・福祉の連携によるいのち輝く未来社会の実現」と記載があるものの、それをどう実現するのか、何ら明記されておらず、スローガンの羅列にとどまっている。

 共産党、社会党に至っては政府・与党の批判、政策の否定から政策を列挙しており、人口減少、高齢化に突き進むこの日本において、どのような社会保障像を描いているのか何ら明らかにしていない。

 以上のように、野党のマニフェストからは、社会保障の設計や、それを可能とする負担については何ら示さず、むしろ負担を否定し、給付を増やすとしか書かれておらず、責任ある政策が何ら提起されていない

2.png



主要政党の政策項目数

 
自民党
公明党
立憲民主党
国民民主党
日本維新の会
共産党
社民党
経済
65 55 8 78 13 14 13
財政
8 10 1 13 4 2 2
社会保障 36 34 5 55 15 17 13
外交・安保
38 24 10 40 7 19 10
環境・エネルギー
17
21
7
24
4
8
7
農業
21
8
1
23
0
4
3
憲法改正
3
3
1
14
7
1
1
その他(復興、地方、教育)
94
60
7
86
9
16
14
総計
282
215
40
333
59
81
63
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