日本の政治に「変化」を求める声が急増 言論NPO、「麻生政権の100日評価」アンケートの結果を公開

2009年1月07日

 認定NPO法人 言論NPO(東京都中央区日本橋 代表・工藤泰志)は、麻生政権の発足後100日時点で実施したアンケート結果を分析した「麻生政権の100日評価」を、言論NPOのホームページ上で公開しました。

 

麻生政権100日評価アンケート概要

 2008年12月中旬から下旬にかけて、言論NPOの議論活動に協力していただいている有識者などに郵送やメールでアンケートを送付し、363人 から回答を得ました。回答者の職業は、国家公務員が7.7%、サラリーマンが20.1%、企業経営者が6.9%、企業幹部が7.2%、マスコミ関係者が 12.9%、学者・研究者が4.4%、NPO・団体関係者が7.2%、政治家が0.8%、大学生が8.0%、自営業が4.7%、自由業が5.8%、その他 が12.7%、無回答が1.7%となりました。

 

麻生政権の支持率・今後への期待ともに低水準

 今回のアンケート結果から、麻生政権をこの100日段階で「支持する」人はわずか11.0%にとどまり、「支持しない」人は70.8%となりまし た。これは、過去の安倍・福田両政権の100日時の支持率(安倍政権:24.0%、福田政権:31.9%)よりも低水準にとどまり、9割の人が発足当初か ら「そもそも期待していない」(51.8%)、あるいは「期待以下」(37.7%)と回答しています。また、「麻生政権に本来期待されていた役割」に関し ては53.4%と半数を越える人が「まず速やかに解散・総選挙を行い、民意をもとにした政治を復活させること」と回答し、「今後の麻生政権に期待できる か」との設問に対しては「期待できない」との回答が77.4%に達する一方、「期待できる」と回答した人は6.9%に過ぎず、麻生政権の今後にもかなり冷 めた見方が広がっていることが明らかになりました。

 

麻生政権の100日の政権評価は最低水準

 麻生政権の100日の全般評価では「内政・外交のいずれも評価できない」が58.7%に及び、内政に関しては1.7%しか評価する回答はありませ んでした。また、「首相の資質」に関しては「首相の人柄」「首相の政策決定におけるリーダーシップや政治手腕」「首相としての見識、能力や資質」など8項 目の評価を5点満点で行いましたが、全体の平均は5点満点中1.8点となり、福田政権時の2.3点、安倍政権時の2.2点よりもかなり低いものとなりまし た。

 次に、麻生政権が取り組んだ「閣僚など政権の人事」、「当面の緊急経済対策」など21項目の課題に関して「適切」「うまく対応できていないが、今 後期待できる」「うまく対応できておらず、今後も期待できない」「わからない」の4段階で評価を求めました。その結果、唯一プラスとマイナスの評価が分か れたのは、消費税増税を「全治3年」後に位置付けたことだけで、残りの20項目は全て「うまく対応できておらず、今後も期待できない」が多数となり、その 比率が7割を超えたのは「政策決定における政治主導体制の確立」「政策実行のための与党内、政府内、政府与党間の調整」「衆参ねじれ状態での国会運営」 「麻生政権の改革姿勢」「当面の緊急経済対策」「行政改革」「社会保障制度改革」の7項目でした。

