【対談】日本の再設計とタックスペイヤーの視点

2003年11月07日

kitagawa_y030822.jpg北川正恭 (早稲田大学大学院教授 (前三重県知事))
きたがわ・まさやす

1944年生まれ。67年早稲田大学第一商学部卒業。三重県議会議員を経て、83年衆議院議員初当選。90年に文部政務次官を務める。95年より三重県知事。ゼロベースで事業を評価し改善を進める「事務事業評価システム」の導入や、総合計画「三重のくにづくり宣言」を策定・推進。2003年4月、知事退任。

yokoyama_y040316.jpg横山禎徳 (社会システムデザイナー)
よこやま・よしのり

1966年東京大学工学部建築学科卒業。設計事務所を経て、72年ハーバード大学大学院にて都市デザイン修士号取得。75年MITにて経営学修士号取得。 75年マッキンゼー・アンド・カンパニー入社、87年ディレクター、89年から94年に東京支社長就任。2002年退職。東北大学、一橋大学大学院で非常勤講師も務める。

概要

今なぜマニフェストが必要なのか。そこではいかなる争点を描くべきなのか。前三重県知事の北川氏は、タックスペイヤーを起点として政策プログラムを競う民主導の政治への突破口としてマニフェストを位置付ける。横山氏は、官僚の無謬性を政治が覆し、主婦を焦点に据えたわかりやすい政治により、従来の制度の再設計と顧客の視点へのギアチェンジを図ることの必要性を主張する。その上で、横山氏は国のシステムデザインの必要性を、北川氏は民間シンクタンクの新しい役割をそれぞれ強調する。

要約

北川正恭氏がマニフェスト運動を始めたのは、民主主義の原点である選挙が個別利益最大化の情実で動いてきた状況をマニフェストの導入によって正していこうと考えたからだった。横山禎徳氏も、今の変革期には成り立たない官僚の無謬性を政治が変える意思を持つために必要な選挙基盤の揺らぎをもたらすアプローチとしてマニフェストを重視し、特に女性や主婦にその内容が理解されることが重要であるとする。

北川氏は、成熟社会では個別利害は合成の誤謬を生むのであり、それを超えるためには利益誘導のサービス合戦から政策プログラムの競争に政治を変える必要があると説く。同時に、パターナリズムから公正なルールと透明な運営への変革に際してマニフェストが国民に突き付けるのは、お任せ民主主義の衆愚政治からの脱却であるとする。マニフェストを喩えるに、横山氏は、物事の変化をもたらすのはマスタープランではなく、ミニプラン的な楔を打つことがもたらすチェーンリアクションだとし、北川氏は、異分子を投入して生態系を変えていく「北京の蝶々」とのカオス理論を引用する。政策の実行過程について横山氏は、目標が間違っていたら修正し、一定量の責任を取るというプロセスが必要だとする。北川氏はその最大の手段が情報公開であるとし、多数決を与えた自己責任を住民にも取らせるべきだとする。

そして、部分にある問題をさらけ出して全体を変えるカギとして分権を推進し、日本社会を切り裂いてみたいとする。横山氏は、既にシビルミニマムを達成した日本のギアチェンジに向けて、従来とは別の豊かさを示す必要があり、マニフェストには変化が起こり始めているという力強い新鮮さを盛り込むとともに、政策をシステムデザインとして設計し直すべきだと提言する。北川氏は、タックスイーター(供給者)からタックスペイヤー(生活者)の側に軸を移してアカウンタビリティーを果たせる世の中に変えるべく、マニフェストではそれを選択肢として国民に問うべきだとし、政党に体系立った政策を求めそれを検証する民間の評価機関、シンクタンクの必要性を強調した。


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今なぜマニフェストが必要なのか。そこではいかなる争点を描くべきなのか。前三重県知事の北川氏は、タックスペイヤーを起点として政策プログラムを競う民主導の政治への突破口としてマニフェストを位置付ける。横山氏は、官僚の無謬性を政治が覆し、主婦を焦点に据えた...