(注)首相の資質を問う8項目は、①首相の人柄、②首相の政策決定におけるリーダーシップや政治手腕、③首相としての見識、能力や資質、④政権とし て実現すべき、基本的な理念や目標、⑤既に打ち出されている政策の方向性、⑥これまでの政策面での実績、⑦麻生政権を支えるチームや体制づくり、⑧国民に 対するアピール度、説明能力です。
 また、政権としての対応力や政策課題に関しては、①閣僚など政権の人事、②衆参ねじれ状態での国会運営、③政策決定における政治主導体制の確立、④麻生 政権の改革姿勢、⑤政策実行のための与党内、政府内、政府与党間の調整、⑥「全治3年」という3段階での経済立て直し、⑦当面の緊急経済対策(定額給付 金、雇用対策など)、⑧財政再建目標(2011年のPB黒字化)を「努力目標」に後退させたこと、⑨過去最大規模の2009年度予算、⑩消費税増税を「全 治3年」後に位置づけたこと、⑪社会保障の安定財源と税財政改革の道筋(中期プログラム)の策定状況、⑫行政改革(政府の効率化、公務員制度改革など)、 ⑬国と地方(地方分権、国の出先機関の削減など)の問題への対応、⑭消費者問題(消費者庁、食の安全など)への対応、⑮社会保障制度改革(医療、年金、介 護、少子化など)、⑯医療問題(医師不足、救急医療など)への対応、⑰農業・食料政策、⑱環境・エネルギー問題への対応、⑲教育問題への対応、⑳外交政策 (日米同盟、アジア外交など)、21安全保障問題(北朝鮮問題、インド洋での給油問題など)への対応の21項目を評価しました。

 

日本の政治に「変化」を求める声が急増

 「解散・総選挙の時期」については「すぐにでも行うべき」との回答が48.8%と半数近くになり、「二次補正や2009年度予算の目処」後の 25.6%を加えると7割を超す人が早期の解散・総選挙を求めています。民主党への政権交代に「賛成」との回答は56.7%と半数を超え、前回の福田政権 時の43.1%より10ポイント以上増加しました。ただ、賛成の理由は「政治の構造を変えるためには一度政権を変えるしかないから」との回答が70.9% にのぼり、民主党の政策自体への支持は6.3%にとどまっています。また、民主党への政権交代で「初めて政権が安定できる」と答えた回答は1.7%にすぎ ず、「政権交代には混乱が伴い、政権の安定は難しいが、日本の政治や政治の権力構造に新たな変化が期待できる」との回答が51.5%を占めました。
 さらに、日本の政治の現状についての認識は「既存政党の限界が明確になり、政界再編や新しい政治に向かう過渡期」であると54.5%が回答しており、日 本の政治の現状は、政界再編など政治の変化への過渡期だ、との認識が多数を占めています。既存の政党への期待について、最も多いのは「期待していない」の 48.8%で、その理由は「既存の政党は新しい日本に向けた構想力が乏しく、課題解決能力が不足しているから」が、45.2%と半数近くになりました。日 本の政治自体に「変化」を望んでいる人が多数いるという結果が浮き彫りになりました。


 詳細な結果については、言論NPOのホームページ上で公開しています。
 また、本アンケート結果をもとに「麻生政権の100日評価をどう読むか」で緊急の座談会を行いました。仙谷由人氏(衆議院議員)、添谷芳秀氏(慶應義塾大学法学部教授)、中谷元氏(衆議院議員)、若宮啓文氏(朝日新聞社コラムニスト)の4氏が出席しました。そちらの模様も言論NPOのホームページで順次公開していきますので、合わせてご覧ください。

 

 100日評価とは

 どのような政権も、発足後100日を過ぎれば有権者による厳しい監視にさらされなくてはなりません。その立場から、言論NPOではマニフェスト評 価の一環として2006年の安倍政権から、「100日評価アンケート」を行い、その結果を公表しています。 特に今回のアンケートでは、麻生政権の打ち出 している経済対策の評価を始めとして、今年行われる衆議院の解散・総選挙や、民主党への政権交代など、日本の政治全体についての設問も設けています


■言論NPOについて

 言論NPOは「健全な市民社会」には「健全な議論」が必要との思いから、非営利で新しいメディアや議論の舞台を作ろうと8年前に発足した非営利組 織です。現在、有権者主体の政治と緊張ある政策論議のためのマニフェスト評価、議論の舞台をアジアに広げるための「東京‐北京フォーラム」の開催、当事者 としての対案を専門家による各種会議の議論を基に作成し、政府などに提言する等の活動を行っています。

【認定特定非営利活動法人 言論NPO概要】
所在地:〒103-0013 東京都中央区日本橋人形町3-7-6 LAUNCH日本橋人形町ビル5階
設立:2001年11月
代表者:工藤泰志

【お問合せ先】 
認定NPO法人 言論NPO事務局(担当:宮浦)
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